アイドルのセカンドキャリアを考える 第2回 [バックナンバー]
佐藤春奈がイメージする、アイドルに寄り添った衣装作り(聞き手:レナ)
周りのスタッフを大切に、やりたいことは口に出そう
2022年4月13日 18:00 19
アイドルは引退後、どのようなセカンドキャリアを送っているのだろう。本連載では元
第2回のゲストは、2020年に
取材
あきらめきれなかったアイドルという夢
レナ 佐藤さんは2015年にアイドルカレッジに加入していますが、そもそもアイドルを志したのには何かきっかけがあったんですか?
佐藤春奈 もともとアイドルが大好きで、AKB48さんの握手会に行ったりしていたんです。小さい頃からクラシックバレエを習っていたり、中学時代に演劇部に所属していたり、人前に出て目立つのが好きだったりもして。ずっとアイドルから元気をもらっていたから、高校生のときにAKB48のオーディションを受けてみたんです。結局、最終オーディションで落ちてしまったんですけど、「私でも可能性があるのかな?」と考えたりもして。その経験が自信にもなったけど、どこかで「自分がアイドルになるのは現実的じゃないよな」という思いもあって、それ以降オーディションなどは受けずに服飾系の大学に進学しました。
レナ 服飾系の大学を選んだのには何か理由があったんですか?
佐藤 母が服飾の大学を出ている影響もあって、小さい頃から編み物をしたり、縫い物をしたり、粘土で何かを作ったりするのが好きだったんですよ。でも特別「洋服を作りたい!」みたいな気持ちはなくて、当時は自分の得意分野を伸ばして技術が身に付けばいいな、くらいの漠然とした動機でしたね。
レナ なるほど。でも明確な目的がなかったとはいえ、自然と服飾大学を選ぶくらい物作りが身近にあったんですね。
佐藤 そうですね。ただ、大学生活を過ごす中で何か物足りなさを感じていて、アイドルというお仕事に対しての未練が強くなってきたんです。それで20歳の頃に両親に「どうしてもアイドルに挑戦してみたい」と相談したら、「じゃあ、オーディションを受けてみなさい」と言ってくれて。それでいろんなグループについて調べていたら、アイドルカレッジのメンバー募集を見かけたんです。当時はグループについてあまり詳しくなかったんですけど、アイカレ好きの友達が「いいグループだよ」と勧めてくれて。
レナ そうだったんですね。アイカレのどういった部分に惹かれたのでしょう?
佐藤 言い方が悪いかもしれないですけど、なんちゃってアイドルみたいなグループには入りたくないと思っていたんです。アイカレはオーディションを受ける前にライブを観させていただいたんですけど、そのときのパフォーマンスがすごかったんですよ。それにメンバーの雰囲気もよくて直感的に惹かれるものがあったんだと思います。だからほかのグループも見てみたい、みたいな気持ちも一切ありませんでした。
きっかけはスタッフの一声
レナ 佐藤さんはアイドルカレッジ加入後の2017年に北海道で開催されたイベント「YOSAKOIソーラン祭り」をきっかけに、本格的に衣装制作を担当するようになったんですよね。
佐藤 よく調べていただいて、ありがとうございます(笑)。その少し前から自作の衣装を自分で着ていて、それをスタッフさんが見てくださっていたらしいんですよ。「YOSAKOI」の開催日と卒業制作の期間が被ってしまって、出られないなと落ち込んでいたら、スタッフさんが「じゃあ衣装を作ってみたら?」と提案してくれて。
レナ いい運営さんですね。自分が作った衣装をほかのメンバーに着てもらっていかがでした?
佐藤 そのときは11着作ったんですけど、なんとも言えないくらいうれしかったですね。アイカレはみんなかわいいし、ダンスもすごいんですよ。パフォーマンスがしっかりしてるから、私が作る衣装もよく見えるというか(笑)。「YOSAKOI」は開催場所が札幌だから、実際に見に行くことはできなかったけど、その様子はTwitterで逐一チェックしていました。そしたら衣装を褒めてくださる声がすごく多くて。アイカレは人数が多いから、何か突出したものを持ってないとファンの方の心をつかむのが難しいんです。だからこそTwitterでの反応を見て、衣装制作という分野で自分がクラスメイト(アイドルカレッジのファンの呼称)さんに評価してもらえたのがすごくうれしくて。
レナ パフォーマンス以外の部分を評価してもらえたわけですね。ちなみに大学ではどういったことを学んでいたんですか?
佐藤 私の通っていた学校は、1、2年生は服の作り方やデザインなどの基礎的なことを学んで、3、4年生からは専門的なコースに分かれるんですね。2年生の終わり頃にアイカレに入ったんですけど、平日は学校に通いつつ、レッスンを受けて、土日はイベント出るみたいなスケジュールだったから、なかなか両立するのが難しくて……。それで3年生になるタイミングでどのコースに行くか悩んだんですけど、少人数の機能デザインコースというところに進んだんです。当時の先生が本当に面倒見のいい方で、アイカレのワンマンを観に来てくださったり、大学を1日休んだだけでも長文のLINEを送って励ましてくれたり、すごく助けられました。私が今やっているお仕事とはあまり関係ないコースでしたけど、そのコースを選んでよかったなと思います。
レナ ちなみにその頃はまだ衣装制作には目覚めていなかった?
佐藤 そうですね。まずはアイドルとしてのパフォーマンスを磨いてごはんを食べて行くというのが目標だったので、「衣装さんになりたい」みたいな気持ちはなかったです。でも、アイカレの面接を受けたときに、事務所の方から「服飾系の大学に通っているなら、将来的に衣装の仕事とかもできるんじゃないの?」と声をかけてもらったのは覚えています。当時はまったくそんなことを考えてなかったので、「ああ、そうですかね」くらいのテンションでしたけど(笑)。
レナ (笑)。運営さん的にはそういう進路も見えていたのかも。
佐藤 確かにそうかもしれないです。だから私にとって事務所の存在はすごく大きいんですよ。
レナ 衣装作りをしていて、大学時代に学んだことが生きる瞬間って何かありますか?
佐藤 大学卒業のときに衣装に起こる不具合を調査して卒業論文にしたんですよ。天然素材じゃない化繊の生地が肌に触れると、汗をかいたときに摩擦で肌が荒れちゃうんです。そういうのを全部写真に撮って、次の衣装作りの参考にしたりして。在学中は、そうやって制作と実演を繰り返す期間でもあったから、今のお仕事にも生きていると思います。
レナ 確かにそういう不具合って、実際に着てステージに立ってみないとわからなかったりしますもんね。
佐藤 本当にそうなんですよ。かわいいだけじゃダメというか、そういう裏側のことは実際に試してみないとわからないので。
新しい挑戦が自信につながった
レナ 佐藤さんは2020年7月にグループを卒業するわけですけど、卒業に踏み切ったきっかけはなんだったんですか?
佐藤 グループの一員として5年間活動してアイドルをやりきったという思いがあったのと、もう1つはコロナ禍になって考える時間が増えたことが大きな理由ですね。コロナ禍に入りお仕事がなくなって、「何か作りたいな」と考えていたとき、「最近和柄じゃない浴衣が流行ってるな」とアイデアが浮かんできたんです。何か新しいことに挑戦したいと考えていた時期でもあったから、そういうニーズに応えられるような浴衣を作るのはどうだろうと思って。あとアクセサリー作りにも凝っていたので、浴衣と一緒にオンラインで販売してみたんです。
レナ 2020年6月に立ち上げたハンドメイドブランド「PALMLAND」ですね。
佐藤 はい。ハンドメイドなので小規模ではあるんですけど、その活動がすごく楽しかったんです。それまでとは違うニーズに応えられた充実感があったというか。それとMELiSSAのスタッフさんが「新しいアイドルグループを立ち上げるんだけど、一緒にやってみない?」と声をかけてくれて、少しずつ外部の衣装制作のお仕事をもらうようになったんです。いくつか案件を進めていくうちに「あ、卒業するなら今かもしれない」と思って。
レナ ほかのグループの衣装制作を任されたり、自分が手間暇をかけて作ったブランドのアイテムを買ってくれる人が増えていく中で自信が付いたのかもしれませんね。
佐藤 それはありますね。昔はSNSのフォロワーは男性のほうが多かったんですけど、卒業して衣装の画像をアップするようになってからは女の子の割合が高くなって。それにアイドル時代よりも認知されるようになったんです。生地屋さんに行ったら声をかけられることもあって、最初は「え、私に?」と戸惑ったりして(笑)。
レナ それだけ佐藤さんが作るものに魅力を感じている人がいるということですよね。やっぱり手に職を付けるって大事。
佐藤 手に職は神! 何か1つでもいいから好きなことを掘り下げて勉強するのはいいことだと思います。
アイドルとスタッフの相乗効果
レナ(多摩川のおんな) @VB_Rena
コラム「アイドルのセカンドキャリアを考える」第2回、インタビューさせていただぎした。お話を進めていくたびに
佐藤さんを好きになっている自分がいました。
是非最後まで見ていただければ幸いです☺️ https://t.co/SRIeZjdDsx