のっち

のっちはゲームがしたい! 第3回 [バックナンバー]

謎解きで世の中を豊かにする、リアル脱出ゲームの生みの親・加藤隆生さんと遊んできました

クリアなるか?人気公演「止まらない豪華列車からの脱出」に2人で挑戦

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加藤さんが体験した「Detroit: Become Human」でのとてつもなく悲しいエンディング

のっち 話は変わるんですけど、加藤さんはテレビゲームってやられるんですか?

加藤 45歳の男子にしてはやるほうだと思います。去年一番面白かったのは「Detroit: Become Human」で、今年は今のところ「十三機兵防衛圏」。

のっち うわあ! そうなんだ! どっちも手を出したいなって思いつつまだ出してない……!

加藤 あと興奮したのは「Her Story」っていう海外のアドベンチャーゲーム。すごい地味だし、合う人と合わない人がいるので、15分やってピンとこなかったらもうやめていいかもしれないですけど(笑)、謎解きが好きな人ならやってみたほうがいいと思います。

のっち けっこうやられてますね。

加藤 すごく限られたジャンルだけですけどね。僕はドット絵時代の人間だから、あまりCGを愛してないというか。あと3Dに酔っちゃうから、一人称視点で銃をガンガン撃つようなゲームはできなくて。

のっち 「Detroit: Become Human」では3D酔いはしないんですか?

加藤 あのゲームは激しい動きで敵を倒したりするんじゃなくて、「次はこうなりそうだな」「あの人に聞き込みしようかな」みたいなことを考えながら歩けるので。それでも1日1時間半ぐらいが限界です(笑)。

のっち あはは(笑)。私、すっごい「Detroit: Become Human」が好きで。自分でやってないんですけど、いろんな人がやってる動画を見漁ってるんです。ストーリーがすごく分岐するんですよね。

加藤 僕の場合は最終的に、とてつもなく悲しいエンディングになっちゃったんですよね……。でも僕はゲームをするときに物語の中にものすごく入り込んでいるので、最初からもう1回やり直すことを罪に感じてるんですよ。だから僕の中で「Detroit: Become Human」は、とてつもなく悲しく残酷な物語ということになってます。

のっち どういう終わり方だったんですか?

加藤 (自分がプレイした、まったく救いのないストーリーについて説明)

のっち うわー……。すごい、それは観たことないです(笑)。

加藤 最低の終わり方ですよね。あのときの気持ち、いつでも取り出せますよ。だからもし最初からもう一度やってハッピーエンドになったとしても、あの世界線の2人のことを忘れることはないから、混乱するだけなんでもう受け入れようと思って。あとは、もし「Detroit: Become Human」が好きなら「Life is Strange」というゲームも面白いと思いますよ。

のっち 時間を戻して選択肢を選び直せるんですよね。

加藤 そうですそうです。やっぱり知識がすごいですね。

のっち やってはいないんですけどね(笑)。「Life is Strange」は自分でやるのが大事な気がして、人の動画も観てないんです。

みんなの質問、のっちが代わりに聞いてきますのコーナー!

のっち ここからは、Twitterのハッシュタグを使って読者の皆さんから募った加藤さんへの質問に答えていただきます。まず1つ目。

加藤さんがこれは名作!と断言できる作品はどれですか?

加藤 「Perfumeの隣の部屋からの脱出」。

のっち 即答(笑)。

加藤 まあ名作にもいろんな定義があるのでアレですけど、やっぱり一番新しいやつが一番面白いって思ってます。

のっち あ、私もそのタイプです。一番新しい曲が最高だと思ってる。

加藤 それに、ここまで登場人物との距離の近さを感じられる作品って今までになかったと思うので。本当にちょっと照れるぐらいPerfumeさんと近いんですよ(笑)。臨場感とかドキドキ感に関しては過去最高だと思います。

のっち ですって! みんな!(レコーダーに向かって)

加藤 これで初めてリアル脱出ゲームを体験するのは、めちゃくちゃ正しいスタートだと思いますよ。

のっち 次のは謎解き好きな人からの質問だと思うんですけど……。

謎解きって、どうしても、解くためのセオリーがあったりとか、「ピンとくる」感覚で解いていくと思ってます。ですが、作る側からすれば、セオリー外しや「どうしたらピンとこなくさせるか」が大事ですよね?その辺のアイデアはどう捻り出していらっしゃいますか?

加藤 “セオリー外し”は確かにあると思います。作ってるときに「ああ、これ普通に考えたらこう解いちゃうな」と思ったら、最後だけちょっとセオリーからズラすとか。でも「ピンとくる」って素晴らしいことだと思うんですよね。謎解きに慣れた人は日常生活でも「あれ? なんでこれちょっとずれた場所に置いてあるんだ?」とか「あの照明、必要なさそうなところに付いてるけど、きっと何かに使うぞ」「こんなところに靴跡があるって、誰か男の人が待ちぼうけを食らったのかな」とか、何を見ても楽しくなれる能力を手に入れてると思うんです。何に使うかわからないものなんて、実は世の中にあふれているのに。

のっち そうですね(笑)。

加藤 そういうことを考えるのが僕はすごく素敵なことだと思うんです。目に見えている情報からたくさんの物語を読み取るってことが、世の中が豊かになることと同じ意味を持つんじゃないかって。だから質問していただいた「どうしたらピンとこなくさせるか」について言えば、そもそも「ピンとくる」ことを否定しないようにしている、というのが答えです。

のっち なるほど。脱出ゲームをやってる1時間だけじゃなくて、そのほかの日常でも世界が素敵に見えてくるようにしたいってことですね。めちゃくちゃ得してる。コスパ高い。

Perfumeさんのメンバーの中で脱出ゲームが一番上手いと思うメンバーを教えてください!理由も述べてください!

のっち 脱出ゲームがうまいって、どういう人だと思います?

加藤 “うまいタイプ”っていうのはないんですよね。いくつかのタイプが集まって“いいチーム”になるっていうのはあるけど。

のっち そうなんです! 本当そう! ありがとうございます!(笑)

加藤 あんまり深いことを考えずにいろんなことを試す人、それをうーんって俯瞰して見る人、いろんな仮説をどんどん言っていく人、それを判断して行動する人……みたいに役割が細分化してて、そのうち1人が欠けてもクリアできないということはよくあるんですよ。

のっち それでいうとPerfumeの3人はたぶんバランスがいいと思います。私はいろんなところを漁ったりしながら、1つの謎を黙々と解くタイプ。かしゆかは整理が得意で、資料をまとめておいて必要なときに出したり、例えば干支とかを並べたりするのが速い。あ~ちゃんは閃きタイプで、私たちが解いてるのを俯瞰して見ながら「え、待って。じゃあ最初に言ってたあれって……」みたいにまとめてくれる。否定する人が誰もいないのがいいところだと思います。「そうじゃないでしょ」って絶対に誰も言わない。「1回やってみよっか」ってなる。

加藤 いいチームですね。それは謎解きに限らず。

のっち 3人の関係を考えると、「相手を否定しない」っていうのは大事だなと思うんですよね。

加藤さん、今回のコラボにあたってPerfumeのどんな特長を活かそうと思いましたか? またPerfumeをどんな風に研究しましたか?

加藤 これはどっちかというと山本に答えてもらったほうがいいですね(笑)。

のっち じゃあ、SCRAPさんはPerfume以外にもいろんなコラボをやってますけど、コラボの謎解きを作るときはどんなことを考えてます?

加藤 例えば「ONE PIECE」とのコラボだったら「ひょっとしてウソップって、あのときこういう気持ちでルフィを助けに行ったのかな?」とか、そのマンガの登場人物たちが行動を起こすときの気持ちを追体験してもらえたらうれしいです。実際に体を動かして物語の中で生きてみると、マンガを読むのとは違った形で感情移入できて、あとでまたマンガを読んだときに見え方が全然違うものになるっていう。そういうコラボにしたいと考えてますね。「Perfumeの隣の部屋からの脱出」だったら、その後にPerfumeのライブを観に行ったときに「あ、あの子たちは僕が救ったんだっけ」って思ってもらいたい(笑)。

のっち あはは(笑)。でもわかります。私は本当に、そのキャラクターと一緒に謎を解いてるって感じる瞬間が好きなんですよ。「約束のネバーランド」とコラボした「偽りの楽園からの脱出」でも、姿は見えないけどあのキャラクターたちと協力して謎を解いたって感覚があったし。だからこそ「果たしてPerfumeの謎解きでその感覚が出せるのかな?」ってちょっと不安はあったんですけど、私たちが好きなSCRAPの皆さんが作ってるものだから、好きなものになるだろうなって思ってました。山本さんがOKだって言ってくれたし。

加藤 ははは(笑)。

やっぱり普段でも物を持つと裏側を見ちゃいますか?

加藤 実はさっきから気になってますね。このコップの裏はどうなってるのかなって。

のっち えー!!(笑)

コップを持つ加藤さん。

コップを持つ加藤さん。

加藤 これはうちの商品だし、絶対どこかに1個、工夫が入ってるはずなんです。でも謎は謎のまま、あえて見ないっていうのもオツというか。

のっち こじれてるなあ、もう(笑)。

加藤 「何があったら一番面白いんだろう」って考えるのが楽しいんですよ。もう今触っちゃったからデコボコがないってことはわかってしまったけど、「じゃあ鏡に映したらどうなる?」「濡らしてみたらどうなる?」みたいなことは常に考えてますね。

のっち 日常生活が大変そう(笑)。

加藤 歴代彼女はみんな困ってました。やっとパチッと合う人に会えたのが今の嫁さんですね。こじれ方が一緒だから(笑)。

のっち でも日常に影響が出るのは私もわかります。私の場合、脱出ゲームに行った帰りのごはん屋さんではメニューを読むのがちょっと早くなる。読むのに時間をかけてられないので(笑)。

加藤 ははは(笑)。

のっち 今日加藤さんとお話しさせてもらって、自分が作った脱出ゲームに対しても、働いてるスタッフたちに対しても、すごく愛情を持って真剣に向き合う方なんだなって感じました。ステイホーム期間中にTwitterとかを見て「熱い人だな」って思ってたので、今日はその片鱗が見れてよかったです。

加藤 今の言葉、全部原稿に使ってください(笑)。僕はこの連載の、前回の自作PCの記事を読んでめちゃめちゃ緊張してたんですよ。「ヤバい人が来るぞ」って(笑)。

のっち いや全然、普通の人ですよ(笑)。

加藤 今日一緒に「止まらない豪華列車からの脱出」をやらせてもらって、何より僕が驚いたのは、のっちさんが謎を解くという行為にすごく真摯に取り組んでいたことで。英単語を入力する謎解きで、1文字だけ答えがわからないという場面があったじゃないですか。残り全部の文字がわかってるんだから、その英単語がなんなのかはもう予想が付くし、世の中の謎解きをする人の8割は、もうそこまでいったら答えを入力しちゃうんですよ。時間が迫ってますし、1秒でも早く脱出するためにそういう考え方をするのは間違ったことじゃないと思います。僕は推奨もしないし否定もしない。そんな中で、のっちさんは謎というものに真正面から向き合った結果、もう次に進めるのにすべて解くまで動かなかった。あれはびっくりしましたね。「こんなに真摯な姿勢で取り組んでくれるんだ」って。作り手冥利に尽きるというか。

のっち あはは(笑)。

加藤 これから謎を作るときに、今日ののっちさんの姿を思い出さなくちゃいけないなって思いました。本当に背筋が伸びる気持ちになったし。今日はそういう意味でも、お会いできて一緒に時間を過ごせて本当によかったです。

のっちさんの取材後記

こんにちは、iPhone 12の赤いのん買いました。のっちです。


突然ですが「Life is Strange」をプレイしました!

写真学科の学生マックスちゃん(プレイヤー)が、偶然にも時間を戻せる能力を手に入れて、幼なじみであるクロエちゃんの命を救うところから物語は始まります。
私達は、ストーリー中に出てくる選択肢から、マックスの行動や言動を選んで決めるんですが、小さな一つの選択が現在、未来、そして過去まで変えてしまいます。
何度も時間を巻き戻して、選択肢から色んな結果を試してみたりもできます。面白いねっ。
そうしてマックスとクロエの、身の周りに起きる事件を見守っていくわけでございます。

感想なんですが、
プレイ中ずっと「後悔の連続」でした!!!!!!!^^

後々の為に、ここはこうしといた方がいい!と思って取った行動が、後から「どうしてあの時助けてくれなかったの?」になったり。
救う為にとった行動が、ただ苦しむ姿を見守るだけになってしまったり。

人が人に与えられる力って、言葉や行動の大小限らず、全て受け取り手の咀嚼の仕方次第。だよなあと思う日々だけど、この「Life is Strange」ではもう、とんっでもなく世界が動く(笑)。
その度に「え"ああああああああああああ"!!!」という叫びと共に深いため息だよね。面白いねっ。

どんなシーンでも演出はおしゃれでハッとしたし、綺麗な景色に癒されたり、人を信じたり疑ったり。色んな情緒を引き出された、良い体験だったなあ。

本当に最後の選択を終えた後のエンドロールは感情大爆発のバッチバチで、自分の気持ちを整理したくて嗚咽しながらひとり喋ってましたが、全て終えてからの後悔は無かったです。大満足!!
どんな成分の感情だったかむっちゃ喋りたいですが、各々絶対違うと思うので、やってくれとしか言えないっす。いつか感想戦したいです。


あと今回お話伺った、加藤さんが記事中で仰ってた「Detroit: Become Human」をプレイしてのお話が体感できました。すっごいわかった。
「Life is Strange」を終えた後、「マックスとクロエ、あっち選んでたらどうなってたのかなあ~ワクワク(^^)」みたいな気持ちには微塵もならず。

ならず、だったけどね、あのね……見た。
ほんとは、私が紡いだストーリーで終えたい気持ちでいっぱいだったけど、マックスやクロエへの感情を殺しながら「これはァァァ!! 別のォォォ!! ひとだからァァァァァ!!!!」と、エンドロールでずっと喋ってた時の自分に言い聞かせて、どうしても見たかった人の実況、2人ほど見ちゃったっ。

おんんんもしろかったああああ……!!!!

ただ!みんなは!!
私がデトロイトの実況が面白くて好きで色んな人の実況動画見すぎてよほど特殊な選択しない限り見られないような貴重なエンディング以外はもうほぼ全部見てしまっているが為にデトロイトオタクなのにもう自分でプレイできない体になってしまったようなそんな下手は、、、踏むなよな……!!!!!!!!



てことで。今回は、東京ミステリーサーカスにお邪魔しました。

わたしの、リアル脱出ゲームの好きなところ!
物語の“主人公”の体験ができるのはもちろん、物語の“脇役”にもなれるところです。
主人公の劇的な瞬間を隣で見届ける、物語に加担してる感じがね、好きでですね。
ドラえもんを助ける。アイドルを助ける。脱出ラスト、ドア前で待機している仲間に鍵をわたす。
そんなドラマな非日常に入り込む気持ちよさをみんなにも体感してほしい!です!

自粛期間中にわたしは、加藤さんはじめSCRAPチームのエンタメへの情熱だったり、前向きさに心救われて、熱いままでいられたので勝手に感謝しているのです。
今しか作れない。今作るべき。今を象徴するような。今を誇れるような。そんなものを世に提示しつづけたいと改めて強く思いました。


自分で物語を動かす気持ちよさが世の中にはあるんや。ぜひ体験してほしい。(そして自分の人生も良き方向に運べればより最高だね!)


次回は、わたしが一緒にゲームしたい人をお呼びしてゲームしている様子と、その内のひとり月ノ美兎委員長との対談(……というか委員長に好きを伝えただけだったと記憶してます)をお届けします。初対面でゲームした直後の躁状態での対談ですね。
ちなみに委員長の「Life is Strange」実況。Episode.4での、あの決断の速さがかっこよくてまじで惚れた。あの即決。
あと新曲「それゆけ!学級委員長」の「ドーン!」の歌い方と、MVのサビで前髪がピラんってなってる……のが……可愛い……です!! では!

次回予告

今回の取材では、店舗でのひさびさのリアル脱出ゲームを存分に堪能したのっちさん。次回は9月21日に開催されたオンラインフェス「"P.O.P" Festival(Perfume Online Present Festival)」の一環として有料配信された本連載のスピンオフ番組「のっちは○○とゲームがしたい!」の内容を振り返りつつ、番組にゲスト出演していただいた月ノ美兎さんとのっちさんの対談を公開します。

Perfume最新情報

最新シングル「Time Warp」発売中。また、Perfumeが2005年のメジャーデビューから2020年までに着用した衣装の軌跡を追った書籍「Perfume COSTUME BOOK 2005-2020」も刊行されました。さらにA!SMARTでは、Perfumeのファッションプロジェクト「Perfume Closet」の新作アイテムとして、衣装の裏地に使われる特殊な素材を使用したオリジナルマスク「Perfume Closet×SAQULAI P-dot Mask」も販売されています。

バックナンバー

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アオキュ @aoky_

謎解きで世の中を豊かにする、リアル脱出ゲームの生みの親・加藤隆生さんと遊んできました | のっちはゲームがしたい! 第3回 https://t.co/9BpgZwJ8la #prfm #perfume_um

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