愛知県名古屋市発、平均年齢18歳のガールズバンド・No.MEN(ノーメン)が、3月18日に1stアルバム「BAA, AS THE SHADOWS LOOM」をリリースする。
No.MENはCocona(G, Vo)、Uri(B)、Rima(Key)、Nina(Dr)の4人からなる平均年齢18歳の“オルタナティブファンキーバンド”。2022年にCoconaとUriが高校の軽音楽部で出会い、結成された。
音楽ナタリーでは、ゴスペルやファンクといったブラックミュージックにルーツを持ちつつ、遊び心と独自のセンスを融合させたバンド像に迫るべく、結成メンバーのCoconaとUriにインタビュー。フレッシュな魅力を放ちつつ、バンド活動と真摯に向き合う彼女たちの声を紹介する。
取材・文 /蜂須賀ちなみ撮影 / 佐野和樹
高校の軽音楽部で出会った2人
──お二人はどのように出会ったんですか?
Uri(B) 私もCoconaちゃんも小学生の頃からギターをやっていて、同じ高校の軽音楽部で出会いました。好きな音楽はバラバラだけど、入部前から意気投合して「この曲知ってる?」と共有し合ってました。軽音部ではまずコピバンから始めて。
Cocona(G, Vo) SHISHAMOとかKANA-BOONとか、学祭で盛り上がるような曲をやっていました。Uriちゃんは私とバンドを組むためにギターからベースにパートを変えてくれたんですよ。
Uri Coconaちゃんがうますぎて、この人とバンドを組むにはベースをやるしかないなと思って。すぐに初心者キットを買いに行きました(笑)。
Cocona Uriちゃんは、めちゃめちゃ努力できる人なんです。私が「やりたい」と言う曲は初心者には難しい曲ばかりなのに、そのたびに一生懸命練習してきてくれるんですよ。UNISON SQUARE GARDENの「シュガーソングとビターステップ」とか、King Gnuのいくつかの曲とか。
Uri 確かに難しかったけど、私もそういう曲が好きだったから「やるしかない」って気持ちでした。それに、Coconaちゃんのことを絶対に離したくなかったんですよね。出会った瞬間に思ったんですよ。「私とCoconaなら絶対売れる」って。だから初日からCoconaに「あなたはミュージシャンになるんだよ」「だから曲を作ってね」と言い聞かせてた(笑)。そしたらCoconaも触発されて、「森道(「森、道、市場」)とか出たいよね」とか言い始めて。
Cocona 自分としてはギターをだらだら続けていた感覚があったけど、Uriちゃんに影響されたり、好きなバンドのライブをライブハウスに観に行ったりする中で、どんどん意識が変わっていきました。
Uri 海外のフェスに出たいし、武道館でライブしたいし、海外のアーティストとコラボしたいし……夢はいろいろあります。2人でお客さんとしてライブハウスに行ったときも「そっち(ステージ)に行く未来がマジで見えるな」みたいな、そんな話をしながらバンド名を考え始めました。
Cocona そうだったね。あのときはまだ1曲もオリジナルがなかったから、「何を言ってるのかな?」と思ってたけど(笑)。
バンド名の由来は?
──No.MENというバンド名には、どのような意味が込められているんでしょうか?
Uri 意味よりも字面で決めました。まず「MEN」を入れたくて。私の父がラーメン屋で、日々、麺に生かされているので(笑)。「No.」はナンバーワン、ナンバーツーみたいな。大文字、小文字、ドットの組み合わせがとてもかわいいと思ったんです。「No.MEN」という字の並びが図形として美しいなって。私、表記へのこだわりが強いんですよ。曲名とかも全部そう。「Setelan」のSだけ大文字とか、「BAA, AS THE SHADOWS LOOM」は全部大文字とか、自分にとってしっくりくる見た目じゃないと嫌なんです。
Cocona 私はそういうのに興味がないので、「いいんじゃない?」みたいな(笑)。
Uri そしたらあとから「No.MENって男がいないってことですよね?」と言われたことがあるんです。私は本当に麺のことしか考えてなくて、MEN=男性という認識が抜け落ちてたので、「ヤバい、この時代に反した名前をつけてしまった!」と(笑)。
生まれる前からゴスペルを聴いていて
──出会ってすぐに意気投合したという話でしたが、お二人がもともと好きだったアーティストや、会話の中でよく名前が出てきたアーティストが知りたいです。
Uri Coconaちゃんはもともと、ゲスの極み乙女とか、ギターがカッコいいバンドが好きなんです。私はHelsinki Lambda Clubやteto、Suspended 4thのようなロックバンドが好きでした。2人で一緒にライブに行くようになって、音楽を深掘りしていくうちに、海外のバンドは楽器がうまいことに気付いたんです。Vulfpeck(アメリカのファンク / ソウルバンド)を聴いて「なんでこんなグルーヴが出るの?」と思ったし、ゴスペルとかカーク・フランクリンの楽曲に触れるうちに、ブラックミュージックにどっぷり浸かっていきましたね。その狭間にいたのがKroiかもしれない。Kroiは私たちが高校生の頃、愛知によくライブをしに来ていたので影響を受けました。ブラックミュージックはCoconaちゃんのルーツでもあって。
Cocona 父は、牧師でゴスペルドラムを、母はゴスペルピアノをやっていて。ブラックミュージックはずっと身近にあったし、母のお腹の中にいたときからコンテンポラリーゴスペルを聴いていたんです。コンテンポラリーゴスペルは、伝統的なゴスペルに1990~2000年代のファンクやR&B、ソウル、ヒップホップなどを取り入れたジャンルなんですけど、Uriちゃんにも「ベースを始めるなら、聴いたほうがいいんじゃない?」ってオススメしたら……。
Uri もう沼っちゃいましたね。「ヤバい!」「こんな音楽を教会でやってるのか!」って。同じブラックミュージックでもファンクとはまた違って、特有の粘りがあるというか。ベースって「なんか目立たないよね」と思われがちだけど、曲の流れを変える力を持つ楽器だと私は思っています。ゴスペルのベースはめっちゃエネルギーがあって、まさにそれを体現している。たぶん、King GnuやKroiもゴスペルからの影響を少なからず受けていると思うんですよね。
Cocona そうかもしれない。私もKroiを聴いて「ゴスペルと同じことやってるやん」と思ったし。映画「天使にラブ・ソングを…」の影響で、日本でもゴスペルがちょっと流行って、ゴスペルクワイヤが増えていった時期がありましたよね? 私が生まれたのはそのあとなので、ゴスペルは親世代の趣味だともともと思っていました。だけど高校生になって、音楽を深掘りしていくうちに「いや、ゴスペルってめっちゃカッコいいんじゃないか?」と気付いたんです。そこから認識が変わっていったし、自分のルーツなんだという自覚も芽生えました。
カーク・フランクリンの思いを現代に
──ブラックミュージックをルーツとする音楽体験を経て、オリジナル曲を作るようになったんですね。
Cocona 私が好きなカーク・フランクリンも、当時ゴスペルが若者にウケていなかったから、R&Bやファンクを織り交ぜて世の中に提示したんですよ。それと同じように私も、自分のルーツであるゴスペルに邦楽のエッセンスを織り交ぜたら、唯一無二の音楽になるんじゃないかと。そう思いながら作ったのが、今回のアルバムにも収録されている「Setelan」です。
──1曲目から明確なビジョンがあったんですね。
Uri 「Setelan」は私が歌詞を書いて、Coconaちゃんが一晩で作曲して……。
──一晩で!
Uri すごいですよね。だから「Setelan」ができたあと、「次はどういう曲にするの?」ってすぐに要求しちゃって。そしたらCoconaちゃんもスイッチが入ったのか、また一晩でいい曲を書いてきてくれたので、「この子は天才だ!」と思いました。いくらでもいい曲が書けるんじゃないかと思うくらい。
Cocona いやいやいや……。
Uri 「Setelan」は、Coconaちゃんが初めて書いた曲なんですよ。ほかにちょっと作ったことがある、ということもなく。「Setelan」を聴けば、Coconaが誰から影響を受けているのか、何をしたいのかが全部わかる。育った環境とか小さい頃からゴスペルに触れてきたことが表れていて、“人生”って感じがしますよね。


