SPYAIRがニューアルバム「RE-BIRTH」を3月18日にリリースした。
2023年にYOSUKE(Vo)が加入し、新体制でリスタートを切ったSPYAIR。今回リリースされたアルバムには現体制で初めて発表した楽曲「RE-BIRTH」から、ストリーミング総再生数が2億回を突破したヒット曲「オレンジ」をはじめとしたシングル曲、現在放送中のテレビアニメ「勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録」主題歌の「Kill the Noise」まで、この3年間にリリースしてきた全楽曲が収められている。さらに新録曲「Darling」「STILL ON FIRE」も収録。これまでの軌跡を振り返りつつ、SPYAIRの新たな地平を感じさせる1枚だ。
今回のアルバムリリースを記念したインタビューでは、メンバー4人が2023年からの3年間の軌跡とともに、アルバム収録曲の制作過程を解説。現在のSPYAIRのモード、今後の行く先についても語ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / 山崎玲士
写真のアルバムのように3年間を振り返れる作品
──2023年にYOSUKEさんが新ボーカリストとして加入して3年。現体制となって初めてのアルバム「RE-BIRTH」がついに完成しました。まずは皆さんの手応えを教えてもらえますか?
YOSUKE(Vo) 一旦ひと段落ですね、気持ち的には。自分が入ってからの名刺代わりの1枚というか、そういうアルバムができたことにホッとしている一方、もちろんうれしさもあって。自分にとっては1stアルバムだし、ファンの皆さんにとっても大事な1枚になったらいいなと思ってます。
MOMIKEN(B) 今回のアルバムの収録曲はシングルとしてリリースしている楽曲が多いので、改めて聴き返すと、1曲1曲にそのときの情景や思いがよみがえってくる。それをパッケージできたことで、写真のアルバムのように3年間を振り返れる作品になったなと思いますね。
UZ(G) うん、まさに。タイアップだったり、「JUST LIKE THIS」(毎年夏恒例の野外単独ライブ)の楽曲もそうですけど、再始動してからは1曲1曲に全力を注いできた。それをまとめたのが今回のアルバムなんですよね。こうやって1枚にまとまると、この3年間がそのまま濃縮されてるなと。1つの区切りだし「アルバムまでたどり着いたんだな」という気持ちになってます。
KENTA(Dr) 並べて聴いたときに、SPYAIRらしい、全力でパンチを打ってるような曲がそろったなと。めちゃくちゃ聴き応えがありました。
──再始動一発目のシングル「RE-BIRTH」がそのままアルバムのタイトルになってますね。
UZ みんなで話し合って決めたんですけど、やっぱり「RE-BIRTH」がこのアルバムを象徴するワードなのかなと。新体制になって最初のアルバムですからね。
──シングルの「RE-BIRTH」がリリースされたのは2023年7月です。振り返ってみて、当時の心境はどうでした?
UZ 曲を作ってるときは……何を思ってたんだろう?
MOMIKEN (笑)。制作している場面は思い出せるんだけど、何を思ってたか?と聞かれると、よくわからないです。不安だった気もするし、「スタートしたからには、やるしかない」という気持ちだったかもしれないし。
UZ いろんな気持ちがありすぎて、フワフワしてたかもしれないですね。「バンドを続けられるならそれでいい」くらいの感じと同時に、腹をくくって「もう一度やってやる」という思いもあって。いろいろグチャグチャしてたから、当時の心境を聞かれてもよくわからないというか。
──「続けられたら、それでいい」という気持ちもあったんですね。
UZ もちろん。シレッとやれるんじゃないかな、とか(笑)。
MOMIKEN それだけで進めるほど甘くはないんですけどね(笑)。
UZ そりゃそうだ(笑)。とにかく「バンドを続ける」ということに重きを置いていたんですよ。どんな形でもいいからバンドを続けたいというのが、再始動するときに一番思っていたことで。YOSUKEと一緒にやろうと決めたときも「これでもう1回バンドがやれる」という気持ちが強かったですね。
KENTA 確かにいろんな気持ちがありましたね、あのときは。YOSUKEがボーカルに決まったときはもちろんうれしかったけど、「続けてくれるかな?」という思いもあったし、YOSUKEがイヤだって言ったら、それで終わりなので。
YOSUKE ハハハハ。
MOMIKEN 「入ってみたけど、違いました」って(笑)。
KENTA 先のことはわからなかったですからね、ホントに。そこから3年経って、こうしてアルバムができたということは“正解”だったんだろうなと。
──確かに。YOSUKEさんはどうでした?
YOSUKE 「RE-BIRTH」はSPYAIRに入って初めて作った曲で。メロディと歌詞にも関わっているんですけど、作っている段階では「ぶちかましてやる」みたいな気持ちがありました。だからイントロにスクリームを入れたりしたんですけど、リリースした直後は「大丈夫かな?」と心配になってきて(笑)。
MOMIKEN わかる。
YOSUKE 作ってるときは夢中だから気にならなかったけど、「SPYAIRの新曲、どんな感じだろう?」という注目もあったし、あとから「やりすぎちゃったかな?」という。
KENTA ハハハハ。
YOSUKE でも、リリースしたすぐあとにライブがあったのがよかったんですよね。そのときに「RE-BIRTH」をみんながしっかり聴いてきてくれたことがわかって、それがすごくうれしかった。
──ロックバンドのボーカルが替わって、新体制でリスタートするって、あんまりないですからね……。
MOMIKEN そうですね(笑)。
UZ 海外ならけっこうあるんですけどね。Linkin Parkとか。
──Linkin Parkは2024年に女性ボーカルのエミリー・アームストロングが加入して再始動。おおむね好評でしたが、それでも「前のほうがよかった」という意見はあるみたいですね。
UZ それは俺らも一緒だし、応援したいです……って、向こうはモンスターバンドだけど。
MOMIKEN ハハハハ。でも、応援したいよね。
UZ 「わかるよ」ってマイク・シノダに言いたい(笑)。ファンの気持ちもわかるんですよ。SPYAIRに対してもいろんな意見があるだろうし、前のほうがよかった、新体制で活動するのはやめてほしかったというのもわかるんだけど、これは俺らが決めたことなので。1人ひとりの意見を受け止めつつ、「でも、俺らは一生懸命やってるよ」とこのアルバムで示したいですね。
「オレンジ」で初めてSPYAIRのボーカルになれた
──それにしても「オレンジ」のヒットはデカいですよね。
MOMIKEN めちゃくちゃデカいです。
UZ SPYAIRの一番のヒット曲になったんで。いろんなタイミングが重なってたくさんの人に届いたことは、バンドにとって本当に救いになりましたね。
KENTA SPYAIRを代表する曲になったと思いますね。「この曲がなかったら全部なかったんじゃないか」と思うくらい助けられたし、バンドにとってもYOSUKEにとっても自信につながった1曲だなと。
YOSUKE 「オレンジ」のヒットで、重かった何かが外れた気がしますね。もちろんバンドの過去は大事だけど「それに引きずられながらこの先もSPYAIRのボーカルをやっていくのかな」みたいな気持ちも多少あったので。
──その状況を変えたのが「オレンジ」だった?
YOSUKE そうですね。「オレンジ」でSPYAIRを知ってくれた人も増えたと思うし、その人たちにとってSPYAIRのボーカルはYOSUKEじゃないですか。自信というか、そこで初めて「このバンドのボーカルになれた」という思いがありました。ライブに対する意識も変わりましたね。最初の頃はどうしても「自分たちが知ってるSPYAIRとどう違うのか?」という比較もあったと思うんですよ。もちろん素直に楽しんでくれている人もいたと思うけど、僕を見て「がんばってるな」「なんとかしようとしてるな」と感じるところもあったんじゃないかなと。でも、「オレンジ」以降はお客さんの目とか評価を気にする気持ちがなくなって、自分らしさを見せればいいという感じになってきました。ライブでもレコーディングでも。
──やはり優れた曲、ヒット曲がバンドを引っ張るんですね。
UZ 特にSPYAIRはそうだと思います。メジャーのフィールドに立ち続けなくてはいけないというのがこのバンドのあり方だったし、「オレンジ」でそこに戻れたのかなと。バンドによってやり方はいろいろですけど、SPYAIRにはヒット曲が必要だったと思います、絶対に。
MOMIKEN 僕もそう思いますね。マニアックなことをやって、わかる人だけわかればいいというやり方もあると思いますけど、SPYAIRはそうじゃない。このバンドを突き動かしてきたのは、もっと大きいところに行きたいという気持ちだし、そこに興奮を覚えてきてたので。
UZ デビューしたての頃はもっととがってましたけどね。「こんなのやりたくねえ」とか。
KENTA あったね(笑)。
UZ ライブにしても曲作りにしてもそうで。でも今はそうじゃなくて、どんなものでも受け入れて、それを楽しめる余裕ができてきたかなと思います。
デカいスタジアムで音を鳴らすバンドでありたい
──一方でSPYAIRは、音楽的なスタイルをしっかり守ってますよね。ヘヴィロック、ミクスチャーが基本になっていて。
UZ それはSPYAIRのフィルターを通しているからでしょうね。流行りに乗ったり、今のランキングにあるような音楽に寄せるのもいいんだけど、SPYAIRはそういうバンドではないと思っていて。それはとがっているというより、このバンドのあり方を客観的に見たときに「それは違うのかな」と。新体制になったタイミングで音楽性をガラッと変えることもできたんですよ、選択肢としては。
──確かに。
UZ でも、それはやっぱり違うなと。自分たちが積み重ねてきたのは、それこそお茶の間にも届くようなわかりやすいロックで。ディストーションギターが鳴っていても、そんなにロックに詳しくない人たちでも聴きやすくて楽しめる。それがこのバンドの強みだし、変えたくないところだと思っていて。SPYAIRという冠で音を鳴らす以上、そこは守りたいんですよね。
KENTA 自分たちが好きで聴いてきたバンドもそうですからね。Bon JoviやAerosmithもそうですけど、デカいスタジアムで音を鳴らして、その姿にたくさんの人が憧れる。それはすごくカッコいいことだと思うし、自分たちもそこを目指したいなと。
──なかなかいい場所にいると思いますけどね、SPYAIRは。
YOSUKE 家族全員でライブに行っても楽しいバンドでありたいし、もっといろんな人に届けたい。そういうほうがたぶん、性に合ってるんだと思います。今のメジャーシーンを見ていると「すごく細分化されているな」と思いますけど、だからこそ自分たちはデカいところを目指したいなと。
──細分化された今の音楽シーンの中で、SPYAIRのように王道のロックに根ざしたバンドは稀だと思います。
UZ そうかもしれないですね。若い世代のバンドはカッコいいし、自分では想像もできないような曲を作っていて。みんなうまいし、「すげえな」とビビらされることも多いんですよ、正直。同じ土俵に立っても勝てるわけないし……戦う気もないですけど(笑)。だからこのバンドを長く続けるためにも、自分たちができることを突き詰めることが必要なんじゃないかなと。確かに今の音楽シーンは細分化されてますけど、俺らがやってるようなロックが好きな人もいるはず。そういう人たちと一緒に進んでいきたいし、できればもっとリスナーを増やしていきたいと思ってます。わかりやすいロック、みんな絶対好きですからね。例えばフェスにBon Joviが出て、「It's My Life」をやったらめちゃくちゃ盛り上がるじゃないですか。
KENTA 間違いないね。全員でサビを叫びます(笑)。
UZ 俺もそういう経験をしたことがあって。2009年のサマソニに、Linkin Parkを目当てに観に行ったんですよ。その前がB'zだったんですけど、観たことがなかったので、観てみたらめちゃくちゃカッコよくて、誰よりもブチ上がった。
MOMIKEN 僕もその場にいましたけど、稲葉(浩志)さんのバキバキの腹筋を見たときに「キャー!」ってなっちゃって。ライブもすごくカッコよかったし、ぶっ飛ばされましたね。
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テーマがなければここまで強い言葉にしなかった





