10-FEET「壊れて消えるまで」特集|映画「ゴールデンカムイ」主題歌で鳴らす、ありのままの自分たちの音

10-FEETが映画「ゴールデンカムイ」の主題歌「壊れて消えるまで」を書き下ろした。

「ゴールデンカムイ」は明治末期の北海道を舞台に、莫大なアイヌの埋蔵金を巡って個性的なキャラクターたちが躍動するバトルアクション。TAKUMA(Vo, G)は、主題歌の情報発表に際して「何が起こったんだ! ある意味逃げられない。いや、こんな嬉しい事があるだろうか」というコメントを発表していたほどの原作の大ファンだ。

音楽ナタリーではメンバーにインタビューを行い、「壊れて消えるまで」の制作過程を語ってもらった。さらに来年の結成30周年、主催フェス「京都大作戦」開催20周年を目前にした、10-FEETの現在地にも迫る。

取材・文 / 小林千絵撮影 / 斎藤大嗣

映画製作陣のこだわりと魂みたいなものを感じました

──「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」の主題歌を担当することになったときの気持ちを教えてください。

TAKUMA(Vo, G) 原作が好きなので、めちゃめちゃうれしかったです。

KOUICHI(Dr, Cho) 「ゴールデンカムイ」はみんなが知っているマンガ。その実写作品の主題歌ということで、ワクワクしました。

NAOKI(B, Vo) 前作(2024年公開)がすごくよかったので、今回も面白いやろなって。主題歌「壊れて消えるまで」もきっとハマると思っています。

10-FEET

10-FEET

──TAKUMAさんは原作の大ファンとのことですが、「ゴールデンカムイ」のどのような点に魅力を感じているのでしょうか?

TAKUMA 恋愛要素もコメディ要素もあれば、シリアスで激しい戦闘シーンもあり、めちゃめちゃ引き込まれるんですよね。1つの作品にいろんな要素が詰め込まれている。アシㇼパさんの家族との思い出に胸がギュッとなったり、アシㇼパさんと主人公の杉元佐一に対して「くっつくの? くっつかへんの?」ってヤキモキしたり。絵もかわいいところがあるし、ギャグも面白い。ただ、最初に実写化の話を聞いたときは「難しそうやな」と思いました。

──そうですよね。

TAKUMA 人間の皮をつなぎ合わせる描写だったり、サイコパスの殺人鬼が残酷なシーンで性欲を感じるときにハートが出る描写だったり、そういうマンガならではの表現ってあるじゃないですか。それをどう表現するんかなって。そしたら……そのまま実写化した(笑)。そこに映画製作陣のこだわりと魂みたいなものを感じました。(取材タイミングでは)まだ今作は観れていないんですけど、前作がそうだったから、今回もめちゃくちゃ気合い入ってんねやろなと思う。だから「壊れて消えるまで」もどんなふうにマッチするのか想像できてへんけど、あのチームやったらうまいこと使ってくれんのやろなと信頼しています。

好きなことを積み上げていった曲

──私はひと足先に完成した映画を拝見しましたが、主題歌がすごくマッチしていました。

TAKUMA ホンマですか? よかった。楽しみです。「壊れて消えるまで」は、自分の中で、 「ヒトリセカイ」とか「蜃気楼」「その向こうへ」と同じタイプの曲で。

──10-FEETの真骨頂とも言えるタイプの、ストレートなロックナンバーですよね。

TAKUMA そう。この曲の原型は、映画の話をいただく前からあって。原型ができた時点では、「こういう曲はこれまでにさんざんやったから、今は10-FEETでやる隙間はないかな」と思って、ソロとかで機会があればちゃんと形にしようという位置付けだったんです。だけどある日、打ち合わせにこの曲を持っていったらKOUICHIが「めっちゃ、いいやん」と言ってくれて。だったら、とデモをちゃんと作って映画の主題歌の候補曲の中に入れたら、この曲が選ばれました。

──なるほど。でも、「10-FEETではもうやる隙間がない」と思っていたんですね。

TAKUMA 「第ゼロ感」でがっつりシーケンスを取り入れたことをきっかけに、バンドとしては新しいジャンルもやっていこうという雰囲気があって。だからもうストレートなロックをやるのは今さら感があるなと思っていたんですよね。でも、よく考えたら「第ゼロ感」を出したあとに「Re方程式」「gg燦然」「helm’N bass」のような新しいジャンルの曲を作ってきて、知らん間に“今さら”という時期を超えていましたね。ストレートな曲が逆に新鮮に聴こえるというか。

──「第ゼロ感」で10-FEETを知った人からすると、「壊れて消えるまで」は“知らなかった10-FEET”が出ているかもしれないですね。

TAKUMA そうですね。これが僕らとしては通常営業なんですけど。むしろ「第ゼロ感」のほうが遊び半分で作った曲やったし。

──人によってさまざまなイメージがあるのが、今の10-FEETなのかもしれないですね。KOUICHIさんはこの曲を最初に聴いたときに「いい曲だ」とおっしゃったということですが、そのときの印象を改めて教えてください。

KOUICHI 単純にいい曲やなって思いました。デモの段階で歌詞も入っていたし、曲としてある程度完成されていて。「これはバンドでやったらもっとよくなるんやろうな」と感じられたし、ライブで演奏しているシーンも想像できました。

TAKUMA(Vo, G)

TAKUMA(Vo, G)

──NAOKIさんは、最初にこの曲を聴いたときはどう感じましたか?

NAOKI 骨太ロックと言いますか、わりとストレートな曲で。「ゴールデンカムイ」にぴったりハマりそうだなと思いました。

──デモの時点で歌詞もある程度できていたということですが、「ゴールデンカムイ」の主題歌に決まってから、どういうイメージで歌詞を詰めていったのでしょうか? どことなく、アシㇼパさんとお父さんの関係性を表現しているようにも感じられますが。

TAKUMA 実は、歌詞も大方デモの通りなんですよ。もともと「ゴールデンカムイ」とは関係なく書いていた歌詞ではあったんですが、もしこの曲が「ゴールデンカムイ」の主題歌に選ばれたとしてもフィットするなと思っていて。なんて言うんやろ……輸血の血液型がバッチリ合ったみたいな感じ。タイアップのときって、物語に合わせて歌詞を書いていくのが面白いし、毎回ではないんですが僕はそうやって書くことが多いんですけど、この曲はそうじゃない。なのに物語にハマっていて。そういうことってあまりないんですよね。

──普段とは違うタイアップ曲の作り方をした曲が、複数の候補曲の中から選ばれたというのは、またひとつ皆さんにとって自信になりそうですね。

TAKUMA この曲はガンガンDTMを使って構築していくというよりは、ギターを手にして好きなように歌ったらできたというタイプの曲で。好きなメロディが1つ、2つ思い浮かんで、「これやったら、前後はこうやな」と作っていくうちにできあがった曲。言うたら好きなことを積み上げていった曲やったんで、それを主題歌に選んでもらったというのはうれしかったですね。

ハットカウントはロックンロールの真骨頂

──サウンドはすごくシンプルですが、演奏でこだわったことや意識したことはありますか?

KOUICHI ドラムに関しては、デモに忠実に叩いています。歌を邪魔せえへんようなビートが叩けたらいいなと思っていたし、それができているかなと思います。

──イントロはなく、ハイハットのカウントから歌が始まりますが、映画「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」の終わりにこのカウントが流れてくるのがとてもカッコよかったです。このイントロもデモ通りですか?

KOUICHI そうですね。

TAKUMA ハイハットのカウントで曲に入るのってカッコいいと思うんですよね。最近の曲にはあまりないけど、昔はもっとよくあって。ザ・ブルーハーツもハットで始まる曲がたくさんあった気がするし。今も僕らみたいなパンクロックやメロディックパンクの曲には比較的多いですよね。ハイハットとかシンバルの「シャンシャンシャン」って音はめちゃめちゃ興奮するし、ハットカウントはロックンロールの真骨頂やと思います。

──NAOKIさんは、演奏するうえでどのようなことを意識しましたか?

NAOKI 骨太さですかね。ビートも含めて、骨太さをテーマに演奏していたと思います。

NAOKI(B, Vo)

NAOKI(B, Vo)

TAKUMA デモを作るとき、いつも僕が簡単にドラムとベースも入れるんですけど、この曲では「KOUICHIが叩いたらこんなフレーズやろうな」とか、「NAOKIやったらこういうふうにフレーズを作ってるんちゃうかな?」と考えてフレーズを付けて。そしたら、2人がそれを受け取ってさらに思いっきりやってくれました。この曲は、勢いよく「ドンッ」ってやるのがいいなと思ったので、自分も歌とギターはそれをテーマにして。3人が存分に出した音がいい感じにフィットしたんじゃないかなと思います。

──「第ゼロ感」をはじめとするシーケンスを入れた楽曲制作を経たことで、こういったサウンドも、以前とはまた違うものになったのでは?

TAKUMA あまりそういうことは考えてなかったけど、確かにあるかもしれないですね。僕らは常にいろんな音楽を作ろうとしてきたバンドですが、もちろんそれぞれの好きなことや得意なものはあって。いろいろと作っていく中で、改めて自分たちの得意なものをやるターンが巡ってきた。それが「ゴールデンカムイ」のタイアップというタイミングで、なおかつ、映画チームがこの曲を選んでくれた。すごくタイミングがよかったなと思います。