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MACANAのエントランス。

店長たちに聞くライブハウスの魅力 第16回 バックナンバー

宮城・仙台MACANA

地震被害から復活して8年、生まれ変わった老舗ライブハウスの今

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全国のライブハウスの店長の話を通して、それぞれの店の特徴や“ライブハウスへ行くこと”の魅力を伝える本連載。第16回は、宮城県仙台市の繁華街を南北に貫くアーケード、サンモール一番町商店街に店を構える仙台MACANAの店長・佐藤岳史氏に登場してもらった。

1996年にオープンにして以来、地元のアマチュアからメジャーアーティストまであらゆるバンドがステージに立ち、仙台の音楽シーンにおける重要な拠点となっているMACANA。2011年には東日本大震災で被災し、入居しているテナントビルが取り壊されることになったため移転を余儀なくされたが、リニューアルを経た今もなお変わらず地元の音楽ファンや出演アーティストたちから根強く支持されている。本稿ではMACANAの2代目店長である佐藤氏に話を聞き、この店が愛され続ける理由を探った。

取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 中村零

ライブハウスのブッキングは“人と人をつなげる仕事”

「ここで働く前は大学生で、卒業してすぐMACANAのスタッフになりました。もともと地元の友達とメロディックハードコア寄りのバンドをやっていて、MACANAにはよく出入りしてたんですけど、就職活動をしていたときに『スタッフ募集』という貼り紙を見て、言っちゃったんですよね。『これ僕じゃダメですかね?』って(笑)」

「最初の2年くらいはアルバイトとして受付だけをやっていたんですけど、そのうちブッキングを任されるようになりました。もちろんバンドは好きでしたけど、別に自分でイベントの企画やブッキングをやりたかったわけでもないので、よくわかならないまま始めた感じです。だから途中で何回も辞めようと思いましたが、いいなと思うバンドを応援し続けてたら、だんだん手応えを感じてきて」

「2010年に前任の店長が社長になり、しばらくは店長も兼任していたのですが、2013年頃にはロケット鉛筆式に僕が店長になってました。ずっと断ってたんですよ、店長になる話は。僕は人の上に立つ人間じゃないなってずっと思ってたので。0を1にするより、1を10にする仕事のほうが得意だし、自分は二番手で援護射撃する役割のほうが合ってると思うんです。でも結婚することになって、『店長手当やるから、やんねーか?』と言われて『はい、やりましょう』って即答(笑)。やっぱり家族を支えなきゃいけないですからね」

「ライブハウスのブッキングって“人と人をつなげる仕事”だと思ってるんです。バンドとお客さんをつなげたり、県外のバンドと地元のバンドをつなげたり。それによって新たな出会いが生まれて、人間関係が広がっていくのはすごくうれしいですね。毎年、東日本大震災が起こった3月11日に、僕が主体になって『MASTER PEACE』というサーキットイベントをやっているんですけど、それが今まで自分とつながってきた人たちとの集大成になってるんです。『MACANAに出たことがないバンドには声をかけない』というルールを自分の中で決めてるので」

再開を望む声を聞いて『早くオープンさせないと』という使命感でいっぱいに

「震災のとき、僕の地元の宮城県東松島市は海から近いので津波の被害が大きくて、身内もけっこう流されたんですよ。それに対して音楽で何かできることはないかなって漠然と思っていたんですけど、当時MACANAが入ってたビルが地震の影響で取り壊しが決まって、次の場所を探して立て直さないといけないってことで、しばらくはバタバタしていて何もできずで。あるとき、毎年MACANAに出てくれているアルカラの稲村太佑(Vo, G)さんが『なんかやろうや! 岳史の誕生日の3月14日にイベントやろうや!』って言ってくれたんです。ただ僕、祝われるのが苦手だから、誕生日イベントってイヤなんですよね(笑)。でもちょうど震災に絡めた何かをやりたいと思っていたから、じゃあサーキットイベントをやってみようかなと思って。太佑さんも『ええやん! ええやん!』という感じだったので、売上を全額募金することにして2013年から『MASTER PEACE』を始めたんです。ちなみに同じ頃に、アルカラも地元の神戸で『ネコフェス』というサーキットイベントをスタートさせました」

「なんか、震災の年の記憶がズッポリないんですよね。地元も大変な状況だったからバタバタしてたし。地震が発生したときは、その日に予定されていた高校生イベントのリハーサル中で、自分は事務所にいました。前のMACANAは地下がライブハウスで7階に事務所があったんですけど、揺れで隣のビルにガンガンぶつかって、周りの建物の壁が崩れちゃったんです。次の日は電気が復旧したので『どうせライブできないし』ってことで、店を開放して誰でも自由に充電できるサービスをやってたんですけど、次の日に来たら『中に入らないでください』って赤紙が貼られちゃってて。仕方ないのですぐに次の店舗を探すことにして、いろんなところを回りましたね。今のMACANAが入ってる場所はもともと映画館だったところで、石巻の飲食店さんが入る予定だったんですけど、本社が震災でダメになっちゃったらしく、ちょうど空いたので『ここだ!』ってすぐに決めました」

「今の店がオープンしたのが10月8日なんで、その間の7カ月は音楽スタジオが入ってるビルに事務所を間借りしてました。震災前からすでに決まってた公演もいっぱいあったんで、同じビルの中にあったライブができるようなスペースを借りたり、ほかのライブハウスを使わせてもらったりしながら、できるやつは全部やりましたね。『対応に追われてる』という感覚はあんまりなかったけど、『再開待ってます』という言葉はいっぱいもらったので、『早くオープンさせないと』という使命感でいっぱいでした。地元で活動するバンドは、ひとまず自分の生活を立て直さないといけなかったのでめちゃめちゃ減ってしまったんですけど、店がオープンできない間も東京ほか全国各地のバンドから『MACANAが復活したらすぐにやるから』という連絡をいっぱいもらってましたし。リニューアルオープンの初日は『MEGA☆ROCKS』というサーキットイベントだったんですが、『待ってたよ!』という反応をものすごくいただきました」

忘れられないG-FREAK FACTORYと9mm Parabellum Bulletのステージ

「MACANAでのライブで今までで一番印象に残ってるのは、2017年3月11日の『MASTER PEACE』に出てもらったG-FREAK FACTORYのライブですね。なんて表現すればいいのかわからないんですけど、僕はステージの周りで観ていて『時を制してる!』って感じました。あのライブは忘れられないです。あとは9mm Parabellum Bulletの初めての仙台でのライブ。何年前だったのかは忘れましたけど、僕がブッキングを担当したイベントです。9mmのライブ中、お客さんは10人くらいしかいなかったし、フロアにいた人たちもたぶん対バン目当てで9mmのことを知らなかったんです。なのにその10人が全員で拳を上げて盛り上がって」

「社長が店長をやってた頃はNIGHTMAREがよくMACANAに出てくれてたんですけど、僕の代だとANTENAがよくライブをやってくれますね。ANTENAを結成する前からずっと出てくれているので、もう友達みたいな感じなんですよ。渡辺諒(Vo, G, Key)は悩み多き男でもあるので、よく相談されたり一緒に物事を決めたりとかしてました。もっと若いバンドだとBUSTERCALLとBruteRocksというのがいて。僕は彼らが高校生の頃から観ているんですけど、お互いをバチバチとライバル視しながら切磋琢磨して、それぞれ自分たちでツアーを回れるぐらいまでになっているので、今後が楽しみですね」

「MACANAではコンピレーションCDシリーズを作って配布しているんです。前のMACANAが入ってたビルの名前がエビスヤビルだったのにちなんで、『EBISUYA FILE』というタイトルで」

「もともとは有料で売っていたんですけど、今の場所に移転してきてから、MACANAに出てるバンドを知ってもらえるきっかけになるツールが欲しかったので『このコンピ無料で配っていいですか?』って社長に提案したんですよ。もう『vol.11』まで作ったんですけど、今のところ重複して収録されてるバンドはほぼないです。このコンピで初めてレコーディングをするというバンドもけっこういるので、『このレコーディングスタジオがたぶん合うと思う』っていう紹介もしてるんです。やっぱり最初は誰も何もわからないものだから、このコンピで音源の作り方を知ったり、ウチでライブをしてイベントのやり方を知ったり、MACANAがそういうきっかけの1つになれればうれしいです」

帰ってきたくなったときに、そこにいれる人間でいたい

「MACANAは『Wake Up, Girls!』というアニメに出てくるんですけど、再現度がすごいんですよ。『仙台を舞台にしたアイドルのアニメを作るので、取材させてもらえないですか?』って急に電話がかかってきて、番組のスタッフがステージとか楽屋とかの写真を撮っていったんですが、『そこまで再現する?』ってくらい忠実です」

「放送後は、聖地巡礼っていってアニメのファンのお客さんが来てくれましたね、ありがたいことに。やっぱりライブハウスって閉鎖的なイメージがあるので、こういうことがきっかけで今までMACANAを知らなかった人が知ってくれるようになったのはうれしかったです」

「ただそうは言っても、遊びの選択肢が多いこの時代に、みんなにライブハウスを選んでもらうのってなかなか難しいですよね。今まで来たことがない人に『ライブハウスに遊びに行こうぜ!』って思ってもらうのはハードルが高い。だからこそ、一度MACANAに入った人には『ああ、来てよかった』という気持ちで帰ってもらえるようにしています。お客さんだけでなく、バンドマンやスタッフに対しても」

「ラウンジはけっこう広いですよね。あれはキャパを狭めるために広くしたんです。ここは作ろうと思えばキャパ600人くらいのライブハウスも作れたんですが、やっぱりMACANAがやるべきことって250~300人くらいの動員のライブなんですよ。だって『移転して新しくオープンします! キャパは600人ですー!』なんて言われたら、今までのお客さんはビックリしちゃいますもんね。ずっと使ってくれてたバンドもやりづらくなるかもしれないし、それはMACANAがやるべきことではないです。ほかのスペースが広いぶん、フロアはせまく感じるかもしれませんけど(笑)、ラウンジスペースはお酒も飲みやすくなったし、皆さん居心地がいいようですよ」

「ドリンクメニューは130種類くらいあるので、たぶん仙台どころか全国でもトップクラスに多いんじゃないかなって思います。ビールだけで、『スーパードライ』の生、『ギネスビール』『コロナ・エキストラ』『オリオンビール』『スーパードライ ザ・クール』の5種類。ちょっと前まで洋モノの生ビールも出してました。ほかにも『MACANAジンジャー』『MACANAパイン』というオリジナルカクテルも作っているので、ぜひ飲んでいただきたいですね。どちらも『バハナ』というバナナリキュールをベースにしてるんですよ。まあ、『バハナ』とMACANAの響きが似てるからっていうダジャレなんですけど(笑)。やっぱり、いくらライブがよくてもドリンクが『これで600円も取られるの?』ってクオリティだったらお客さんからのイメージが悪くなっちゃうじゃないですか。皆さんに気持ちよく帰ってもらうためにも、ドリンクはしっかりやらなきゃって思います」

「応援してるバンドが大きくなっていくのはすごくうれしいですね。僕はお金を稼ぐために働いてる感覚がまったくなくて。誰かの人生にちょっと花を添えられたらいいなとか、自分が関わったことによってプラスになってくれたらうれしいなとか、そんなことしか考えてないんです。一方で解散してしまうバンドもいて。それはやっぱり寂しいことだし自分の力不足も感じるんですけど、MACANAでつながったバンドのメンバーとは解散後もずっと連絡を取ってますし、そういう人から『またバンドを始めました。仙台に行っていいですか?』って言ってもらえることもあるんです。1回バンドから離れた人が帰ってきたくなったときに、そこにいれる人間でいたいと思ってるんですよね。この仕事、辞めようと思ったことは本当に何度もありますけど、それを考えるとやっぱり辞められないですよ(笑)」

店舗情報

住所:〒980-0811 仙台市青葉区一番町2丁目5-1 大一野村ビルB1F
アクセス:地下鉄東西線 青葉通一番町駅から徒歩1分 / JR仙台駅から徒歩15~20分
営業時間:公演により異なる
定休日:なし
ロッカー:あり
駐車場:なし
再入場:公演により異なる
キャパシティ:250人
ドリンク代:600円
フリーWi-Fi:なし
貸切:あり

※情報は2019年11月時点のもの。

店長たちに聞くライブハウスの魅力

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