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店長たちに聞くライブハウスの魅力 番外編2 [バックナンバー]

あれから2年、ライブハウスの状況はどう変わったのか?全国13店舗の店長に改めて聞いた

以前のようにライブを楽しめるその日まで……店長たちが行った施策や抱える思いとは

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2020年初頭より新型コロナウイルスが蔓延し始め、同年4月7日に政府は7都府県を対象にした1回目の緊急事態宣言を発出。多くのアーティストがライブの中止を余儀なくされる中、全国のライブハウスも苦境に立たされた。その状況を受け、音楽ナタリーは連載「店長たちに聞くライブハウスの魅力」に登場してもらった店の中から全国のライブハウス15店舗の店長にアンケートを実施し、率直な思いを聞いた(参照: ウイルス感染拡大で苦境に立つライブハウスの現状を、全国15店舗の店長に聞いた )。

この記事の公開から2年が経ち、コロナ禍は3年目に入った。依然としてライブイベントの開催やキャパシティの制限がある中、音楽ナタリーは改めてライブハウスの店長にアンケートを実施。計13店舗の店長に現在の店の状況や、2年間の中で変化したことや行った施策などについて答えてもらった。

構成 / 酒匂里奈

目次

大阪・LIVE HOUSE Pangea 吉條壽記氏

(参照:連載第2回 大阪・LIVE HOUSE Pangea)

LIVE HOUSE Pangea初代店長の吉條壽記氏。

LIVE HOUSE Pangea初代店長の吉條壽記氏。

現在の状況

公演数は徐々に戻ってきています。
キャパはまだ50%のままですが緩和していく方向で考えています。

この2年間、ライブハウス内で起こった印象的な出来事

メインスピーカーとアンプを入れ替えました。
さらに音響がパワーアップしたのでひさしぶりに来られる人は楽しみにしておいて下さい。

この2年の間に新たに行った経営施策

先ほども書きましたがメインスピーカーとアンプを入れ替えて、音響のパワーアップを図りました。
あとは去年Pangeaが10周年だったこともあり、Pangeaやライブハウス以外の場所でのイベントを意識して行いました。
・Pangea&HOLIDAY! RECORDS presents「COME TOGETHER MARATHON 2021」
https://livepangea.com/live/event-12023
・新世界FESTIVAL2021
https://livepangea.com/live/event-12262
・”AGARTHA SPECIAL”
https://livepangea.com/live/event-12546

現状を踏まえての展望や要望

最終的には元の3密ライブハウスに戻ってほしいので、情勢を見ながらキャパを徐々に戻していければと思っています。

コロナ禍を経て、ライブ業界の中で変わったと感じる部分

ライブハウス、イベンター、レーベル、アーティスト、お客様などこの状況で動いている人たちは、よりお互いのことを気遣い合っていくようになった気がします。
まさに「情けは人のためならず」を感じております。

ライブハウスを愛する人へ

これから徐々に元のライブハウスの姿を取り戻していく流れになると思います。
多種多様な価値観が混在し喜怒哀楽が入り乱れる場所。
ある意味今の状況のほうが居心地がよかったと思う人もいると思いますが(笑)。
皆様のおかげでコロナ禍を乗り越えられそうです。

北海道・札幌PENNY LANE24 菅原織氏

(参照:連載第3回 北海道・札幌PENNY LANE24)

札幌PENNY LANE24の6代目店長の菅原織氏。(撮影:上野公人)

札幌PENNY LANE24の6代目店長の菅原織氏。(撮影:上野公人)

現在の状況

売上としてはコロナ前の50~60%減。
2年前と比較すると戻ってきた感はありますが、まだまだ厳しい状況が続いております。

この2年間、ライブハウス内で起こった印象的な出来事

コロナ後初めての有観客公演と、コロナ後初めてのスタンディング公演。

この2年の間に新たに行った経営施策

・機材の新規導入や入れ替え
・行政による補助事業等の活用

現状を踏まえての展望や要望

店を潰さないようにがんばります!
コロナが収束して以前のようにライブハウスで音楽を楽しめるようになるまで、出演者にもお客さんにも、もう少しだけ我慢してほしいです。

コロナ禍を経て、ライブ業界の中で変わったと感じる部分

もともとですが、適応力や対応力が高く、協力し合う業界であったと感じます。
本来であれば同業他社はライバルであるはずですが、連絡を取り合ったり情報共有したりすることが、今まで以上に多かった2年間だと思います。

ライブハウスを愛する人へ

いつも感染対策と感染拡大防止にご協力いただき誠にありがとうございます。
「ライブハウス」という音楽を自由に楽しめる場であったのに、いまは我慢を強いてしまい、本当に申し訳ありません。
きっとまた前のように音楽を楽しめるようになる日まで、もう少しだけご協力ください。

京都・磔磔 水島浩司氏

(参照:連載第4回 京都・磔磔|築101年目、元酒蔵ライブハウスのこれまでとこれから)

磔磔現店長の水島浩司氏。(撮影:秋和杏佳)

磔磔現店長の水島浩司氏。(撮影:秋和杏佳)

現在の状況

経営的には相変わらず厳しい状況は続いております。全国のライブ業界的にはむしろこれからの方が厳しくなるかもしれません。
が、2年前と違ってライブ自体は開催できているので、気持ち的にはしんどさはあまりないですね。
この状況でも工夫して面白いことをやっていくことしか考えていません。

この2年の間に新たに行った経営施策

配信ライブにはかなり力を入れている方かと思います。
ここ1年半ほどは、
・映像はハンディカメラ2~3台を含む、高画質カメラ最大11台
・音声は配信のある日はPAを2人にして、1人は別ミキサーを使って配信音声のためのmixを担当
という体制で毎月10~15本ほど有観客配信も行っております。

すべて磔磔のスタッフでやっておりますが、おかげさまで映像も音声も評判がよく、配信映像を後日そのままDVDとして販売するバンドや、「最近は磔磔のときだけ配信する」というバンドの声も聞くようになってきました。

「生のライブが一番」というのはもちろんですが、画面越しだからと言って、ただライブの映像を流せば観ていただけるという時期はとっくに終わったと思っております。
音声・映像ともに、「まるで磔磔の最前列でライブに参加しているような臨場感」を擬似的にでも感じていただけるようスタッフ一同で力を入れておりますので、ぜひ観ていただけたらうれしいです。

キャパシティの制限が続き、お客さんもなかなか戻らない中、特に全国をツアーするミュージシャンは苦境にさらされています。
そんな状況で出演者の金銭的な助けになったりお客さんの楽しみになったりすればうれしいですし、それにいわゆる老舗と思われがちな磔磔が、配信という新しいものに関してこれだけ積極的に取り組んでいるというのはちょっと面白いかなと思います。

この2年間、ライブハウス内で起こった印象的な出来事

ひと口にライブハウスといっても、それぞれの店ごとに事情もルールも違いますが、磔磔はけっこう厳しめに感染対策をしている方かと思います。
やっぱり多くの方に安心して来ていただくのが一番だと思ってますし、そこにはお客さんだけでなく、出演者や磔磔のスタッフも含まれます。
その中で、お客さんや出演者に協力していただくお願い事もいくつかあるのですが、皆さんが感染対策にしっかり協力してくれているというのがありがたかったです。

そしてもう一つ。
身体が不自由だったり、育児や家族の介護、あとは距離的な問題等でこれまでライブハウスから足が遠のいていたたくさんの方たちから、ライブ配信への感謝の気持ちを伝えられることが、強く印象に残っています。
思えば「ライブに行きたいのになかなか行けない」人がコロナ禍の以前から多数いたという当たり前のことに気付かされるとともに、その人たちにも喜んでいただけたのはうれしかったです。
また、「生のライブも観たけど、家に帰って配信アーカイブで再度楽しむ」というお客さんも増えてきていますので、コロナ禍が落ち着いても、需要があればときどきは配信もやっていきたいと思いました。

現状を踏まえての展望や要望

こればっかりは世の中がどう変わっていくか分からないので、状況に合わせてその都度変えていくしかないですね。

コロナ禍を経て、ライブ業界の中で変わったと感じる部分

この状況でも何とかやっていくしかない以上、どの店もミュージシャンもいろいろ考えたり工夫することが増えたと思います。
ただ我慢するだけでなく、ある部分では強くなった店やミュージシャンも多いのではないでしょうか。

ライブハウスを愛する人へ

いつもありがとうございます。
ライブに来ていただいている方、今はライブに来られなくてもそれぞれの方法で音楽を楽しんでいる方、いろんな方の思いや行動が励みになります。
これからもよろしくお願いします。

あと、余談ですが2024年に磔磔は50周年を迎えます。
そのときに世の中がどうなっているかわかりませんが、楽しいことをできたらいいですね。

千葉・千葉LOOK サイトウヒロシ氏

(参照:連載第5回 千葉・千葉LOOK|勤続30年目の店長が語る“愛で成り立つ”ライブハウス)

千葉LOOK3代目店長のサイトウヒロシ氏。(Photo by Shin Ishihara)

千葉LOOK3代目店長のサイトウヒロシ氏。(Photo by Shin Ishihara)

現在の状況

「大変!」と言いたいですが、そう言っちゃうとありがたいことに必要以上に心配される方も多いみたいなので「よくはない」ですっ!

この2年間、ライブハウス内で起こった印象的な出来事

営業できない日々が続き製氷機のコンセントを抜いたこと(超悲しい)。
営業できない日々が続き「期限切れになったら大変!」な在庫BEERをすべて独りで飲み干して冷蔵庫が空になったこと(プチ達成感)。
営業できない日々が続き心配の声をたくさんいただいたこと(超感謝)。
営業できない日々が終わり大きい音がひさびさに戻ってきたときのこと(超高揚感)。

この2年の間に新たに行った経営施策

当方リアルバカチンチンなので変に動いてもろくなことがないので「やせ我慢」「忍耐」「笑顔」。
結局薬局郵便局、策が浮かばず「無策」でございました汗。

現状を踏まえての展望や要望

シンプルに自分が思う「ライブハウス」でいたいと思う気持ちがより強くなりました。でも自分が思う「ライブハウス像」なんて所詮エゴなので、皆さんに「こうしてほしい!」なんて思っても言えません。本当は言いたいけど!笑

コロナ禍を経て、ライブ業界の中で変わったと感じる部分

お付き合いの薄い方に多いのですが、簡単にキャンセルできると勘違いしてるプロダクションやプロモーターが増えた。

ライブハウスを愛する人へ

20世紀型ライブハウスですが「千葉LOOK」もヨロPクでございます! 超ペコリ。押忍!!

兵庫・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎 風次氏

(参照:連載第6回 兵庫・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎|真面目にふざける“音楽動物園の園長”)

MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎現店長の風次氏。(撮影:秋和杏佳)

MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎現店長の風次氏。(撮影:秋和杏佳)

現在の状況

2年前の4月は「COMING KOBE20」の中止を発表しました。
完全休業でステイホームに反抗して「ステイライブハウス!」と言いながら、頭を丸めて眉を剃り落として、ステージにテント張って暮らしていました…。

今は音鳴らせて、ライブハウスやれてるんで、演りに来てや! 観に来てや!
「COMING KOBE22」も5/22神戸メリケンパークでやるねん。来てや!
バイトとか誰か代わり見つけえや!

MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎現店長の風次氏。

MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎現店長の風次氏。

この2年間、ライブハウス内で起こった印象的な出来事

あんなに休みなく働かされてたのに、バリ休みもらえた!
打ち上げを堂々と行わず、どんなけ盛り上がってもSNS等にも載せずにやる「闇打ち上げ」なるものが生まれた。

この2年の間に新たに行った経営施策

太陽と虎 独自配信システム
【 虎視配信-太陽と虎 音楽動物 -Online Program- 】
https://stream.taitora.com

【 太陽と虎 OFFICIAL GOODS -Online Shop- 】
http://shop.pinefields.jp/?mode=cate&cbid=2593711&csid=0

メキシコ人の弟子(juan)をとり共同生活。
姉妹店music zoo MEXICO TAITORAをメキシコにOPENさせる予定。
(※日本からメキシコに向けての配信ライブなども開催)

music zoo MEXICO TAITORA(準備中)
https://twitter.com/musiczoomexico

現状を踏まえての展望や要望

太陽と虎二代目店長見習いを育てようと思ってます。今から募集します。神戸に住み込みで風次に弟子入りできる人連絡ください(部屋は用意します)。fu-ji@taitora.com まで。

コロナ禍を経て、ライブ業界の中で変わったと感じる部分

当たり前のことが当たり前じゃなくなって予定調和が崩れて大変だけどおもしろなってきた。
先の見えない未来に不安もあるが楽しみと感じている。

「ライブハウスが悪い所」と言われるのも個人的には歓迎!

なんでもかんでもコロナのせいにしすぎ。

ライブハウスを愛する人へ

変なバンドのしつこいコール&レスポンスとかもないし、酔っ払って絡んでくる客もいないし、モッシュ&ダイブもなく今はゆったりとライブ観れるんで、今は今のうちに楽しんでいこや。

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O₂ @rockdacypher

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