「海辺の映画館」がTAMA映画賞で最優秀作品賞、大林宣彦の言葉を大林恭子が伝える

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第12回TAMA映画賞の授賞式が本日11月29日に東京・府中の森芸術劇場 どりーむホールで行われ、最優秀作品賞に輝いた「ラストレター」の監督・岩井俊二、「海辺の映画館―キネマの玉手箱」のプロデューサー・大林恭子が登壇した。

大林恭子(手前)。

大林恭子(手前)。

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岩井俊二

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「ラストレター」は手紙の行き違いをきっかけに始まった2つの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生や成長をつづる物語。松たか子、広瀬すず、福山雅治、神木隆之介、森七菜、庵野秀明らがキャストに名を連ねた。岩井は「東日本大震災があって、その年にドキュメンタリーのために現地に行ったんですが、自分が生まれ育った宮城県仙台市という場所をそのときに再認識したんです」と振り返り、「なんらかの恩返しができればとずっと思っていましたし、映画を撮りに行かなければと思っていたんです。それが『ラストレター』で叶いました」としみじみ述べた。

左から森七菜、福山雅治、岩井俊二。

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最優秀男優賞を受賞した福山、最優秀新進女優賞を受賞した森もステージに登場。福山は「みんなが岩井監督の映画を愛していましたし、監督のイメージするものを目指していました」と笑顔で語る。森は「いい映画にしたいなと思っていました」と述懐。2人の言葉を受けた岩井は「素晴らしいキャストの皆さんに出演していただいて、非常に撮りがいのある作品でしたね。至福の時間でした」と言及した。また岩井は「しばらくコロナで大変な状況は続きます。僕らのようなクリエイターとファンの皆様との絆を紡ぎながら、何かを作っていければと思っています」と願いを込めた。

左から厚木拓郎、常盤貴子、奥山和由。

左から厚木拓郎、常盤貴子、奥山和由。[拡大]

2020年4月10日に死去した大林宣彦が監督を務めた「海辺の映画館―キネマの玉手箱」では原子爆弾投下前夜の広島にタイムリープした3人の若者が、移動劇団「桜隊」を救うため奔走するさまが描かれる。授賞式には大林恭子のほか、プロデューサーの奥山和由、キャストの常盤貴子厚木拓郎細山田隆人細田善彦吉田玲が出席した。

前列左から吉田玲、細田善彦。後列左から細山田隆人、厚木拓郎。

前列左から吉田玲、細田善彦。後列左から細山田隆人、厚木拓郎。[拡大]

大林恭子は「(大林宣彦を)黒澤明監督がすごくかわいがってくださって。黒澤監督は『世界が平和になるには400年掛かると思う。400年生きていられないから、大林くん僕の続きをやってくれ』とおっしゃっていました」と回想する。大林宣彦との思い出を問われた常盤は「監督が、こういう場で段取りを無視していたのを覚えています。大林チルドレンとして私も今日は段取りを無視させてください」と言い、「この作品はコロナの影響で初日の舞台挨拶ができませんでした。お客さんの前でそろってご挨拶することができなかったんです。ですからこの4人に大きな拍手をお願いします」と厚木、細山田、細田、吉田を紹介。会場は大きな拍手に包まれる。

最後に大林恭子は「監督は亡くなる前に、毎日『観客の皆さんありがとう』と言っていました。皆さんに、ありがとうという言葉をお伝えできることをうれしく思います」と語った。

第12回TAMA映画賞の受賞結果は以下の通り。

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第12回TAMA映画賞 受賞結果

最優秀作品賞

「海辺の映画館―キネマの玉手箱」(大林宣彦およびスタッフ・キャスト一同)
ラストレター」(岩井俊二およびスタッフ・キャスト一同)

特別賞

城定秀夫およびスタッフ・キャスト一同「アルプススタンドのはしの方
岩井澤健治およびスタッフ・キャスト一同「音楽

最優秀男優賞

福山雅治「ラストレター」「マチネの終わりに
濱田岳喜劇 愛妻物語グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~」「コンフィデンスマンJP プリンセス編」ほか

最優秀女優賞

水川あさみ「喜劇 愛妻物語」「グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~」「ミッドナイトスワン
長澤まさみMOTHER マザー」「コンフィデンスマンJP プリンセス編」

最優秀新進監督賞

HIKARI37セカンズ
ふくだももこ君が世界のはじまり

最優秀新進男優賞

宮沢氷魚his
北村匠海サヨナラまでの30分」「思い、思われ、ふり、ふられ(実写)影踏み」ほか

最優秀新進女優賞

松本穂香「君が世界のはじまり」「わたしは光をにぎっている」「酔うと化け物になる父がつらい」「his」ほか
森七菜「ラストレター」「青くて痛くて脆い」「地獄少女」「最初の晩餐

各賞受賞理由(要約版)

最優秀作品賞

「海辺の映画館―キネマの玉手箱」

大林監督の壮大かつ鮮烈なイマジネーションが炸裂し、戦争とは何かを明示しつつ、映画の未来は明るいと観客に希望を託した。

「ラストレター」

初恋の記憶が「手紙」に呼び起こされ、人生を歩みつづける希望として現在に差し込んでいくさまを、瑞々しい映像で描きあげた。

特別賞

「アルプススタンドのはしの方」

応援席の高校生にフォーカスした構成は、「しょうがない」から「ガンバレ」へと感情の変化を捉え、落涙するほどの感動を与えた。

「音楽」

男子学生たちが音楽の魅力に目覚めるさまを、繊細且つ膨大な線の動きと音楽のシンクロによってエモーショナルな作品に仕上げた。

最優秀男優賞

福山雅治

「ラストレター」において、若かりし頃を思い今を逡巡する作家をワンシーン毎大切に情感をこめて演じることで、作品の世界観に溶け込み、観客に強く響いた。

濱田岳

「喜劇 愛妻物語」において、ダメ男の願望を体言しつつも家族への愛情をもにじませ、唯一無二のにくめないキャラクターを創った。

最優秀女優賞

水川あさみ

「喜劇 愛妻物語」において、夫を罵倒しつつ信じる芯の強さを示し、切れ味ある演技に悲喜交々をまとわせて一段の進境を示した。

長澤まさみ

「MOTHERマザー」において、壮絶なまでの“影”の役に挑み、自堕落でありながら魅惑的な母親を演じることで、新境地を切り開いた。

最優秀新進監督賞

HIKARI

生まれつき障がいをもつ一人の女性が、自分の世界を輝かせていくさまを、アニメーションや漫画などを織り交ぜ、多彩に表現した。

ふくだももこ

一筋縄ではいかない高校生たちの心の内側を描き、人を想うことで痛みを伴いながらも世界を切り拓いていく姿に勇気づけられた。

最優秀新進男優賞

宮沢氷魚

物静かな佇まいと透き通るような眼差しで心の揺れ動くさまを自然に表現した。役に真摯に向き合う姿勢は、さらなる飛躍を予感させる。

北村匠海

憂いをおびた眼差しや細やかな心情を表現するふとした仕草で魅了するだけでなく、心に届く声のトーンでも共感を呼び覚ました。

最優秀新進女優賞

松本穂香

映画の情景と調和しながら、時に言葉以上にふるまいで語り、静かな情熱に支えられた表現力でより高く羽ばたくことを感じさせる。

森七菜

「ラストレター」において、天真爛漫な役を輝くような透明感をもって活き活きと演じ、物語に爽やかな風を送り込んだ。

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