「ラストレター」松たか子×広瀬すず×森七菜×岩井俊二|無口、ロマンチスト、籠の中の鳥?3人の女優が語る“岩井俊二”

岩井俊二の監督最新作「ラストレター」が、1月17日に公開される。

本作は、手紙の行き違いをきっかけに始まった2つの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生や成長を描くオリジナルストーリー。1998年公開の「四月物語」以来、岩井と久々にタッグを組んだ松たか子をはじめとして、広瀬すず、森七菜、神木隆之介、福山雅治ら豪華な俳優陣が出演に名を連ねる。

映画ナタリーでは、松、広瀬、森、そして岩井による座談会をセッティング。撮影現場でのエピソードに加えて、女優陣には岩井の印象、岩井には撮影中に手応えを感じたという“ベストシーン”をそれぞれ語ってもらった。

取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 塚原孝顕

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希望通りのまたとないキャスティング(岩井)

──「ラストレター」には、幅広い世代の魅力的な俳優陣が参加されていますね。まず岩井監督に、キャスティング時の狙いから伺いたいです。

「ラストレター」より、松たか子演じる岸辺野裕里(左)と福山雅治扮する乙坂鏡史郎(右)。

岩井俊二 難しいことは考えずシンプルに、物語の登場人物として思い浮かぶ人を選びました。役者さんにはそのキャラクターとして生活している感じが出るところまで演じてもらいたいので、それなりの力がないと難しいと考えていたんです。幸いにも皆さんにスケジュールをいただけて、希望通りのまたとないキャスティングができたと思います。

松たか子 私たち、褒められてますね。

岩井 面と向かってはちょっと言いにくい(笑)。

──なるほど。岩井監督は撮影現場で細かく演出をつけないと聞いたことがあります。この作品でも、キャストの皆さんの内から出てくるものを尊重されることが多かったのでしょうか?

松たか子

 シーンごとに細かい話はしませんでしたよね? バス停で鏡史郎さんと遭遇するときに「ベンチから落ちるくらい大きなリアクションをして」と言われたくらい。きっとそういうところにキャラクターの人柄が出てくるんですよね。

岩井 この作品は脚本も僕がやっているから、作品のメッセージはすでに十分伝わっていると思っていたし、役者さんは撮影中にキャラクターについて存分に思いを馳せることができるので、甲高い声で横槍を入れるのもなあと(笑)。ミュージカル仕立てだったり、時代劇でチャンバラのアクションが入ればもう少し細かいお願いをすると思いますが、こういう話のときは空気感を大事にします。

広瀬すず この作品では2役演じましたが、私もそれぞれのキャラクターについて何も言われませんでしたね。忘れているだけかもしれませんが……。

岩井 たぶんほとんど言っていないと思う。(広瀬が)何かはしてくるだろうとは思っていたけれど。

広瀬 岩井さんの期待に応えられたかはわかりません(笑)。私が演じた未咲と鮎美は、考えても答えが出ない役だったので「これは考えるより現場に入って演じたほうが早い」と、わりと早い段階で気付いたんです。過去と現在のシーンはそれぞれ対面している役者さんが違うので自分の中に生まれた感覚に身を預けていました。

──ちなみに演技についてある程度委ねられるのは、俳優としてはやり甲斐を感じますか? それともプレッシャーでしょうか。

広瀬すず

 本当に何も言われないのは苦しいけれど岩井さんはそういうタイプではないし、自然と監督が撮りたいものが残っていった印象がありました。委ねられているようで、実はそうでないのかもしれないです。私は自由にやらせてもらっている気になって過ごしていたのかも?

広瀬 確かに……! 「よかったよ」以外は何も言ってくれない監督さんの現場では、私は「ダメだったかな」と思っちゃうんです。今回は本当にダメだったらさすがに言ってもらえるだろうなと監督を信頼していた部分があったので、私も松さんと同じ気持ちだった気がします。