連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」が、WOWOW、WOWOWオンデマンド、Leminoにて2月15日から放送・配信される。
北方謙三の歴史小説「水滸伝」を初めて映像化した全7話の本作は、12世紀初頭・北宋末期の中国を舞台に、理不尽な時代を変えようとする者たちの群像劇。正義を信じる下級役人・宋江が、腐敗した世を憂い「替天行道」という世直しの書を記したことから、運命が動き出す。宋江役で織田裕二が主演を務め、反町隆史、亀梨和也、満島真之介、波瑠、玉山鉄二、松雪泰子(特別出演)、佐藤浩市(友情出演)もキャストに名を連ねた。監督は、「沈まぬ太陽」「Fukushima 50」で知られ、織田とはドラマ「振り返れば奴がいる」「お金がない!」などでもタッグを組んだ若松節朗が務めている。
映画ナタリーでは、原作ファンであり北方とも対談経験のある講談師・神田伯山にインタビューを実施。高校時代、初めて買った活字の本が「水滸伝」だという彼に、中国の原典を再構成してより深い人間ドラマを描いた“北方水滸伝”の魅力を語ってもらった。またひと足先に鑑賞したドラマには「逃げていない」という力強い感想も。伯山が「今ドラマ化するのが面白い」と話す理由とは?
取材・文 / 九龍ジョー撮影 / YURIE PEPE
ヘアメイク / クジメグミ
連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」本予告公開中
中国の四大奇書の1つとされる「水滸伝」を原典としつつ、全体を大胆に再構築し、独自の解釈と創作を加えてつづった“はみ出し者たち”の叛逆の物語。1999年から2005年にかけて集英社・小説すばるで連載された同作は第9回司馬遼太郎賞を受賞し、壮大なスケールと緻密な人間描写で今もなお読者を魅了し続けている。続編の「楊令伝」「岳飛伝」をあわせたシリーズ累計発行部数は1160万部を突破した。
舞台は12世紀初頭・北宋末期の中国。腐敗がはびこる世に、正義を信じる1人の下級役人・宋江が立ち上がった。彼の言葉をまとめた世直しの書「替天行道」は、理不尽な時代を変えようと抗うすべての者たちの心を震わせる。同じ志を持つ彼らは、梁山湖に浮かぶ盗賊の山寨を奪取。“梁山泊”と名付けて集い、やがて腐り切った国家との壮絶な戦いに身を投じていくのだった。
宋江(演:織田裕二)
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光を灯すカリスマ
表向きは戸籍係として働く下級役人。腐敗した世を憂い、世直しの書「替天行道」を記したことで運命が動き出す。剣の達人でも、軍略に秀でた知将でもないが、どんな人間も見捨てないその人徳こそが梁山泊という志の集団の核となっている。
晁蓋(演:反町隆史)
林冲(演:亀梨和也)
楊志(演:満島真之介)
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誇り高き義の武人
建国の英雄・楊業の末裔で、誇り高き血を受け継いだ正義の武人。禁軍の将校として帝に仕えていたエリートだったが、腐敗した体制への葛藤と、宋江らとの出会いをきっかけに、自らの信じる正義のはざまで揺れ動く。
済仁美(演:波瑠)
李富(演:玉山鉄二)
馬桂(演:松雪泰子 ※特別出演)
王進(演:佐藤浩市 ※友情出演)
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武を極めし孤高の師
かつては北宋の帝を守る禁軍の武術師範を務めた武術の達人。廃れ切った国家の策略によりあらぬ叛乱の疑いをかけられ、追われる身となることに。林冲の助けで母・王母とともに危険を脱するも、その後の行方はいかに……。
コロコロコミック、ジャンプ、ヤンジャン…で、次が北方謙三
──初めて買った活字の本が、北方謙三さんの「水滸伝」だったそうですね。
そうなんですよ。本との出会いで言えば、親が読んでくれる絵本から始まって、小学校の課題図書があって、コロコロコミックに行って、少年ジャンプ、マガジン、サンデー、そこからヤンジャン、ヤンマガ……で、その次が北方謙三だったんです。
──マンガからいきなり(笑)。
飛びましたね(笑)。今はなき池袋の芳林堂書店でふらふらと本を見てたら、装丁が気になったんです。手に取ってみたら、最初の1、2ページからもう、面白いんですよ。そこから止まらなくなって。
──何も知らない高校生に「面白い」と思わせるのはすごいですね。
かつて立川談志師匠が「若いギャルから常連のマニアまで満足させるのが、一番の芸だ」とおっしゃってましたが、それに近いことを北方先生はやってると思います。
──そこまで高校生の伯山さんを惹き付けたものはなんだったんでしょう?
これ正直に言っていいのかな? 北方先生の小説ってところどころエロい場面があって、次またそういう場面を読みたくて、“止まり木”のように読み進めていくという(笑)。まあ、でも、記憶の中ではエロとか暴力とかけっこう激しかった印象があるんですが、今読み返すと技術の高さに目がいくようになりますね。
──当時、「水滸伝」新刊のサイン会にも行ったそうですが、今や北方さんとは何度も対談するような関係ですよね。
不思議な縁ですよ、ありがたいことに。サイン会、今でも覚えています。「北方謙三先生です!」というアナウンスとともに拍手の中、先生が出てきて。また、並んでいる読者の人たちもディープなんです。自分が好きな登場人物について、「〇〇を殺さないでください!」って北方先生に懇願する人もいたりして。
──キャラクターへの思い入れが(笑)。
それも“北方水滸伝”の力ですよね。本来の「水滸伝」って梁山泊に108人の豪傑・好漢が集まってくる物語だけあって、キャラクターの数が多い。いろんなバージョンを読むと、中には影が薄いやつもいるんです。だけど北方先生の「水滸伝」は、全員キャラが立っていて、1人ひとりへの熱量がすごい。原典の「水滸伝」をいったんバラして、背景や時系列、人物像まで一から再構築しているんですよね。なので、何も知らない高校生の僕でも楽しめる物語になってる。
──その古典を現代に伝えるアプローチは、伯山さんの講談にも通じるものがありますね。
おこがましいですけど、近いものがあると思います。古典を現代のお客様にどう届けるか。北方先生は「俺が読みたいものを書くんだ」っておっしゃってましたけど、結果として、その最良の答えの1つになっていると思います。
ドラマ「北方謙三 水滸伝」は「逃げてない」
──今回、その北方謙三版「水滸伝」のドラマの序盤を観ていただきました。撮影期間は約8カ月、日本全国を巡る大規模ロケだったそうです。
このドラマ「北方謙三 水滸伝」は「逃げてない」と思いました。今ってなんでもファスト化する時代じゃないですか。ショート動画もそうだし、テレビで講談をやるときも「3分で」「5分で」って言われる。でも、長い物語でしか伝えられないことってある。北方先生の原作は、続編の「楊令伝」「岳飛伝」まで入れたら全51巻ですよ。それを十数年掛けて原稿用紙に手書きした。ファストの対極みたいなもので、だからこそ読む側を引き込む熱量がある。ドラマにも、その熱量を縮めたくないっていう意志を感じました。しっかり描いてますもんね。
しかも、みんな豪快に笑うし、豪快に悲しむ。感情がむき出しなのがいいですよ。それでこそ「水滸伝」だなと。僕、ここ何年かの時代劇に思うところがあって、現代風の言い回しを入れたり、ちょっとした小ネタで笑いを取るような作品があるじゃないですか。
──設定は時代劇なんだけど、中身は現代ドラマのような作りっていう。
それはそれで1つの手法ですけど、それって視聴者を信用していないというか、リテラシーを低く見積もっているとも思うんです。でも、ここ最近また、時代劇の流れが来てますよね。真田広之さんの「SHOGUN 将軍」がエミー賞を獲って、日本では「侍タイムスリッパー」も数々の賞を受賞されました。岡田准一さんのNetflixシリーズ「イクサガミ」も話題になっている。小細工に逃げないで、王道で勝負して、ちゃんと今のお客さんに届いている。そういう流れの中で、この「北方謙三 水滸伝」みたいなドラマが出てくるのはうれしいですね。
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織田裕二さんの緻密さや繊細さが、宋江に合っている

