「君が世界のはじまり」松本穂香×中田青渚×片山友希×金子大地×甲斐翔真×小室ぺい×ふくだももこ 座談会|ほとばしる希望と絶望、どこにも行けない高校生の“はじまり”の物語

「君が世界のはじまり」が7月31日に公開される。「おいしい家族」の監督・ふくだももこが今回作り上げたのは、退屈な町でくすぶる高校生たちの青春物語。「リンダ リンダ リンダ」「ピース オブ ケイク」で知られる向井康介が脚本を執筆した。

本特集では高校生を演じた松本穂香、中田青渚、片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺい(NITRODAY)にふくだを加えた座談会を実施。実年齢より下の高校生を演じたことや、それぞれの高校時代について話を聞いた。また映画のストーリーにちなみ「ひと目惚れはアリかナシか」という話題も。顔を合わせるのは撮影以来という7人の、軽快なトークを楽しんでほしい。

取材・文 / 小澤康平 撮影 / 木村和平

キャラクター紹介

縁(松本穂香)
(松本穂香)
成績が学年で1番の優等生。悩みがないように見えるが、ある秘密を抱えている。親友の琴子からは「あんた、ゆかり言うより、えんっぽいわ」という理由で“えん”と呼ばれている。
琴子(中田青渚)
琴子(中田青渚)
縁の親友。成績は学年でビリで、授業をサボり旧講堂の地下室でよくたばこを吸っている。これまでに8人と付き合ってきたが、地下室に偶然居合わせた業平に一目惚れする。
純(片山友希)
(片山友希)
母親が家を出ていったことで、父親に怒りを抱いている高校生。衝動的に転校生の伊尾と関係を持ち、刹那的なつながりにのめり込んでいく。
伊尾(金子大地)
伊尾(金子大地)
東京から大阪に引っ越してきた転校生。義理の母と関係を持ちながら、それを知っている純とも関係を続けている。早く町を出て、東京の大学に行きたいと考えている。
岡田(甲斐翔真)
岡田(甲斐翔真)
縁のクラスメイト。サッカー部主将で、女子生徒から熱い視線を浴びる人気者。一方で琴子に憧れており、彼女は自分の存在さえ認識していないのではないかと思っている。
業平(小室ぺい)
業平(小室ぺい)
サッカー部所属の高校生。岡田と仲がいい。穏やかに見えるが家庭に問題を抱えていて、それを周囲に話せずにいる。

撮影以来の再会を果たした7人

甲斐翔真 このメンバーがそろうの久しぶりですよね。

松本穂香

ふくだももこ 撮影以来!

松本穂香 うれしいですね。

──撮影中は皆さんどのように過ごしてたんですか?

松本 (中田を見ながら)私たちは撮影前からお茶に行ったりしてたよね。撮影中は常に一緒にいて。

中田青渚 仲良くさせていただきました。

松本 青渚ちゃんはずっと琴子でいる感じだったね。

甲斐 撮影中叫んだり、アッパーだった(笑)。

中田 琴子は桁違いのテンションなので、オンオフ切り替えられなくなるのが怖くて……ずっと動いてました!

──片山さんと金子さんは、ショッピングモールの非常階段での刺激的なシーンが初日だったと聞きました。

左から金子大地演じる伊尾、片山友希演じる純。

金子大地 そうなんです。僕らのシーンは作品の中でも少し色味が違うんですよね。

片山友希 いつも暗いところで撮影していて太陽がなかった。ずっと2人だったので、ほかの人がいるとちょっと変な感じがしましたね。

金子 みんながさわやかに見えました。

──甲斐さんと小室さんは仲良しのサッカー部員を演じていますが、撮影の合間にも交流を?

甲斐 ぺいくんとは韓国料理を食べに行きました。

小室ぺい お肉おいしかったです。

高校生を演じることへの戸惑いは…

──原作は「えん」「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」という、ふくださんの小説2冊です。「君が世界のはじまり」というタイトルはどうやって決めたのでしょうか?

ふくだももこ

ふくだ 映画が完成したあとに、6人それぞれにとって“誰かが誰かのはじまりになっている物語”だなと思ったんです。ポジティブなワードというのも意識しました。

──それは監督お一人で?

ふくだ 脚本の向井(康介)さんやプロデューサーと一緒にです。私が何個目かに出した「君が世界のはじまり」を、向井さんが「これいいね」と言ってくれて。

──ほかの候補は覚えてますか?

甲斐 気になる!

ふくだ プロデューサーは「たかが世界の終わり」と言ってましたね。(グザヴィエ・)ドランを意識しすぎて(笑)。

甲斐 ははは(笑)。

──本作は、エネルギーを秘めているもののどこにも行けない、何者にもなれない高校生たちの物語です。脚本を最初に読んだときどう思いましたか?

松本 純粋に面白いと思ったんですけど、皆さんどうですか?

中田 面白いし、監督の思いが乗っかっているなと思いました。熱量がすごい。

金子 伊尾は慣れない環境でもがいているキャラクターなんですが、僕も北海道から東京に出てきたので共感できることが多かったです。繊細で頭がいいんだけど、とにかく視野が狭い。誰かを振り回しているようで、実は振り回されている伊尾を演じるのは楽しみでした。

甲斐翔真演じる岡田(右)。

甲斐 僕が演じた岡田は、ほかのキャラクターと比べて大きな悩みがない。後々監督とも話したんですけど、映画の中のオアシス的な存在です。心優しくて誰とでも仲良くできる人物なんですが、そういう人っていそうでいないので、その印象を作り出すのは難しそうだなと、考え込みました。

小室 ……僕も一緒の感じです。

甲斐 え、岡田役だっけ!?

一同 (笑)

──小室さんは、今回が俳優初挑戦になりますね。

小室 はい。食らい付いていった感じです。客観的なイメージを持つのが難しくて、普通の歩き方も忘れてしまうような感覚になって。カメラが回っている間は余計なことを考えず自然体を意識しました。

──共演シーンの多い松本さんから見て、小室さんの演技はいかがでしたか?

松本 声が素敵で、「うん、いっぱい走る」という大好きなセリフがあるんですけど、何回観てもふふってなります。それはぺいくんしか表現できないことだと思いました。

小室 (照れながら)ありがとうございます。

金子大地

──皆さん撮影時はすでに高校を卒業していたと思うのですが、高校生を演じることに戸惑いはなかったですか?

松本 私はなかったですね。そんなに器用じゃないというのがあるんですけど、この作品に限らず年齢は気にしていなくて、そこはメイクさんやスタイリストさんが補ってくださっていると思っています。

片山 私も高校生だからこうしなきゃいけないという考えはなかったです。純は寂しさを抱えているキャラクターですが、寂しさに年齢は関係ないと思ったので。

金子 僕は少しだけ意識しました。でも主演の松本さんと、相手役の片山さんが同い歳なので大丈夫だなと思っていました。本当の高校生と並んでいたら違和感があったかもしれませんが。

片山 (笑いながら金子を見て)意識してないやろ(笑)。

金子 (スルーして)……なので2人には「ありがとう」と言いたいです。