音楽ナタリー

sleepy.ab、地元で迎えた最上のツアーファイナル

昨年11月から行われていたsleepy.abの全国ツアー「paratroop tour」の最終公演が、1月30日に札幌の道新ホールにて開催された。

この日のセットリストは基本的に、1月24日に東京キネマ倶楽部で行われたセミファイナル同様、最新アルバム「paratroop」を軸とした内容。しかしホールでしかできない特別演出も取り入れられ、特にストリングスカルテットの生演奏が加わった後半部分は、千秋楽ならではの独特な雰囲気とあいまって格別な空間を構築していた。その特別な空気を味わうために、会場には道外から足を運んでいる観客の姿もちらほら。バンドの性格上、興奮や熱気が漂うようなことはなかったが、開演前から観客の強い期待感がホールを満たした。

場内アナウンスが流れ定刻を迎えると、静かな足取りでメンバーが順々にステージ下手から姿を見せる。ライブの始まりを歓迎する拍手がひとしきり響いた後で奏でられたのは、最新アルバム「paratroop」の1曲目「ダイバー」。映像作家・小嶋貴之によるVJと舞台上に設置されたベールが幻想的な雰囲気を醸し出す中、観客は会場に広がるやわらかなアンサンブルに身を委ね、うっとりとした表情を浮かべた。

1曲目を終えたところで成山剛(Vo,G)が観客に向かって挨拶。と、ここでツアー生活がすっかり身に染みついてしまったのか、「札幌から来ましたsleepy.abです」という言葉が思わず出てしまう。しかしここは彼らの地元。すぐさま「いや、札幌に帰ってきました」と言い直し笑いを誘った。

前半で演奏されたのは「アクアリウム」「インソムニア」「ナハト・ムジィク」などリズム隊を担う田中秀幸(B)と津波秀樹(Dr)の底力が試されるナンバーたち。いずれもライブハウスでは骨太さが押し出される楽曲だが、ホールでは重量感を残しつつも丸みを帯びた音に変容。ドープなサウンドにまろやかさを与えていたのが印象的だった。

キネマ倶楽部公演でも展開された成山と山内憲介(G)による地方のイカランキングトークを挟み、中盤は多幸感あふれるナンバーが続く。その音のあまりの心地良さに、眠りの世界に降下していく観客も見受けられたのもこの時間帯。その間、芯のあるリズムをバックに、成山は優しく繊細な歌声を響かせ、山内憲介(G)は幻想的なギターで会場を華やかな空気で包んでいった。

「メロディ」の後にはステージにストリングス隊がステージに登場し、「arcadia」がスタート。弦楽器が奏でる豊かな音色とバンドサウンドが融合し、ふくよかな音をオーディエンスに届ける。楽曲を演奏し終えると、成山は「札幌だけ特別なことをやりたくて。ストリングス隊がいると頼もしいですね。いつもいてくれるといいんですけど……」と笑いながらストリングス隊を紹介。その後は「Scene」「flee」「unknown」が熱演され、これ以上ないほどの豊潤なアンサンブルが響く中で本編は締められた。

アンコールでメンバーは盛大な拍手に迎えられてステージに再登場。成山と田中のゆるく絶妙なトークの後、4人は暖色系のぬくもりのある照明の下、ストリングスを取り入れた形で「賛歌」を演奏。神々しい音が折り重なり、溜息の出るような空間を作り上げていった。アンコールの2曲目として披露されたのは、sleepy.abのターニングポイントを提示する曲となった「メトロノーム」。耳に入り込むとほどけていく優しい歌声と言葉は、会場をゆっくりと伝いオーディエンスの気持ちを満たしていった。

ラストナンバーとして定番曲「24」を届けると、4人は人で埋め尽くされた客席を目に焼き付けるように見渡し、名残惜しそうにステージの下手に消えていった。一般的なロックバンドのライブにある熱狂や興奮、一体感とは無縁のsleepy.abだが、静謐で圧倒的な世界観は唯一無比としか言いようのないもの。それをバンドとストリングスという編成で再現したこの日のパフォーマンスは、観客の一人ひとりに届いたようで、それを裏付けるように終演後もさざめくような拍手が響き続けた。

「paratroop tour」道新ホール公演セットリスト

01. ダイバー
02. 四季ウタカタ
03. inside
04. 夢の花
05. アクアリウム
06. インソムニア
07. ナハト・ムジィク
08. 雪中花
09. メロウ
10. ドレミ
11. メリーゴーランド
12. メロディ
13. arcadia
14. Scene
15. flee
16. unknown
<アンコール>
17. 賛歌
18. メトロノーム
<ダブルアンコール>
19. 24

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