SUPER★DRAGON「Concealer」インタビュー|9人のユートピアを求めて 10周年イヤー1作目で示す無比のアティチュード

SUPER★DRAGONが12月3日にニューシングル「Concealer」をリリースした。

今年9月に結成10周年イヤーに突入したSUPER★DRAGON。その1発目のシングルとなる今作には、読売テレビ系ドラマ「悪いのはあなたです」のエンディング主題歌として書き下ろされた表題曲「Concealer」、10 周年を記念したアニバーサリーソング「笑い話」、メンバーのジャン海渡と池田彪馬がプロデュースした「Jungle Gym Kings」の3曲が収められている。

リリースを記念して、音楽ナタリーではあいにく不在となった田中洸希を除くメンバー8名にインタビュー。収録曲の話題を軸に、10年という月日を歩んできた9人の“今”を探った。

取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 須田卓馬

全人類、一度か二度は嘘を……

──表題曲「Concealer」はすでに先行配信され、ミュージックビデオも公開されていますが、コメント欄に素敵な反応が並んでいますね(※取材は11月中旬に実施)。

ジャン海渡 「Concealer」はMVも含め世界観を突き詰めた作品ですが、今回は特に、BLUE(SUPER★DRAGONファンの呼称)以外の方にもいい届き方をしている実感があります。SUPER★DRAGONの独自性や魅力がより一層広く届いたらいいなと、コメントを見ていて思いますね。

古川毅 今回、MVに付いているコメント数が多いですね。

飯島颯 わかる。多いよね。

松村和哉 ドラマがきっかけでMVを観に来てくださる方がけっこういるのかな。自分が何かドラマを観るとして、主題歌のMVまで飛ぶか?って言われたら怪しいなと思う。なのにMVを観に来てくださる方がこんなに多いというのは、曲がちゃんといいものである証拠だなと。そう実感できてうれしいです。

──今作はジャンさんがコンセプト設定を担当されたそうですが、制作の出発点は?

ジャン 「悪いのはあなたです」のタイアップが決まり、僕がメロディと歌詞を作ることになりまして。まずビートメイカーをどうするかを考えました。そこから「Dark Heroes」(メジャー1stアルバム「SUPER X」リード曲)を一緒に作った、僕の友達のGeek Kids Clubと組むことになって、ボーカルメンバーも一緒に会議をして。そこで決めた方向性をもとに制作を進めていった感じです。

──その会議ではどんな話を?

ジャン タイアップ曲でもあるので「サビには耳に残りやすいメロディを持ってきたいね」みたいな話をしたり。あとは「Dark Heroes」からの流れも考えましたね。そもそもの音楽性をどういうところに持っていくかという、土台作りの会議をしました。

古川 その会議を終えてから、タイプの違う2パターンのトラックが上がってきて。どっちがいいか?みたいなところも意見を出し合って、結果現状のトラックに決まったんです。そこからはジャンがバーッと進めていってくれたので、遠くからボケーッと見てました。

ジャン そうなんだ(笑)。

ジャン海渡

ジャン海渡

──ジャンさんは、ドラマのどんなエッセンスを楽曲に反映させていきましたか?

ジャン 「悪いのはあなたです」という作品は「嘘」や「騙す」ということがテーマになっていると思ったんですね。たぶん全人類、一度か二度は嘘をついたことがあると思うんですけど……。

伊藤壮吾 全人類?(笑)

志村玲於 話の規模感がデカいな。

松村 回数はもっと多いだろ。

一同 あはははは!

ジャン とにかく「嘘」って、書き方次第では広く共感を得られるテーマになるなと思ったんです。だから、歌詞に関しては誰もが「なるほどね、確かにな」と思えるようなものにしたいと考えながら書き進めていきました。あとは今回のドラマが刺激的というか、不倫だったりドス黒い描写もある作品なので、例えば「思い出を殺してでも」みたいに強いワードを持ってきたいなと。そういう響きは特に意識しましたね。

伊藤壮吾

伊藤壮吾

飯島颯

飯島颯

複雑さや繊細さにスパドラらしさを

──トラックは2つの候補を作ったということですが、こちらに関しては?

ジャン 前提として、2つともにハイパーポップの要素を織り交ぜたものにしようという意図で制作しました。その中で「Concealer」のトラックに決めたほうは、ハイパーポップの要素がありつつ生音が入っていて、オーケストラの壮大な空気感もあって。そちらのほうがタイアップ曲としてもいいだろうし、「Dark Heroes」からの流れもきれいだろうということで選んだんです。

──なるほど。

ジャン あとはドラマとの親和性を考えて、Aメロ、Bメロ、サビの流れを大事に。例えばBメロでスマホの中に裏切りの“証拠”を見つけ、衝撃のメッセージが来た瞬間にサビが流れる……みたいな展開作りはすごく意識しましたね。Bメロの終わりからサビの頭にかけてビートが消えるポイントとかは、すごく入念にGeek Kids Clubと話し合って固めたり。あとは積み物をわりとシンプルにして、メロディがしっかり聴こえてくるようにもしました。

──ドラマの中での使われ方もしっかりと想定しながら作っていったんですね。

ジャン めちゃめちゃ想定しました。なんなら構成作りに一番時間をかけたかもしれないです。

池田彪馬 ハイパーポップの要素があるトラックだけど、ポップス特有の明るいムードというよりは、「嘘」というテーマから来る切なさやはかなさ、あとは上品さを大切にしたいという方向性は、最初の会議の段階で話題に上がっていて。それを踏まえたうえで、ジャンくんの細かい作業が終わったあとに曲を改めて聴いたら、すごくいろんなエッセンスが詰め込まれてるなと思いました。1つのジャンルだけでは形容し難い楽曲になったと感じたし、そういう複雑さや繊細さにスパドラらしさも感じられて、すごくいいなと。

池田彪馬

池田彪馬

松村和哉、頭の中で何度も不倫

──作詞にはジャンさんに加え、和哉さんも参加されています。

松村 僕は2番に出てくるラップパートのリリックだけですね。1番の歌詞は今現在の話だと解釈していたので、ラップパートでは不倫に至ってしまうまでのいきさつみたいな部分が見えたらいいなと思って……頭の中でめっちゃ不倫しました。

一同 あはははは!

松村 頭の中でだよ?

古川 これ見出しにしてほしいなあ!(笑)

柴崎楽 「松村和哉、頭の中で何度も不倫」。

松村 それめっちゃいいな。

柴崎楽

柴崎楽

松村和哉

松村和哉

──(笑)。ジャンさん、歌詞についてはいかがですか?

ジャン まず「Concealer」というタイトルは、作詞に参加してくれたALYSAさんが考えてくれたもので。この曲は女性を主人公にして、一人称を「私」に統一したりしているので、化粧品をタイトルにするのも相性がいいだろうと。

──コンシーラーは肌のアラを隠す便利なアイテムだけど、所詮は“化けの皮”でいつかは剥がれ落ちる、というところも楽曲のテーマとうまくマッチしていると感じました。

ジャン そうですね。サビには「Concealer」「Seven days of lies」と、楽曲のテーマをキャッチーに表したフレーズを繰り返し置いて。それ以外にも、強い表現というか面白いワードを使うことを意識しました。あとは終わり方をどうしようか、すごく考えましたね。不倫って……したことがないのでわからないですけど、たぶん、一度手を染めてしまったら繰り返ししてしまうものなのかなと思って。

松村 そうなんだよな……。

ジャン あ、そのキャラでいくんだ(笑)。

志村 経験してるからね、頭の中で。

ジャン 過ちを繰り返してしまう危うさ、弱さを見せたかったので、そういった印象を聞き手に与えるような終わり方にしています。

志村玲於

志村玲於

和哉で見せ切るラップパート

──「Concealer」は、ジャンさんがラップではなくボーカルに回っているのもトピックの1つかと思います。この采配の理由は?

ジャン この曲はラップが1人のほうがいい味が出るんじゃないかと、Geek Kids Clubと話したんです。ラップパートは和哉のラップで見せ切りたいなと。あと、ボーカルの質感や空気感作りが重要になるパートが多かったので、そういう意味でもボーカルに人数を割いてラップは和哉に任せた感じですね。

──女性の視点で表現されている歌詞のニュアンスが、ジャンさんの柔らかな歌声と溶け合っていると感じました。

古川 ジャンが表現したい世界観が、デモの時点で完成されていたんです。だから僕らもそれをすごくポジティブにとらえていましたし、自分のボーカルに関してもジャンを“降ろし”て。「俺はジャン、俺はジャン」って……まあそれは言いすぎですけど(笑)、そこまでデモを聴き込んだ自負はあるので、ジャン的な要素は結果的にアウトプットに現れていると思います。この曲のボーカルは自分的にチャレンジな部分もあったので、すごく楽しかったですし、いい仕上がりになったと思います。

古川毅

古川毅

池田 僕もデモの段階で世界観がはっきりと見えていたから、レコーディングではそれを自分なりに表現しました。デモをしっかりと聴き込んだうえで収録に臨めたので、何かを特別に意識することもなく、ジャンくんの世界観を自分の声に乗せて届けられたかなと思います。

──本日はあいにく不在ですが、(田中)洸希さんのボーカルに関してはいかがですか?

ジャン 洸希の声質だったりウィスパーな歌い方がこの曲にマッチするだろうなと思っていました。自分が曲を作るとき、「ここは誰が歌う」というのを想定することもあって。主体となる毅と彪馬のボーカルパートに関してはあまり考えずに進めることが多いんですが、洸希の歌割りに関しては「ここは洸希の声でおいしくなるな」ということをすごく意識している気がします。「Concealer」に関しても思った通りというか、洸希のおかげで世界観がグッと引き締まった部分がすごくあると思いますね。