MC Boo主催のライブイベント「Boo Night」が約9年ぶりに復活する。
2007年、今はなきナイトクラブ・恵比寿MILKでスタートしたライブイベント「Boo Night」。ミクスチャーロック、ヴィジュアル系など、MC Booのオーガナイズによるジャンルレスなラインナップが特徴で、リスナーにとっては新たな音楽との出会いの場になっていた。
9年ぶりの復活となる今回はツアー形式となり、12月から2026年1月にかけて愛知・Zepp Nagoya、福岡・Zepp Fukuoka、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)、大阪・Zepp Osaka Baysideで開催される。愛知公演にTHE ORAL CIGARETTES、SPYAIR、THE&、福岡公演にMONGOL800、The Ravens、RIZE、THE&、東京公演にACIDMAN、coldrain、MAN WITH A MISSION、THE&が登場。大阪公演のラインナップは近日発表される。
音楽ナタリーでは「Boo Night Tour 2025-26」の開催を記念した特集記事を展開。主催者であるMC Boo、「Boo Night」最多出演者である大木伸夫(ACIDMAN)とJESSE(RIZE、The BONEZ)を迎え、同イベントが音楽シーンに果たした役割や、9年ぶりの復活ツアーに向けた意気込みを語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 大城為喜取材協力 / Bar Boo
公演情報
Boo Night Tour 2025-26
- 2025年12月17日(水)愛知県 Zepp Nagoya
<出演者>
THE ORAL CIGARETTES / SPYAIR / THE& - 2025年12月20日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
<出演者>
MONGOL800 / The Ravens / RIZE / THE& - 2025年12月27日(土)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
<出演者>
ACIDMAN / coldrain / MAN WITH A MISSION / THE& - 2026年1月23日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
<出演者>
※後日発表
「Boo Night」初回に出演したRIZEとACIDMAN
JESSE(RIZE、The BONEZ) RIZEもACIDMANも「Boo Night」の初回に出てるんだよね。
MC Boo 恵比寿MILKが終了するタイミングで、そこのスタッフが「Booさん、最後に何かやってくれませんか?」と声をかけてくれたんだよ。
大木伸夫(ACIDMAN) そうか、あれが「Boo Night」の1発目だったんだ。
MC Boo そうそう、そこで「Boo Night」と「Boo Xmas」が生まれた。最初に大木ちゃんに話したら「MILKの最後なら一緒にやりたい。出させてよ」と言ってくれて、「俺の冠でイベントをするなら、絶対RIZEでしょ」ということでRIZEにも声をかけたんだよね。さらに、先輩である元SNAIL RAMPのAKIOくんがやってるKOOLOGIにも出てもらって。で、ナイトクラブだから朝までのDJタイムに、ムラジュン(村上淳)さんやウエノコウジさん、勝手にしやがれの武藤昭平さん、KYONOくんに出てもらって、最後に自分がDJで締めるみたいな形だったのかな。そういえば、RIZEはその時点で一度もMILKでライブをしたことがなかったんだよね?
大木 意外だよね。
JESSE 俺らは新宿ANTIKNOCKとMILKだけは出たことがなくて。ANTIKNOCKに関しては、いまだにライブできたことがないからね。MILKは俺が16歳、あっくん(金子ノブアキ)が15歳の頃にRIZEのデモテープを持っていったんだけど、「ロックなのかヒップホップなのかよくわからないバンドは、うちではやらないから」と言われて。
MC Boo 当時はまだミクスチャーロックって呼び方も定着してなかったからね。
JESSE そう。当時はジェイゾンズやBLOODY IMITATION SOCIETY、初期のTHE MAD CAPSULE MARKETSあたりがシーンに台頭してきていて、俺はグランジやオルタナが好きだったから、だったらラウドロックにちょっとグランジーなリフを混ぜようと。それが次世代すぎて、当時はまだ受け入れられなかったのかな(笑)。
MC Boo ミクスチャーは当時、一部からディスられてたから。
JESSE RIZEも始めたばかりの頃は「ダセエ」とか言われてた。だから、MILKが終わるってタイミングでやっと出られることになって、俺はすごくうれしかったし、Booちゃんにはすごく感謝してるんだよ。
MC Boo あの日、JESSEはE.D.O.のライブを渋谷のclubasiaでやって、そのまま来てくれたんだよね。よく覚えているんだけどさ、パンツをローで履くからケツの割れ目が見えてて、そこだけ汗をかいてた(笑)。その姿を見て、急いで駆け付けてきてくれたんだなって、俺あのイメージが強烈に残ってるよ。
JESSE まあ、あの日が1発目だったというのは、俺の記憶からは抹消されてるんだけどね(笑)。でも、そういうストーリーがあるからこそ、今回RIZEとACIDMANを「Boo Night Tour」に呼んでもらえるのは、いろいろと辻褄が合うんだよ。
MC Booが引き合わせた出会い
MC Boo ACIDMANとRIZEは「Boo Night」最多出演者だからね。
JESSE ACIDMANと俺らをつなぎ合わせてくれたのも、Booちゃんだし。
大木 いやいや、その前に「Trinity Trip」(2007年9~10月、その年に結成10周年を迎えたACIDMAN、RIZE、10-FEETが行ったイベントツアー)があったじゃん。
JESSE あれ、「Boo Night」より前だったっけ。
MC Boo そうか、「Trinity Trip」も2007年だったんだ。俺が「Boo Night」を続けていくうえで考えていたのは、必ずRIZEとPTP(Pay money To my Pain)には何があってもずっと出てもらいたいってこと。もちろん、ACIDMANは最初に出てもらうことを決めていたバンドだから、大前提として含まれているんだけど。だから、今回「Boo Night Tour」として復活が決まったときに、RIZEは福岡公演のスケジュールがハマったから、さらにモンパチ(MONGOL800)とThe Ravensにも声をかけて。
JESSE 福岡でその組み合わせの「Boo Night」っていうのも、また新しいよね。
MC Boo そうなんだよ。で、東京はACIDMANを筆頭に、MAN WITH A MISSIONとcoldrainという、俺っぽいメンツが集まってくれて。
大木 ちゃんとバランスいい感じで混ざり合ってるよね。
MC Boo 結果的にうまいこといってくれたよ。そう考えると、改めて2007年のMILKでの「Boo Night」でACIDMAN、RIZEに声をかけておいて大正解だったなと。思えば、大木ちゃんとの出会いもMILKだったからね。
大木 僕はBooちゃんの存在を一方的に知ってて。MILKには自分たちが出るライブ以外にもよく遊びに行ってたんだけど、周りから「よくBooさんがいらっしゃいます。不良です」と聞いていたんです。だから、僕ら世代からしたら会いたくない人だった(笑)。でも、あるときMILK地下のバーカウンターでドリンクを注文していたら、後ろのほうからBooちゃんがこっちに向かって歩いてきて。で、「ここで見つかったら音楽人生が終わる」とドキドキしていたら、「大木さんですよね。ACIDMAN大好きです」と声をかけられました。しかも、「特に『水写』が好きです」と言ってくれて。とても不良が聴くようなタイプの曲じゃないから驚きました(笑)。
JESSE いや、悪い人ほどそういうのが好きなんだよ(笑)。
大木 その時点ではまだ疑っていたんだけど、だんだん仲よくなっていって。BooちゃんとJESSEはどういうきっかけで知り合ったの?
MC Boo 俺が「MTVロックス」という番組をやっていたとき、そのイベントにRIZEがゲストで出てくれたのが最初かな。で、終わったあとに「今日はありがとうございました」って挨拶したら、JESSEから「俺、あんたの正体知ってますからね!」と言われたのを覚えてる(笑)。
一同 (笑)。
MC Boo そのあとであっくんと仲よくなっていろいろ聞いたら、渋谷でちょっとしたいざこざがあったときの様子をJESSEが見ていたらしくて。
JESSE やっぱ警戒してたから(笑)。でも俺はそのあとに、Booちゃんとあっくんが親友になってくれたことが本当にうれしくてさ。
MC Boo RIZEが20周年で武道館をやったときかな。打ち上げで急にJESSEが「Booちゃん、俺ずっと言いたかったんだけどさ。あっくんと一緒にいてくれてありがとう」って、急に死亡フラグ立てるようなこと言ってきた(笑)。でも、そういう言葉をかけてもらえたことは、すごくうれしかったよ。
「Boo Night」の歴代出演者に見る、シーンの変遷
MC Boo 2人はこれまでの「Boo Night」での思い出って、何かある?
大木 これはBooちゃんのイベントとか関係なく、ACIDMANは年がら年中ライブをしていて常に極度の興奮状態でステージに立ってるから、ライブのことをあまり覚えてないんだよね。
JESSE わかる。
大木 それよりも、打ち上げのことのほうが記憶に残ってる(笑)。
MC Boo 俺、大木ちゃんに言われて特に覚えているのが、ACIDMANとマンウィズとHEY-SMITHでやった2014年の「Boo Xmas」のときの「マンウィズのほうが売れてるのに、俺たちをトリに選んでくれてありがとう」って言葉なんだよ。俺からしたら、それまでの付き合いを考えたら「そりゃトリをやってもらうでしょ」って感じではあったんだけど。
大木 Booちゃん含め、本当に血の通った人たちがイベントに出るから、ビジネス目的でやっているわけじゃないのも一目瞭然だし、ちゃんとその音楽が好きだから声をかけてることもよくわかってるから、トリに選んでくれたことが本当にうれしかったんだと思う。そういうイベントだから、いつも打ち上げまで楽しませてもらっているし。
MC Boo むしろ、打ち上げのためにやってるようなところもあるからね。
JESSE (手元にある過去の開催リストを見て)これを見て思い出したんだけど、2009年の「Boo Xmas」初日にRIZEが出たとき、ワンオク(ONE OK ROCK)とかUZMKとか、まだ若手だったSiMが出てるんだよね。で、2日目にはPTPがいて、WAGDUG FUTURISTIC UNITYとか当時はまだ無名だったcoldrainもいる。俺はこの頃からシーンが新しいフェーズに入った印象があるんだよ。
MC Boo 確かに。
JESSE ちょうどこの時期、RIZEとPTPは一緒にツアーを回ってたと思うんだけど、2007年も「Trinity Trip」のあとにRIZEとACIDMANが「Boo Night」に出て、2009年のときもRIZEとPTPがツアーで結束した状態で「Boo Xmas」に出ている。そういう意味でも、Booちゃんって現場主義で、常にいろんなライブを観に行っているからこその説得力があるんだよ。さっきの2014年の「Boo Xmas」じゃないけど、マンウィズとヘイスミ、そこにACIDMANを入れてトリにさせる。Booちゃんだからこそできることであって、ちゃんと意味が感じられるんだよね。
大木 この過去の出演者リストを見てると、うちはPTPとは絡みがなかったんだよね。
JESSE ああ、そうか。一度Kに会わせたかったな。
MC Boo 「Boo Night」が始まった頃は、PTPとDragon Ashもまだ絡んでなかったもんね。
JESSE そういえば建志(Kj)の誕生日会があったとき、突然Kから「お前、降谷建志は敵だよな」って電話があった(笑)。
大木 敵(笑)。
JESSE 当時はね(笑)。T$UYO$HIに誘われたらしいんだけど、「お前の敵なら俺行かない」とか言ってきたから、「いやいや、俺は敵かもしれないけど、お前は仲よくなるかもしれないし、お前が俺たちを仲よくさせるきっかけになるかもしれないんだから行けよ」と伝えて。で、行ったら行ったでちょっとしたいざこざがあったんだよね。
MC Boo そう、俺が仲裁したんだから。
JESSE そういう出来事の末にPTPとDAとの間につながりができたし、俺と建志の間にもつながりができたわけで。
MC Boo うん。だからこそ、今回もPTPにはいてほしかったな。でも、その一方でThe BONEZが生まれて。
JESSE 「Boo Night」を通じてシーンやカルチャーの変遷を感じるよね。
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