Mega Shinnosuke×木村太一監督が語る「禁断少女10」

作詞、作曲、編曲、プロデュース、アートワークおよび映像制作を自ら手がけるMega Shinnosukeが、映像ディレクター・木村太一とタッグを組んで制作した「禁断少女10」のミュージックビデオが公開された。

MVには学校の屋上でタバコをふかす女性、学生服のような衣装で演奏するMegaとバンド、1人で踊り狂う男性というどこか物語性を感じさせる人物たちが登場し、ドラマチックなストーリーを紡ぐ。

この特集ではMegaと木村監督に「禁断少女10」のMVができるまでの経緯を取材。そもそも自らMVの監督をするなど映像にこだわりを持つMegaが、木村監督にディレクションを託した理由はなんだったのか。そしてオファーを受けた木村監督が考えたことや、2人がどのようにMVを制作していったのかなど、じっくりと聞いた。

取材・文 / 森朋之

出会いは「すいませんでした」

──Megaさんは、これまでほとんどのミュージックビデオをご自分で撮っていますが、「禁断少女10」のMVのディレクションを木村さんに任せたのはどうしてなんですか?

Mega Shinnosuke 「白い墓」のMVを撮ったときに、役者的な要素が多めの作品を自分で監督するのはけっこうキツいなと思ったんです。ポップな曲だったら勢いやアドレナリンでやれるんですけど、クールめな曲だとそういうわけにもいかなくて。で、「禁断少女10」ができたときに「これは映像監督にお願いしたい」と思ったんです。僕はMVが好きで、長年YouTubeでいろんな作品を観ていて。木村監督のことももちろん存じ上げていたし、オファーしたら承諾していただけたという流れですね。

木村太一 実は7、8年くらい前に、共通の友達の家でMegaくんと会ったことがあるんですよ。そのときにMegaくんは僕が監督した「NulbarichのMVが好きです」と言ってくれたのに、「Mega Shinnosukeってなんなの? アーティストだったら本名でやれば?」ってすごく失礼なことを言ってしまったんですよ。そこで「本名です」と言われて、「すみませんでした」と。その場にいた先輩にもめっちゃ怒られたので、よく覚えてます。

Mega あははは。

木村 その時点でMegaくんのことは知っていて、そのあとの曲もチェックしていました。「禁断少女10」は平成っぽいというか、ちょっと懐かしい感じがあるなと思って。シンプルに好きな曲だったので引き受けました。

Mega よかったです。この曲に限らずなんですけど、今回のアルバム「天使様†」は簡単にできることがやりたくて。前は「誰にでもできそうなものはやりたくない」と思ってたんですけど、制作を重ねていくうちに、シンプルな曲でも自分の色を出せるなと気付いた。あとは歌いやすい曲とか。僕、スナックで飲んだりするんですけど、友達がふざけて僕の曲をカラオケで歌うと、だいぶ歌いづらいみたいで変な空気になっちゃうんですよ。

──確かに「禁断少女10」はシンプルな構成ですよね。

Mega そうですね。エレピとか使うと今っぽくなるんですけど、あえてアコギを採用して。そこは自分のルーツだったり、好きなアーティストの影響だったりしますね。

木村 「禁断少女10」の“10”ってなんなの?

Mega 恋心を寄せている女性の経験人数ということですね。僕、年上の人としかほぼ付き合ったことがなくて。どうしても人生経験や恋愛経験の差があって、そこでモヤモヤしてるんだけど好きになっちゃうんだよな、という曲です。「ドラゴンボール」に出てくる人造人間18号みたいな感じの文字面的なニュアンスもあります。グシャグシャした気持ちを音像と歌声を通して感じてほしいです。それがいいとか悪いではなくて、「こういう感情もあるよね」って切り取りたいんです。思想とかメッセージもなくて、「ただこういう気持ちがある」「そういう人もいる」というか。今回のアルバムはそういう感じで作りましたね。

長文のLINEは一旦読まないことにして

──MVの制作に際して、木村さんの中にはどんなプランがあったんですか?

木村 まずMegaくんにどういう雰囲気にしたいのか聞いて、そこから自分なりに作っていきました。僕はMVは大きく分けると2パターンしかないと思っていて。曲の雰囲気に沿うか、まったく違う見せ方をするかのどちらかなんです。僕は曲の雰囲気からガラッと変えることが多いし、そうやって曲の幅を広げるのもMVというツールならではなのかなと。なので今回も基本的には僕のイメージで作っていきました。まず「禁断少女10」だから、メインキャストは女性だろうなと。そのときにパッと浮かんできたのが学校の屋上で煙草を吸ってる女の子で、そこからどんどん組み立てた感じですね。女の子は高校を卒業したばかりで、ちょっと暇だったら学校に来た。バンドやってるクラスメイトの男の子に教わって、曲を書いてみて、その曲を演奏しているというストーリーを考えました。だからアンプの上にノートが置いてあるんです。そこまで細かい設定があるわけじゃないんだけど、なんとなくそういう絵が浮かんだ感じです。

──女の子が銃を撃つシーンや、男の子が踊りまくる場面もありますね。

木村 MVはペインティングなどのアートに近いところがあって。映画だと「こういうキャラ設定で、こういうことが起きて」という部分をしっかり描くことが多いですけど、MVはそうじゃないから、わりと自由にやれますね。ダンサーは音を表現するために欲しかったんですよね。しっかりコレオがある踊りではなくて、めちゃくちゃなんだけど、生きてる感じがするという。映画「青い春」のイメージもありました。音楽もそうだと思うけど、何かしらの影響を受けているから、それをどうアレンジするかということなんですよね。

Mega 木村監督は抽象的な絵の切り取り方がすごくキレイなんです。自分でMVを撮るときはバイブスを伝えたいだけだから、目に映る情報をめっちゃ増やして、視聴者のテンションを上がりっぱなしにしてきたけど、木村さんに監督してもらった「禁断少女10」のMVは落ち着いて没入できる。僕が撮るものとはまったく違うし、プロフェッショナルだなと思いました。

「禁断少女10」MVの撮影風景。

「禁断少女10」MVの撮影風景。

──没入感もあるし、観てる側が勝手にストーリーを想像してしまうMVですよね。

木村 余白を作ってるところはありますね。観る人にもそれぞれフィルターがあるし、それを通して解釈できたほうがいいと思うので。答えみたいなものは必要ない。MVに関しては、ですけどね。そういえばMegaくんから事前に長文のLINEが送られてきたんですけど、それは一旦読まないことにして進めました(笑)。

Mega あははは。

木村 読むとどうしてもその内容に引っ張られて、「叶えてあげたい」と思ってしまうので。それで映像のバランスが崩れることもあるんですよ。

──ちなみに長文のLINEはどんな内容だったんですか?

Mega 衣装のこととか。最初は制服を着ることになってたんですけど、僕は高校も辞めてるし、単純に制服が似合わないんです。

木村 結局、そこはMegaくんに任せました。

Mega 下北沢で制服っぽいデザインのジャケットを見つけたので、それを友達のスタイリストのIORIに見せて。彼が「OK、こういうノリね」って全体の衣装をそろえてくれたという。

木村 Megaくんが決めた衣装を見て、またちょっと世界観を調整したり。そういうやりとりはありましたね。

次のページ »
え、もう終わり?