Paleduskの1stアルバム「PALEDUSK」が11月26日にリリースされた。
ラウドミュージックを軸に、さまざまなジャンルを取り込んだ音楽性を武器とする4人組ロックバンドPaledusk。今年7月にテレビアニメ「ガチアクタ」のオープニング主題歌「HUGs」でavexのA.S.A.Bよりメジャーデビューを果たした彼らは、ついにキャリア初となるオリジナルアルバム「PALEDUSK」を完成させた。
メジャーデビュー以前から多数の海外名門レーベルと契約を交わし、DAIDAI(G)がイギリスのロックバンドBring Me the Horizonのアルバムにプロデューサーとして参加するなど、海外のラウドシーンで先に人気に火が着いたと言える彼らの音楽はどのように進化してきたのか。バンド結成当時のエピソードから、意外にもアナログな制作の裏側まで、4人にじっくり語ってもらった。
取材・文 / 後藤寛子撮影 / 大橋祐希
日本を拠点にしつつ世界へ──バンドの成り立ちは
──PaleduskはKAITOさんとTSUBASAさんの2人で結成されたんですよね。
KAITO(Vo) TSUBASAとは1つ前のバンドから一緒に活動してるんですけど、共通の知人に「激しいバンドを一緒にやってくれそうな人いない?」と相談して、その人からの紹介で出会いました。僕が高校生で……。
TSUBASA(G) 僕が大学生。その共通の知人と同じ軽音サークルに入っていたんです。
KAITO そもそもPaleduskを作ったときは、ただ自分が好きだったオーストラリア産のメタルコアバンドみたいな音楽がやりたかっただけで。こんな長く続けていく予定はなかった(笑)。
TSUBASA 僕も当時は10年も続くと思っていなかったですね。まさか人生の3分の1をPaleduskとして過ごすことになるとは。
──そして、2017年にDAIDAIさんが加入します。
DAIDAI(G) 僕はギターの勉強をしにアメリカの学校に通っていて、海外で活動したいと思っていたんです。でも、アメリカだとバンド人口が多いので、それならこっちで日本代表になって世界に行けばいいんじゃないかと。アメリカでは基本的にメタルバンドはメタルバンドとしか対バンしないけど、日本だといろんなジャンルの人と対バンできるし、独自の音楽の“生態系”がある国なので、日本を拠点にしつつ世界に行くのが一番かもしれないと思って帰国しました。
KAITO 俺はDAIDAIに対して、「Paleduskを辞めてアメリカに行くから、そこで一緒にバンドを組んでくれないですか?」というテンションでした。でも、そのときに今言ったようなことを話してくれて。「絶対に日本でやったほうがいい」と言われたので、日本に帰ってきたDAIDAIをPaleduskに誘いました。今自分たちの身に起きてることを考えると、それが正解でしたね。
──そして、2023年にBOBさんが加入すると。
BOB(Dr) 加入の一番大きなきっかけは、3年前にPaleduskのオースラリアツアーにサポートで入ったことですね。2週間のツアーだったんですけど、いろいろ事情があってKAITOとDAIDAI以外のメンバーが出国できなくなって。当日の朝に空港にいるDAIDAIから電話がかかってきて、「今からメルボルンに来れる?」と言われたんです。
TSUBASA 大アクシデントでした(笑)。
DAIDAI 「ちょっと渋谷まで来れる?」くらいのノリで電話しました(笑)。
BOB Paleduskの曲は難しいし、不安もあったけど、そのときにサポートをやり切ったことが自信につながりました。その前から「ドラマーが辞めるからバンドに入らないか」とDAIDAIから誘われていたので、改めて自分がやりたい音楽や叩きたいドラムを実現できるのはPaleduskだと思って加入を決めました。もともとメンバーとは友達だったので、結成当初からライブをよく観ていて。Paleduskの音楽性やスタイルが変わっていくのがカッコいいなと思っていたんですよ。
──メンバーチェンジを経て、今「この4人でPaledusk」という感覚は生まれていますか。
KAITO はい。だからこそ、今回のアルバムにセルフタイトルを付けたんだと思います。
ターニングポイントとなった楽曲は
──1stアルバムの「PALEDUSK」にはインディーズ時代のベスト盤がセットとなった形態もリリースされます。ベスト盤に収録されている楽曲の中からターニングポイントとなった曲を選ぶとしたらどの曲ですか?
KAITO 「NO!(VARIED ver.)」です。DAIDAI加入以降のPaleduskが進んでいく道を決めたのはこの曲だと思います。
──Paleduskとして従来のメタルコアの枠を壊した曲ですよね。
DAIDAI そうですね。僕が加入して最初の頃に作った曲で、メンバーに渡したときは「カッコいいけど、Paleduskでやるのは違うかな」みたいな反応だったんです。やっぱり新しいことをやろうとすると最初は戸惑うから、まずはメンバーから説得しないといけないなと。
KAITO DAIDAIが入る前は俺とTSUBASAで曲を作っていたけど、自分たちはメタルコアバンドという感覚だったから、こういう展開の次はこういうブレイクダウンが来て……みたいなイメージにとらわれていたんですよ。「NO!」はそういう枠にハマってない曲だったから、イヤというより「カッコいいけど、Paleduskとしてこれでいけるのかな?」という不安があって。結果的に「NO!」が出たときの反響を受けて「すみません、マジ黙るっす!」となりました(笑)。
DAIDAI 俺としては「うまくいってラッキー!」って感じでした(笑)。インディーズベストだと、「LIGHTS(HAPPY TALK ver.)」だけ俺が入る前からあった曲で。TSUBASAとKAITOで一緒に作ったんだよね。すごく素敵な曲。
TSUBASA 昔からあった曲を、「HAPPY TALK」(2020年リリースの5th EP)に入れる際に再録したんです。
KAITO 友達が亡くなったときに作ったのもあって、すごく感情が乗った曲なんですよね。ライブではここぞというときに今も活躍してくれるので、絶対にベストに入れたいと思っていました。
──BOBさんは、インディーズベストの中で覚えるのが難しかったり、印象に残ってたりする曲はありますか。
BOB 難しいのは全部です(笑)。特に「BLACK ICE」は、ライブでやるときに今でも緊張感がありますね。それも楽しさではあるんですけど。
TSUBASA ギターも難しいので、僕もライブでこの曲の前には腕のスタミナを温存しておこうという気持ちになります(笑)。
──そもそもカロリーが低い曲がないですよね。DAIDAIが曲を作るときは、メンバーを鍛えたい、驚かせたいという発想もあるのでしょうか。
DAIDAI ボーカルに対してはありますね。音楽性の幅を広げるためにもどんどん新しいことにチャレンジしてほしいし、「こういう歌い方を覚えたらアツいかも」というイメージを曲に込めたりします。自分に対しても、そのときに習得したいアレンジやフレーズを盛り込んでケツを叩くところがあるので、バンドをプロデュースしてる感覚が強いかもしれない。メンバーに無理な要望をするわけじゃなく、毎回ちょっとだけ背伸びさせたいんですよ。
BMTH、ワンオク……世界的ロックバンドを目の当たりにして
──Bring Me The HorizonやONE OK ROCKの制作に呼ばれるという経験はDAIDAIにとって修行になったのでは?
DAIDAI 単身で乗り込んだので、かなり鍛えられました。でも自分の音楽の源流にいる人たちにも刺激を与えたいという野望が昔からあったんですよ。アメリカで勉強しているときから、ただ好きで憧れるだけじゃなく、いつか憧れ返させたいって。だから、まさに狙っていたオファーが来たと思いましたね。
──一緒に音楽を作れてうれしいというより、「自分が刺激を与えるんだ」と。
DAIDAI ずっと曲を聴いてきた偉大なアーティストだからこそ、記念試合で終わるんじゃなく「マジであいつ何?」と思われるくらい、彼らの歴史に大きな華を添えたいと思っていました。
──共作した楽曲が世界的に話題になりましたが、自分の名前が世界レベルになった感覚はありましたか?
DAIDAI いや、それは全然ないですね。一緒にやった人たちはスターなので、当たり前のように「お前、どのスポーツカーに乗ってるの?」とか聞かれましたけど、俺は普通に環七でチャリを立ち漕ぎしてますから(笑)。
──(笑)。10月にはPaleduskとしてONE OK ROCKのヨーロッパツアーに同行していましたが、一緒に回ってみていかがでしたか。
KAITO いろんな角度から、偉大なバンドだということをまざまざと見せつけられましたね。その反面、ONE OK ROCKのメンバーは普通の友達同士というムードもあって、やっぱりバンドって最高だなと思いました。Paleduskとしても、みんなで何かを一緒にやるということをもっと大事にしないといけないんだなと学びました。
TSUBASA 愛のあるツアーでしたね。ツアーバスは別々の予定だったのに、向こうのバスに乗車させていただけたり。本当に愛を持って接してくれているのが伝わってきました。
BOB このメンバーだから20年続けてこられたんだろうなという空気感があって。ライブのMCでTaka(Vo)さんが「海外に出て10年経って、今この景色がある」と言ってたけど、続けていくことの大変さを乗り越えて海外アリーナツアーを実現させているのは本当に素敵だなと思いました。
DAIDAI 半端じゃないですね、あの人たちは。
──ゲストバンドとして、それなりに爪痕を残せた実感があるのか、やっぱりまだまだだなと感じたのか、どちらでしょう?
KAITO 爪痕を残せたんじゃないかなとは思いますけど、正直、そういう感覚でライブをしていなかったですね。Paleduskが今できる最高のライブはなんなのか、この先どういうことができるのか、ということに対して、これまでで一番向き合った時間だったと思う。何かをぶん殴る力を蓄えられた気がします。
DAIDAI ONE OK ROCKってすごくきれいな“円”に見えるんですよ。もはや楽器のうまい下手の領域を超えて、強いバンドは真ん丸なんだなって。Paleduskはまだちょっとぐちゃっとしてる印象だったけど、ONE OK ROCKと一緒にツアーを回ったことでそれがちょっと円に近付けたかなと思います。
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自分の弱い部分もさらけ出した1枚


