第27回読売演劇大賞の贈賞式が、昨日2月28日に東京・帝国ホテル東京で実施された。
読売演劇大賞は、演劇文化の振興のために1994年に創設された賞。今回は、大賞・最優秀男優賞に「Le Pere 父」の演技が高い評価を得た
読売演劇大賞では、各賞の最優秀賞を前年受賞した人物が、翌年の同賞プレゼンターを務める。杉村春子賞プレゼンターの
選考委員特別賞を受賞した岡田は、「消しゴム森」ニューヨーク公演のため贈賞式を欠席。岡田はビデオメッセージで、まず出演者11名にニックネームで呼びかけ「タイ社会の現実と闘いながら芸術を実践している皆さんの、おそらくはそこに由来しているのでもあろうセクシーな存在感が、『プラータナー:憑依のポートレート』という演劇をより特別なものにしました」と感謝を口にした。さらに原作者のウティット・ヘーマムーン、翻訳の福冨渉、セノグラフィー・振付の
最優秀スタッフ賞を獲得した服部は、「チャイメリカ」と「組曲虐殺」での照明が評価された。服部は「私は出演者にスポットを当てる仕事をしているので、自分に光が当たっているのはむずむずします……(笑)」と話し、会場の笑いを誘う。また受賞に繋がった2作品が共に栗山民也の作品であることに触れ、「栗山さんは劇場に入る前から、照明を含めた視覚の効果や作用をかなり緻密に組み立てる演出家。劇場に入ってもそのハードルは高いので、彼の世界観をもう1つ深くできたらという思いでやっておりました。それぞれの作品のスタッフの代表として、こういった賞がいただけたと思っております」と笑顔を見せた。
最優秀演出家賞のプレゼンターを担当する栗山民也は、受賞者席を見やり「友達がたくさんいてうれしいです(笑)」と話したあと、「昨年亡くなった中村哲さんが、ご自身のコラムや本に『誰かのために』という言葉を必ず書かれていたのがすごく印象的で。それが今、一番大事なことなんじゃないのかなと思っています」と発言。最優秀演出家賞に輝いた松本は、横山拓也の戯曲「ヒトハミナ、ヒトナミノ」と、クロアチア出身の劇作家テーナ・シュティヴィチッチの戯曲「スリーウインターズ」の演出が評価されたことに「この2人の劇作家との出会いが、私をここに連れてきてくれました。どちらも人の心の深いところにある痛みに敏感に反応し、そこをえぐって描かれた作品です。この賞を励みにして、人の心に届くような、何か価値観に刺激を与えられるような作品を、地道に作っていければ」と思いを語った。
最優秀女優賞のプレゼンテーターとして登壇した
最優秀作品賞のプレゼンテーターである
野田は、ビデオメッセージで、大賞を受賞した橋爪に「東京芸術劇場の芸術監督として『Le Pere 父』の台本を読んだ時、『これ、橋爪さんに絶対いいな』と思ってお願いしたのですが……もしあの時そう思っていなければ、『Q』が大賞を獲ったのかなって(笑)」と話し、会場を笑いで包んだあと、「いつも素晴らしいキャスト、スタッフさん、アンサンブルに囲まれて作品を作っていますが、『Q』は特に時間をかけたこともあり、非常に素晴らしいハーモニーが生まれたのでは。『Q』に参加してくれた皆さんに感謝します」とコメントした。
ミュージカル「キャッツ」で芸術栄誉賞を受賞した劇団四季からは、吉田智誉樹代表取締役社長が登壇。受賞を「亡くなった浅利慶太に聞かせてあげたかった」と話し、「今回、現役の我々というより、先輩方が受賞されたんだなと思います。試しに『キャッツ』に関わった俳優さんとスタッフさんの数を数えてみたら、それぞれ500人ずつおりまして、こんなにもたくさんの方々が『キャッツ』を支えてきたのだなと気付きました」と感慨を述べた。
大賞と最優秀男優賞を受賞した橋爪は「年甲斐もなく、誇らしいような、ドキドキした気持ちでいっぱいです」と語りつつ、「野田がこの作品を紹介してくれましたが……野田は今、ニューヨークにいます。でも、この賞のために(『Le Pere 父』の演出家)ラディスラス・ショラーはフランスからわざわざやってきています。彼に最優秀作品賞をあげたいのですが、今から変更はできないものでしょうか! 野田は不届きなやつです!(笑)」と冗談交じりに発言し、会場の笑いを誘った。そして「野田のおかげでフロリアン・ゼレールが書いたこの戯曲に出会えました。この作品を通して、いろいろな意味で、向こうの芝居を日本でやっていいんだという手応えを感じました」と述べ、「最後は女房の話なんですけど。電話連絡があった時に、うちの家内が満面の笑みで『よかったね、お父さん』と言ってくれました。それが一番うれしかったです」と締めくくり、会場を温かい拍手で包んだ。
第27回読売演劇大賞
大賞・最優秀男優賞
最優秀作品賞
「『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera」
最優秀女優賞
最優秀演出賞
最優秀スタッフ賞
服部基
杉村春子賞
芸術栄誉賞
「キャッツ」
選考委員特別賞
・「Le Pere 父」
・「人形の家 Part2」
・「スリーウインターズ」
・「A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』」
優秀男優賞
菅田将暉、
優秀女優賞
優秀演出家賞
優秀スタッフ賞
笠原俊幸、
※「Pere」の1つ目のeはアクサングラーブ付きが正式表記。
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