劇団不労社(撮影:肖藝凡)

由来を教えて!劇団名50 その36 [バックナンバー]

劇団不労社

世界のグレーゾーンをフラフラ漂う

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次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。

36番目に登場するのは、関西を拠点に活動する劇団不労社。自給自足を基盤とした“革命的楽園”や人間を使って“不在”を描くなど、フィクション性と独創性に富んだ作風で知られる劇団不労社は、新作「MUMBLE -モグモグ・モゴモゴ-」にて“家族”と“食”に焦点を当てた作品作りに挑む。次代を担う作り手として注目を集める彼らの、気になる劇団名の由来とは?

劇団不労社(ゲキダンフロウシャ)

Q. 劇団名の由来、劇団名に込めた思いを教えてください。

劇団不労社代表の西田悠哉です。

演劇サークルに所属していた大学生の頃、東京の大学へ進学した高校の友人と下北沢で公演をしようという話になり、稽古のために乗った新宿行き夜行バス内の朧気な意識の中、突如「不労社」というフレーズが降りてきました。“劇団”と銘打ったのは資産運用を促すいかがわしい法人と思われないためです。

当初は自分がサークル外で公演する際の名義として独断と閃きで決めた名前だったので、「働きたくない」という若気な願望と語感以外は由来らしき由来もないのですが、のちに劇団員も加入して団体化していく上で、名前から逆算する形で以下の見解を公式の由来とします。

Buddha Brandの代表曲「人間発電所」において、NIPPSが「全身超ILL HIP-HOP フロー者」とラップしていますが、「ふろう」という音には「不労」や「浮浪」だけでなく「FLOW」という字も当てることができ、奇しくもこれらの言葉は音だけでなく意味の上でも“漂流”するようなイメージでつながります。

とかく白黒つけることが求められる世の中において、時にはその極の間にあるグレーゾーンで漂うことも大事だと考えます。

演劇は場所や時間の制約も大きく、経済活動としては非効率的な営みですが、だからこそ白黒つけずに済む「不労」の活動として意義があると開き直り、世界のグレーゾーンをフラフラ漂いながら考える場になれば良いなと考えています。今は(またフラフラと変わるかもしれません)。

Q. 劇団の一番の特徴は?

コント、バイオレンスムービー、オカルト、ヴェイパーウェイヴ、現代思想など、媒体を隔てたさまざまな考えや手法をサンプリングしながら、現代の歪な人間像を滑稽かつグロテスクに描くような劇を特徴としています。

「笑えるのに怖い」「怖いのに笑える」ものが好きなのですが、恐怖 / 笑いのいずれも、起こりうる出来事への期待や予測に対してのズレから生じ、突き詰めれば自分の理解を超えた“世界の外側”の境界に接触する感覚に心が惹かれるのだと思います。

当たり前と思っていたものが当たり前でなくなり、気付けば“世界の外側”に片足を突っ込んでいるような作品作りを目指しています。

Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。

若手アーティストの発掘と育成を目的に、ロームシアター京都と京都芸術センターが協働して行う「U35創造⽀援プログラム“KIPPU”」の2023年度の枠に選出され、ロームシアター京都にて「MUMBLE -モグモグ・モゴモゴ-」という作品を上演します。閉鎖的コミュニテイに内在する暴力性を描いた〈集団暴力シリーズ〉最終章と位置付け、劇団としてのこれまでの取り組みの一つの集大成になるような作品となっていますので、ぜひ一人でも多くの方にご覧いただけたらと思います。

今後の目標として、これまで関西圏での活動がメインだったのですが、これからはいろいろな地域へ“漂流”して行けたらと考えています。

劇団不労社の過去の公演より。(撮影:肖藝凡)

劇団不労社の過去の公演より。(撮影:肖藝凡)

プロフィール

2015年に西田悠哉を中心に旗揚げされ、関西を拠点に活動をスタート。これまでに「関西演劇祭2021」にてベスト演出賞、アクター賞、「若手演出家コンクール2022」にて優秀賞受賞。

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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