宮城聰と石神夏希が「SPAC 秋のシーズン 2026-2027」について語らう

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4月から5月にかけて開催される「SHIZUOKAせかい演劇祭 2026」に向けて、昨日3月9日に東京のアンスティチュ・フランセ東京でプレス懇談会が行われ、第1部では「SHIZUOKAせかい演劇祭 2026」「ストレンジシード静岡 2026」を中心としたトークセッション、第2部はSPAC 2026年度年間プログラムについて語られた。第1部の様子は既報の通り。ここでは第2部の様子をレポートする。第2部には「SPAC 秋のシーズン 2026-2027」アーティスティックディレクターの石神夏希、SPAC芸術総監督の宮城聰が登壇し、SPAC芸術局長の成島洋子が司会進行を務めた。

宮城聰

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成島はまず、「SHIZUOKAせかい演劇祭 2026」で披露されるSPAC「王女メデイア」について、16年ぶりに静岡で上演する思いを宮城に尋ねた。宮城は「僕の先輩たちのお芝居や、海外で観る芝居の多くが、『この世界の中にこんな醜悪な部分が隠されているぞ』『みんな見逃してるけれども、こんな悲惨なことがあるぞ』と人間や社会の醜い部分を暴き出すものが多く、確かに暴かれなければ誰も気づかなかったこともあるので大事だとは思うのですが、これ以上、『人間はこんなにダメだ』ということを教えられても、それで終わってしまうんじゃないか、というような感じがあって。ですので、僕自身がずっと心掛けてきたことは、お客様が舞台を観終わったときに『人間はかなりダメなところはあるけれども、それでもなにがしかの可能性はまだあるんじゃないか』と感じてもらうこと。なんで僕がお芝居を作るかというと、そのためなんじゃないかと思うんです。『王女メデイア』もそういう願いを込めて作った作品です。かなりダメダメな人間が出てくるけれども、もしかしたらちょっと捨てたもんじゃないところもあるのかもなと、最後にそう思ってもらえるようなお芝居にしたくて作りました」と返答した。

宮城聰

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また宮城は、“自分の一番近いところに一番の他者がいる”感覚を持ってきたと言い、「一番の他者、それはつまり自分です。自分がどれほどの他者であるかを隠蔽しながら生きてきたわけだけれども、そのカバーを取り払って、自分という途方もない他者と出会わなければ、善的に生きられないんじゃないかという気がしているんですね。ではそんな一番側にいる一番の他者と出会うにはどうしたら良いか。僕は、“あからさまな他者”に出会うことがきかっけになると考えてきました。最近、よく“排外”という言葉が言われますが、他者を排除することが排外なら、では“内”は何かというと究極的には自分であり、自分のすぐ側にいる人、あるいは考えが同じな人たちであろうと。でもその人たちだってよく見れば、途方もない他者であるはずなんです。だとすれば、途方もない他者であるはずの人たちを内側だと思い込んで、それ以外の人を排除しようとするのはそもそもまやかしだから、まやかしでは本当に幸せになれるはずはない。なので僕は、まずはあからさまな他者、つまり非日常と出会うことからスタートするといいんじゃないかと思っています。その点で、『メデイア』はあからさまな他者、非日常だと思います」と話した。

続けて10月から始まる「SPAC 秋のシーズン 2026-2027」について、アーティスティックディレクターの石神が説明。「SPAC 秋のシーズン 2025-2026」に続き、「きょうを生きるあなたとわたしのための演劇」というメッセージを掲げた「SPAC 秋のシーズン 2026-2027」の上演演目には、多田淳之介「伊豆の踊り子」、瀬戸山美咲の新作「ニホンジン」、深沢襟の新作「星の王子さま」がラインナップされた。石神は「『伊豆の踊り子』は2023・2024年に初演された多田淳之介さん演出の作品で、今回が再演となります。前回は県内ツアーも行い、県内の若い方たち、これまであまりSPACのお芝居を観ていらっしゃらなかったような方にも好評をいただいた作品です。瀬戸山美咲さんの新作『ニホンジン』はブラジル日系三世の作家オスカール・ナカザトさんの小説をもとにした作品です。オスカールさんご自身の三世代にわたる家族の歴史をもとにした大河小説で、これを演劇化するにあたり、瀬戸山さんに上演台本と演出をお願いしました。『星の王子さま』の演出を手がけられる深沢襟さんは、SPACでは長年舞台美術を主にやられてきました。が、もともとは演出もされていて、最近SPACでも手がけているインクルーシブシアターの演出もされています。今回、いろいろな方が一緒に観られる作品に取り組みたいと考えて、深沢さんに構成・演出・美術をお願いしました」と力強く語った。

深沢については、宮城も言及。「深沢さんは大学4年の時に(宮城が主宰する)ク・ナウカに来て、『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』や最近では『ギルガメシュ叙事詩』などの舞台美術を作ってくれていますが、最近僕、彼女が原点に戻ってきているような感じがしているんですね。深沢さんは大学時代に、寺山修司さんのところの美術をされていた小竹信節さんに教わっているんですが、小竹さんから学んだことが最近、浮上してきているように僕には思えるんです。たとえば寺山さんの初期の戯曲などでは道に突然扉を置いて、その扉を開けると別の世界に入れるといった、日常の中にいきなり裂け目を作るようなことがあるんだけれども、そういったアプローチが『星の王子さま』につながっていくような気がするので楽しみです」と述べた。

左から成島洋子、石神夏希。

左から成島洋子、石神夏希。 [高画質で見る]

最後の質疑応答の時間では記者から、「SPACも30周年を迎え、時代が変遷していく中、『SHIZUOKAせかい演劇祭』やSPACは今後どのような立ち位置で活動していこうと思っているか」という質問が寄せられた。宮城は「今、多くの先進国で“真の大衆社会”が到来しています。かつて先進国では、国の舵取りはいわゆるエリートが任されていたけれども、今はそうではなくなって、芸術に関しても既得権層の娯楽だろうと捉える人が出てくるようになった。結果として、分断がより深まっていくわけですね。ではどうやったらその溝が埋まるのかを考えると、僕はなにがしかの共通点を見つけることが大事なんじゃないかと思うんです。じゃあその共通点って何かと言うと、それは“美しい”ということなんじゃないかなと。もちろん美にも危険なところはありますが、美しさってある程度共有されると思うんですね。そう考えるとフェスティバルは、その美を共有する時間になるんじゃないかなと。幸福の再分配と言い換えることもできると思いますが、たくさんの人で美を共有する、その時間がフェスティバルなのかなと思っています」と自身の考えを述べる。

石神は「かつて舞台にいる人と客席にいる人の間にあった、ある種の共通性や同質性のようなものが今は信じられなくなっていて、思いもよらないところでびっくりするような裂け目や他者が現れる感覚があります。そういう社会に対して、演劇祭や劇場は『こういう在り方があり得るんじゃないか、こうでありたいと思っていたんじゃないか』と、ある種の“正気を保つ”ための装置かもしれないと思っていて。肉体を伴った想像力をどうやったら共同体の中で持つことができるのか……それが演劇祭や劇場が街中にある意味かなと私は思います」と自身の思いを述べた。

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SPAC秋のシーズン2026-2027 #1「伊豆の踊り子」

開催日程・会場

2026年10〜11月
静岡県 静岡芸術劇場

スタッフ

作:川端康成
台本・演出:多田淳之介
映像監修:本広克行

SPAC秋のシーズン2026-2027 #2「ニホンジン」

開催日程・会場

2026年11〜12月
静岡県 静岡芸術劇場

2027年1〜2月
静岡県 沼津・浜松

スタッフ

上演台本・演出:瀬戸山美咲(オスカール・ナカザトの小説に基づく)
翻訳:武田千香

SPAC秋のシーズン2026-2027 #3「星の王子さま」

開催日程・会場

2027年1〜3月
静岡県 静岡芸術劇場

スタッフ

原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
構成・演出・美術:深沢襟

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