次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。
47番目に登場するのは、
かわいいコンビニ店員飯田さん
Q. 団体名の由来、団体名に込めた思いを教えてください。
主宰・池内風が20代前半の時に働いていた某携帯ショップの近くにあるコンビニの店員飯田さんから由来しています。
飯田さんは、3日に1日しか出勤しておらず、しかもそのコンビニにある3カウンター分、全て稼働するくらい混み合う昼間の時間帯にしか出勤しない方でした。運よく飯田さんのカウンターに当たりお釣りをもらう際、飯田さんはそっと手を添えてこちらの目を見ながらお釣りを返してくれる方でした。その1秒もない時間で「今日は良い日だった」と明るい気分で1日を生活できたことから、長い人生の中でほんの2時間程度頂き「今日は良い日だった」と思えるような時間を過ごしてもらえるような団体になると決意し、皆さんにとっての「かわいいコンビニ店員飯田さん」に僕らがなろうと命名しました。
Q. 団体の一番の特徴は?
もともとは作品によって作風が大きく変わるカメレオン劇団と言われておりましたが、ここ最近では作品の方向性が定まってきています。しかし、以前も今も創作の軸になる考え方は変わらず、ブラッシュアップし続けていると思っております。
その軸となる特徴は、日常的な人間の行動原理を紐解き、非日常的なシチュエーションの設定においても強い同化性と共感性を引き起こす緻密な会話構造です。また近年の作品では、舞台上で起こる空気を客席とも強く行き来させ、一体となって劇場の空間を埋める演出手法を用います。
ナチュラルでリアルというよりは、演劇的な大きいアクションを起こしながらもリアルであるというお声をいただくことが多く、また団体紹介で書いた「良い日だった」と明るい気分になってもらおうと言った割には暗い作品が多いため「現実的な作品ばかりでつらい」というお声も多数です。
Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。
作品を通して人間について知るということが活動の目的で、それを観ていただいた方に共感いただくことがとにかくうれしいです。今後の目標については、使用する劇場を大きくしたり、名前を知ってもらうということよりも、自分たちが面白いと思える作品をその作品に合うサイズの劇場で行えるための連携を取っていける団体になることです。
現状の演劇の形のまま、イマーシブシアターとは異なる形の体験型演劇を目指し、演劇の持つ魅力を少しでも多くの方に知ってもらいたいという気持ちです。
映画ではなく“演劇”である理由が存在する創作をしていますので、劇場に足を運んでいただけましたら幸いです。
かわいいコンビニ店員飯田さん
劇作家・演出家の池内風を中心に、2012年に旗揚げ。“1秒でも多く心が動く瞬間を”をテーマに活動を行っている。
高畑裕太 @yutatakahata
あと気になってる方とても多いと思いますのでこれも是非ご一読下さい。 https://t.co/8SaaaJqA4U