“いつだって心に音楽を”Sakurashimejiが10周年イヤーの最後に届けた思い「心音」ツアーファイナル

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田中雅功と高田彪我によるギターデュオ・Sakurashimejiが、昨日12月14日に東京・渋谷ストリームホールにてライブハウスツアー「Sakurashimeji Live House Tour 2024 心音」の追加公演を開催した。

Sakurashimeji(撮影:鈴木友莉)

Sakurashimeji(撮影:鈴木友莉)

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10周年イヤー集大成のツアーファイナル

「Sakurashimeji Live House Tour 2024 心音」は、Sakurashimejiが今年6月に迎えた結成10周年を記念して実施されたツアー。11月24日の東京・代官山UNIT公演を皮切りに全国4都市のライブハウスを巡った今ツアーのチケットはすべてソールドアウトし、追加公演として設けられたこの日の渋谷ストリームホール公演も満員御礼という盛況ぶり。また、Sakurashimejiの2人が主演を務めるドラマ25「カプカプ」もテレ東ほかで放送中と、高い注目度の中で迎えたツアーファイナルとなった。

Sakurashimeji(撮影:鈴木友莉)

Sakurashimeji(撮影:鈴木友莉)[拡大]

精力的な新曲リリースにグループ名表記の変更、そして初のテレビドラマ主演。10周年という大きな節目を迎えながらも立ち止まって思い出に浸ることを選ばず、常に未来へ目線を向けてギターデュオとしての音楽性をさらに追い求め、表現の可能性を広げる活動を重ねてきたSakurashimeji。今年の活動の集大成とも言える「Sakurashimeji Live House Tour 2024 心音」で展開されたのは、そんな彼らの音楽に対する真摯でチャレンジングな姿勢が如実に現れたステージだった。開演時刻を迎え、シンプルなバンドセットが組まれたステージに姿を見せた雅功と彪我は「辛夷のつぼみ」をオープニングナンバーとして届ける。スポットライトを浴びた雅功が思い切りエレキギターをかき鳴らしたのを合図に、ステージから放たれたパワフルなバンドアンサンブル。「前へ前へ前へ前へ」というフレーズに力を込める2の声の重なりを推進力に、フロアは瞬時に熱を帯びていく。

田中雅功(撮影:鈴木友莉)

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曲を終え「始めるぞ」と雅功が静かに宣言すると、今度は彪我が歪んだエレキギターの音を轟かせて注目を一身に集めた。「わがままでいたい」のスタイリッシュかつダンサブルなバンドサウンドはオーディエンスの体を自然と揺らし、軽やかにカッティングを刻む雅功の「踊れ、東京!」という叫びも会場の一体感を引き上げる。ベース、ドラム、キーボードを加えた5人のバンド編成で各地を回ってきたステージ上のメンバーの演奏は盤石で、続く「エンディング」でも心地良いグルーヴがホール全体を包み込む。明日へのメッセージを晴れやかな歌声に乗せた彪我は「もっといけるんじゃないですか? 東京!」と聴衆を煽り、きのこりあん(Sakurashimejiファンの呼称)は思い思いに手を挙げてこの呼びかけに応えた。

「寂しい気持ちもあるけど、それを覆すくらいの楽しさで」

「Sakurashimejiです! ツアーファイナル、遊びに来てくれてどうもありがとう。いっぱい歌うんで、最後まで好きなように楽しんでいってください」。雅功の短い挨拶を挟んだのち、ここからは雅功がアコギに持ち替える形で楽曲を重ねていったSakurashimeji。滑らかに歌いつなぐ2人の巧みなボーカルワークが光る「simple」を経て、去り行く“君”への未練を歌う「届けそこねたラブソング」では性急なバスドラムと彪我が爪弾く小刻みなビートが、主人公の不安定な心境を鮮やかに浮かび上がらせる。雄弁な演奏の上で雅功もまた感情を思い切り乗せたボーカルを響かせ、聴き手を楽曲の世界観へと力強く引き入れてみせた。

高田彪我(撮影:鈴木友莉)

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疾走感あふれるアレンジで「はじまるきせつ」を披露すると、雅功は「人気者すぎて追加公演でございます。うれしい、ホントに!」と喜びの心境をあらわに。そしてここでバンドメンバーを紹介し「すごく仲のいいバンドなんです。みんな同年代、Z世代でやってるバンドなので、フレッシュさを前面に出してやっていきたいなと思います」と聴衆に語りかけた。「ファイナルだから寂しい気持ちもあるけど、それを覆すくらいの楽しさで心がごちゃごちゃになっていて、どうしようと思っています(笑)。だけど、次の曲はそんな気持ちも全部ひっくるめて歌えたら」。そんな雅功の言葉と共に「生きるよ」でライブを進めると、今度は歌うように跳ねる3拍子のリズムに乗せてエモーショナルな歌と演奏を聞かせた雅功と彪我。彪我によるメロディアスかつ技巧的なギターリフは雅功のアコギのオーガニックな鳴りと絡み合い、主人公の静かなる決意の強さを浮き彫りにする。スポットライトに浮かび上がった雅功の独白のような弾き語りからドラマティックなサウンドスケープが広がっていく「ただ君が」では、ありったけの思いを歌に乗せて届ける雅功と彪我の豊かな歌唱表現を、オーディエンスが静かに熱い眼差しで受け止めた。

田中雅功(撮影:鈴木友莉)

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「人生で初めて行ったライブって覚えてる?」という雅功の素朴な疑問から、彪我の“初ライブ”が「浜崎あゆみさんのライブ」、雅功の“初ライブ”が「ヘキサゴンのライブ」であることが明かされたMCを経て、中盤には新曲が披露される場面も。今回のツアーでお披露目された「who!」はパワフルなバンドサウンドが印象的なナンバー。リードボーカルを取る雅功はシャウト交じりに曲を歌い上げ、その遊び心あふれる表現で聴衆の耳を楽しませる。リリース当時はアコギ2本の弾き語りスタイルだった「おたまじゃくし」や「あやまリズム」も、この日はエレキ2本のギターサウンドがリードするにぎやかなバンドアレンジで届けられ、2人はときにお互いのほうを向き合い、ときにバンドメンバーとアイコンタクトを交わしながら熱いセッションを楽しんだ。晴れやかに心踊るような歌声を響かせる彼らのパフォーマンスに呼応するように、ファンもまたクラップをしたり手を挙げたりと、それぞれ自由に音に乗る。そんな中、「あやまリズム」の最終盤にはフロアから「ごめん!」という息の合ったコールが飛び、Sakurashimejiとファンとの強固なつながりが温かなムードを生み出した。

いつだって心に音楽を

ライブがクライマックスへと差し掛かったところで、雅功は今回のツアーに「心音」というタイトルを掲げた理由を明かした。「10周年一発目の曲を作ろうとなったとき、『どんな気持ちで歌えばいいんだろう?』と考えたんです。10年を振り返るといつだって音楽が心にあって、いいことも悪いことも、全部音楽に教えてもらった。“いつだって心に音楽を”という精神で生きていたら、どうにかなるんじゃないかなとも思ってる。そんな気持ちを歌にしたいなと思ったから、『心に音楽を』を曲のテーマにしたんです。だから、仮タイトルを『心音』にして」。そう語った雅功は「今年最後のツアーで、“心に音楽を”という精神をみんなに伝播したいなと思って、この『心音』というタイトルにしました」と続けた。

高田彪我(撮影:鈴木友莉)

高田彪我(撮影:鈴木友莉)[拡大]

「僕らはずっと歌い続けますし、イヤフォンを着けたら僕らがいつでも歌っているというのを忘れずにいてほしいです。ここからがラストスパートなので。皆さんの心を燃やして楽しんでもらえたらと思います」。雅功のまっすぐな呼びかけののち、Sakurashimejiは「心音」が仮タイトルだった10周年記念の楽曲「明日を」で演奏を再開させた。“心に音楽を”という思い、そして“未来を見据えた2人の今”を歌うこの曲には、力強い疾走感の中にもひたむきに音に向き合うがむしゃらさが滲み、雅功と彪我は自らをも鼓舞するようなパワフルな掛け合いで演奏に没頭する。雅功から「お前たちの声を聞かせてくれ!」と呼びかけられたオーディエンスもまた力の限りのシンガロングで2人に思いを返した。ホールが熱い高揚感に包まれたクライマックス、彪我の作詞作曲によるアッパーチューン「たけのこミサイル」で2人が勢いを加速させると、「大好きだったあの子を嫌いになって」ではドライブするバンドアンサンブルにオーディエンスがハンズアップで呼応する。疾走感あふれるメッセージソング「なるため」で雅功が「一緒に歌えますか!」と呼びかけると、ステージ上の2人へ向けて会場中から大きな歌声が送られ、この声に雅功と彪我は満足げな表情を浮かべた。

Sakurashimeji(撮影:鈴木友莉)

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熱狂渦巻くムードの中、本編ラストの曲を前に思いを語ったのは彪我。「今という時間を力強く生きていくことが、明日への道標になるんじゃないかと思って。だからこそ、僕らは“今の等身大”を歌ったりするんじゃないかなって」。Sakurashimejiが歌い届ける“等身大のメッセージ”が持つ意味を自分なりに解釈し、その思いをオーディエンスに伝えた彼は「次の曲も、今を力強く生きようという思いからできた曲です。皆さんの明日への道標になるように歌わせていただきます」と、ドラマ「カプカプ」の主題歌として書き下ろされた最新曲「いつかサヨナラ」をコールした。オーソドックスなエイトビートの上、彪我が鳴らすのはロックンロール然としたギターリフ。無骨なロックサウンドと彼ららしい瑞々しさを湛えたボーカルが混じり合う、最新形のSakurashimejiの音を思い切り響かせて、2人は舞台袖へと姿を消した。

「みんなではなくて、あなたに歌います」

Sakurashimeji(撮影:鈴木友莉)

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2人が姿を消すなり湧き起こったアンコールの拍手に応じ、ツアーTシャツに着替えてステージに戻った雅功と彪我。本編の終盤から「終わりたくないなあ~」とつぶやいていた雅功は「音楽やっててよかったなと心から思う年だったなって」と2024年を振り返り「親父がね、俺の顔見るたびに『お前楽しそうやな』って言うんですよ。『代わってほしいわ』と言われるんですけど、絶対に代わりたくないなと今日思いました!」と笑った。そんな雅功のかき鳴らすギターを合図に、バンドが次に届けたのは「My Sunshine」。スケール感に満ちたサウンドを背に、思い切り声を張り上げて明日への思いを歌う雅功と彪我へ向け、オーディエンスはリズミカルにクラップを鳴らして力強く楽曲を彩った。甘酸っぱい世界観が広がる活動初期からの人気曲「ひだりむね」では、雅功が「ジャンプ!」と観衆にリクエスト。心から音を楽しむ2人のパフォーマンスに笑顔の輪が広がる中で曲を終えると、雅功と彪我はここで来年予定されている東名阪ライブツアー「Sakurashimeji Live Tour 2025 ~track [mono]」を改めて告知。そして、新たなニュースとしてSakurashimeji初の対バンツアー「Sakurashimeji Live Tour 2025 ~track [poly]」の開催決定を知らせた。

Sakurashimejiの新たな挑戦に沸き立つ会場の熱気は2人が姿を消しても収まらず、フロアからは再び熱い拍手が。ダブルアンコールに応じた雅功と彪我は共にアコースティックギターを抱え、2人だけの弾き語りで「朝が来る前に」をラストナンバーとして披露した。「みんなではなくて、あなたに歌います」と宣言した雅功の言葉通り、1音1音を優しく噛み締めるように歌い届けた2人。雅功はラストのフレーズをオフマイクで歌い上げ、聴き手の心にSakurashimejiの音楽を、より印象的に刻み込む。エモーショナルな空気感の中で迎えた「心音」ツアーのラストシーン。充実感に満ちた笑顔を浮かべた2人は「また遊びに来てね」と手を振りながらステージをあとにした。

セットリスト

「Sakurashimeji Live House Tour 2024 心音」2024年12月14日 渋谷ストリームホール

01. 辛夷のつぼみ
02. わがままでいたい
03. エンディング
04. simple
05. 届けそこねたラブソング
06. はじまるきせつ
07. 生きるよ
08. ただ君が
09. かぜいろのめろでぃー
10. who!
11. あやまリズム
12. おたまじゃくし
13. 明日を
14. たけのこミサイル
15. 大好きだったあの子を嫌いになって
16. なるため
17. いつかサヨナラ
<アンコール>
18. My Sunshine
19. ひだりむね
20. 朝が来る前に
※高田彪我の高は、はしごだかが正式表記。

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