「世界遺産劇場」は日本各地の世界遺産および世界遺産登録候補地を舞台に音楽ライブ、演劇などさまざまなジャンルのステージが行われるアートプロジェクト。27回目の開催となる今回は「北海道、北東北の縄文遺跡」を構成する遺跡の1つとして世界遺産登録を目指す三内丸山遺跡にて秦と
開演時間を迎えると、ゆったりとした足取りで秦が舞台上に姿を見せる。彼はアコースティックギターを構えると、「色彩」の弾き語りでライブをスタートさせた。ステージ奥には森林を、客席の奥には復元された縄文時代の集落を臨むロケーションに、曲を歌い終え周囲を見渡した秦は「すごくいい所ですね」と一言。2曲目の「トラノコ」では早速椅子から立ち上がったオーディエンスが手拍子で盛り上がり、彼は「ありがとう!」と笑顔を見せた。
今回の公演の開催にあたり、レキシとともに青森県の縄文遺跡群の魅力や価値に関する情報発信を行う親善大使「あおもり縄文大使」に任命された秦。MCでは大使としての務めを全うする場面も見られた。彼はこの日のライブがあおもり縄文大使としての1番大きな活動であることを観客に説明し「青森県外から来た人?」と問いかける。大多数の観客の手が挙がったのを見た秦は「すごいね、この経済効果たるや!」と満足げに語った。そして、次に彼はクラシエ「いち髪」のCMソングとしてオンエアされている「恋はやさし野辺の花よ」のカバーを初披露。秦は感情豊かな歌声を静寂の中に響かせ、オーディエンスはその歌声に静かに耳を傾けていた。
5曲目を前に秦はストリングスカルテットを舞台上に招き入れる。「今回のシチュエーションでパッとイメージできたのがこの編成」と語った秦はカルテットとともに、この日のためにアレンジされた「Dear Mr.Tomorrow」を披露した。陽もすっかりと落ちた会場にストリングスの幽玄なアンサンブルが響き、秦の歌声は一層熱を帯びていく。彼はこの編成で「季節が笑う」「青い蝶」と初期のナンバーを、続く「水彩の月」では皆川真人(Key)もメンバーに加えて楽曲をプレイ。そして「みんなで盛り上がりましょう!」という呼びかけとともに「キミ、メグル、ボク」を披露し、第1部のステージを終えた。
続く第2部は1部とは打って変わり、皆川、あらきゆうこ(Dr)、鈴木正人(B)を迎えたバンドセットで楽曲が披露されていった。「ダイアローグ・モノローグ」でステージを再開させた秦は「Halation」「トレモロ降る夜」と、さわやかなナンバーをテンポよく届けていく。MCでは客席前の両端に置かれたねぶたがライトアップされたのを見て「ねぶたも光っておりますが、基本的にはこの真ん中の“ねぶた”(自身)を観てもらってですね……(笑)」とファンを笑わせるシーンも。「鱗」では皆川の奏でるピアノの音色にベース、ドラム、ギターとバンドメンバーが徐々に音を重ね、鮮やかな音像が広がっていく。彼らの息の合った演奏に、観客は惜しみない喝采を送っていた。
続く「花咲きポプラ」からはストリングスカルテットが舞台上に戻って総勢8人による華やかなパフォーマンスが披露され、ステージもいよいよ佳境へ。「グッバイ・アイザック」ではオーディエンスがサビで両手を挙げて秦の歌声に呼応し、会場が一体感に包まれる。そして「次の曲は、それぞれがそれぞれの価値観の中で何を選んでいくのか、問いかけるような楽曲です」という秦の曲紹介からプレイされたのは新曲の「Q & A」。ギターをかき鳴らしながら情熱的にこの曲を歌い上げる秦の姿に、観客も熱い眼差しを向けていた。
「Girl」を歌い終えた秦は、この場所でライブを行うことへの思いを語る。彼は「縄文時代ってはるか昔のことだけど、確かに人の営みがあって、暮らしがあったんだなあって。いつか僕らも“はるか昔”の一部になってしまうけど、今日の出来事が三内丸山遺跡の長い歴史の1ページに刻まれるってことは素敵なことだと思っています」と感慨深げに言葉を紡ぎ「今日は本当にありがとうございました。またどこかで会いましょう」と感謝した。この言葉を受けて本編最後に披露された楽曲は「ひまわりの約束」。秦は言葉の1つひとつに思いを込めるようにこの曲を歌い上げ、ステージをあとにした。
アンコールに応えてステージに再び姿を見せた秦は、「さあ、あの方をお呼びしましょう!」とゲストのレキシを呼び込む。するとレキシは、ねぶたのお囃子隊を引き連れ客席を練り歩きながら登場。軽快なお囃子に合わせ「ブルーフォレスト、あ・お・も・り♪」と口ずさむなど上機嫌な様子の彼は舞台に上がるなり「どうもお母さん初めまして、ケビン・コスナーです」とお決まりの挨拶で客席を笑わせた。MCもほどほどに、レキシが「じゃあ、みんなで一緒に年貢を納めましょうか!」と呼びかけると、秦が「旗本ひろし」として参加したレキシ「年貢 for you」がスタート。曲中に展開される「好きな歌を歌っていいコーナー」では秦が尾崎豊「15の夜」を「年貢の夜―♪」とアレンジして披露、一方のレキシは青森県出身の吉幾三の「Dream」(新日本ハウスCMソング)を歌うなど、2人はそれぞれにオーディエンスを楽しませた。秦とレキシは背中を合わせた決めポーズで楽曲を締め、レキシは名残惜しそうに手を振りながらステージをあとにする。バンドメンバーも送り出して舞台上に1人残った秦は「この場所でライブができて、本当にうれしいです。この気持ちを制作中のアルバムにぶつけます」と感謝。最後に「僕らをつなぐもの」を観客に届けた。ステージ奥の森林が徐々にライトアップされ、暗闇から荘厳な景色が広がって行くドラマティックな演出の中で弾き語りを披露した秦。大きな喝采に包まれた彼は「ありがとうございました、また会いましょう」と笑顔を見せ、ライブに幕を下ろした。
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秦基博「世界遺産劇場 -縄文あおもり 三内丸山遺跡-」
2015年9月5日 特別史跡三内丸山遺跡 野外特設ステージ セットリスト
01. 色彩
02. トラノコ
03. 恋はやさし野辺の花よ
04. アイ
05. Dear Mr.Tomorrow
06. 季節が笑う
07. 青い蝶
08. 水彩の月
09. キミ、メグル、ボク
10. ダイアローグ・モノローグ
11. Halation
12. トレモロ降る夜
13. 月に向かって打て
14. 鱗
15. 花咲きポプラ
16. グッバイ・アイザック
17. Q & A
18. Girl
19. ひまわりの約束
20. 年貢 for you
21. 僕らをつなぐもの
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