音楽ナタリー編集部が振り返る、2025年のライブ

音楽ナタリー編集部が振り返る、2025年のライブ

石崎ひゅーい、Mrs. GREEN APPLE、Perfume、森高千里、ピーナッツくん、MONO NO AWARE、TEAM SHACHI、サニーデイ・サービス

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Perfumeも僕たちも、これからも大丈夫

文 / 橋本尚平

印象に残っているライブ3本

ライブレポート

2月26日という、Perfumeにとって“特別な意味を持ってしまった”日に開催が発表された時点で、この振り返り企画で書くライブはこれ以外にないと確信していました。けれど、まさかあんな気持ちで当日を迎えるとは。それはきっと、あのドームに集まったほとんどの人が同じだったはずです。公演前日に発表されたコールドスリープ。その瞬間まで、これから先も当たり前に続いていく未来を疑っていませんでした。

これまで休みなく走り続けてきた3人なので、ここでひと段落することは大賛成。もう気が済むまで休んでほしい。とはいえ自分は、ライティング未経験の“いちPerfumeファン”としてこの編集部に入って以来、ずっとPerfumeを追うことを仕事にもしていたので、ライフワークが急に終わりを告げたような感覚、少なからずの喪失感があったことは否めません。

だけど東京ドーム公演は、そんな複雑な気持ちが吹き飛ぶほど、ただただ圧倒的でした。これまで何度も更新してきた最高のステージをスルッと上回っていました。東京ドームという巨大空間をここまで自在に使いこなしたアーティストを自分はほかに見たことがありません。オープニングからエンディングまで、一瞬たりとも目が離せない濃密な展開。「これがPerfumeの完成形」と断言できるステージを目の当たりにして心が震えました。

一方で、これまでの歴史や過去の演出が随所に引用された、かなりハイコンテクストな内容でもありました。だから今日初めてライブを観た人にも伝わるように、長年追い続けてきたからこそわかる文脈、ちりばめられた意図を説明し、この場で起こっているすべてを記録しなければいけない。それが自分に課せられた使命。そう思って、自分の18年をすべてぶつけるつもりでレポートを執筆しました。

今まで、どんなに人気者になってもどこか不安そうに「見捨てんでね」「また会える日を願ってる」と観客に呼びかけていた3人。それが今は、自信に満ちた表情で「必ず帰ってくる」と言い切って休むことができる。これは僕らファンに対する信頼の証だと思います。そう思えば、悲しんでいる場合ではありません。キキモが最後に3人へ贈った言葉を借りるなら、僕たちファンも「これからも大丈夫」。とりあえず、3人が帰ってきたら聞きたいことが山ほどあります。そのときのインタビューの準備は、もう今から始めておくつもりです。

“モリタカ”は今も変わらず全盛期

文 / 川島由貴江

印象に残っているライブ3本

チケットの神様に見放され続け、約2年ぶりに観ることができた森高千里さんのステージが、2025年のベストライブでした。やっと取れたチケットは愛知・名古屋公演。超が付くほど出不精な私にとって遠征は腰が重かったのですが、「こんな機会はめったにない」と奮起し、新幹線に揺られて名古屋へ向かいました。ものすごい熱量の歓声に包まれながら幕を開けた森高さんのライブ。個人的に一番好きな楽曲がまさかの1曲目で、そのイントロが耳に飛び込んできた瞬間「来てよかった」と半泣きで天を仰ぎました。森高さんのライブの魅力を挙げ始めたらきりがありませんが……尖りまくった自作曲と、はっぴいえんど、カーネーション、Santanaのカバーを、違和感なく1本のライブに落とし込んで成立させてしまう手腕というか、その特異性は森高さんならではだと思います。結婚、子育てと、彼女の歌手キャリアには15年ほどのブランクがあるわけですが、2025年の森高さんはそれを一切感じさせないくらい仕上がりまくってました。当方27歳。絶大な人気を博し、ステージで一心不乱に踊りまくっていた時代の森高さんをリアルタイムで追えた世代ではありませんが、それでも“モリタカ”は今も全盛期なのだと強く感じました。

ライブレポート

また、2023年6月のグループ始動以来、初めてメンバーの卒業を迎えた僕が見たかった青空のライブも大きなハイライトでした。グループの性質ゆえに、いろんな重圧を背負いながら歩んできた彼女たちですが、2025年の僕青はそれらを振り払うかのような気概を見せてくれました。世間が「見つけてしまった……!」状態になる未来もそう遠くないはず。そして、かれこれ6年ぶりに生で観たサザンオールスターズのライブも素晴らしかったのですが、思い入れが強すぎてうまく言語化できないので割愛……。

そのほか、再始動した新生Linkin Parkによるひさびさの来日公演や、12年ぶりの復活を果たしたthe cabsのツアー、多くのファンに惜しまれつつ乃木坂46としての活動に幕を下ろした久保史緒里さんの卒業コンサート、RADWIMPSBUMP OF CHICKENの対バンなど、さまざまなシーンの歴史的瞬間に立ち会えたのは幸運でした。

「攻め続けろ」

文 / 田中和宏

印象に残っているライブ3本

ピーナッツくんがリアルタイムで届けるバーチャルライブ「PQ」に衝撃を受けた。アニメキャラ、Vtuber、ラッパーである5歳の豆・ピーナッツくんが、子供部屋を飛び出して幻想的なバーチャル空間を旅する。ゲストの漢 a.k.a. GAMI、轟はじめ、Daoko幾田りらPUNPEEたちも3DCGキャラクターとして登場した。

ピーナッツくんによるDaokoへの“うざ絡み”シーンや、死後の世界でぽんぽこが「生きても死んでも変わらんよ」と語る水中シーンなど、映画やミュージカル、即興劇のような雰囲気がありつつ、死生観をはらむストーリーが、映像美やユーモアと見事に共存していた。幾田りらとの「TIME TO LUV」では、生死や時間を超越した5次元的空間が広がり、惹き込まれた。Vtuberシーンの転換期を「PQ」で示したピーナッツくんは、これからも攻め続けるだろう。

ライブレポート

2025年は90本以上のライブを観た。まず1月にあったのは、第3期BiSの解散ライブ。始動から解散までの約5年半、取材し続けてきたグループの解散は残念だったが、仕方のないことだったとも受け止めている。この1年で所属事務所のWACK自体が大きな転換期に入り、2026年は既存グループの解散ラッシュになりそうだ。また初期BiSの発起人でもあるプープーランドのプー・ルイ社長は先日PIGGSを辞め、新グループ始動に向けて動いている。行動あるのみだ。

ライブレポート

そして12月、まさか間近でHi-STANDARDを観られる日が来るとは思わなかった。ライブ取材に入れたのは、PIZZA OF DEATHのスタッフのおかげだ。彼は大きな愛と情熱をアーティストに注ぐ一方で、“メディアの大切さ”についても理解を示してくれている。憧れの存在を取材するのは正直プレッシャーのかかることでもあるが、ライブを観ながら、熱量と愛情をもって仕事ができる喜びを噛み締める瞬間もあった。

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