音楽ナタリー編集部が振り返る、2025年のライブ

音楽ナタリー編集部が振り返る、2025年のライブ

石崎ひゅーい、Mrs. GREEN APPLE、Perfume、森高千里、ピーナッツくん、MONO NO AWARE、TEAM SHACHI、サニーデイ・サービス

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残せてよかったベスト3

文 / 鈴木身和

印象に残っているライブ3本

あまり大きな声では言えませんが、私はライブレポートが苦手です。
書くのはもちろん、読むのもさほど好きではありません。
理由はライブが好きだからです。
ライブのあの高揚感は体験しないと1mmも伝わらないと思うからです。
それに音楽を文章で表現するって、そもそも神業じゃないですか。
「ソリッドかつウェットなテクスチャーが、楽曲のダイナミクスレンジをマキシマイズする」とか書いてみたいですが、バイエル下巻でピアノを挫折した私にはとても無理です。
だからついMC部分を多めに書いて怒られたりします。
申し訳ない気持ちです。

でも、そんなアンチレポート派の私でも「残せてよかった」と思うライブレポートが少しだけあったので、ここで紹介します。

ライブレポート

1つ目はMONO NO AWAREの「八八音楽祭」。
私は2日目の後夜祭のレポートを書きました。
台風被害の影響でギリギリまで開催が危ぶまれた八丈島ライブでしたが、事前の復興支援募金の呼びかけやチャリティTシャツの販売など、メンバーの懸命な働きかけや島民の皆さんの協力があって無事に行うことができた、実行そのものにとても大きな意味がある公演でした。そしてこの公演を記録に残すことがとても大事だと思えました。
この日、玉置周啓さんがステージで放った真摯な言葉を残すことができた。
だからよかった。

ライブレポート

2つ目は蓮沼執太&ユザーンの初香港公演です。
当初は観光目的で足を運びましたが、現場で急遽レポートすることに。
当然レポート用のカメラを持っていないうえ、スマートフォンでの撮影もうまくいかず、困り果てていたところ、観覧席に一眼レフカメラで撮影する奇跡的なおじ様を見つけました。
蓮沼さんの通訳でなんとか写真を譲ってもらうことに成功し、後日無事にレポートを掲載することができたというわけです。
ほぼ初めての海外旅行先で巻き起こった冒険譚的な意味合いも含めて、思い入れの強いレポートになりました。

公演レポート

3つ目は舞台「TRAIN TRAIN TRAIN」のゲネプロ。
音楽ナタリーとしてはレアケースですが、お芝居のゲネプロレポートです。
この公演には坂本美雨さんが出演、そして蓮沼執太さんが音楽を担当し、ステージ上でも楽隊として生演奏をするということで取材しました。
舞台写真は自分で撮影しなければならず、私はスポットライトを浴びる俳優の方々の奥に配された楽隊にレンズの焦点を当て、筋肉痛を覚悟しながらシャッターを切り続けました。
その成果もあって、これほど楽隊を写真に収めたレポートは音楽ナタリーだけだったのではないでしょうか。
当然ながらレポート記事において写真の役割はとても重要です。
音楽ナタリーとしての特色を写真で発揮できたという観点から残せてよかった1本です。

真冬の名古屋城に響いた切なる思い

文 / 清本千尋

印象に残っているライブ3本

ライブレポート

「アイドルにとっての幸せは、CDが売れること、曲がバズること、テレビにたくさん出れること……いろんな形があると思うんですけど、私は最後に見届けてもらえることがとってもうれしいです」

2025年12月13日に解散したアイドルグループ・TEAM SHACHIのセンター秋本帆華が残した言葉だ。アイドルとファンの幸せな関係は、夢が叶うまで並走し、そしてその瞬間をともにすることだと考える人が多いと思う。しかしTEAM SHACHIは改名後、日本武道館公演を目標に約7年間駆け抜けてきたが、それを叶える前に解散という道を選ぶこととなった。この事実にファンは少なからず罪悪感を抱きながら、ラストライブの日を迎えたはずだ。そんな気持ちを晴らしてくれたのが秋本による涙ながらのあのMCだった。ファンが最後まで一緒に並走してくれたことが、きっと彼女たちの未来の糧になっている。アンコールを終えた4人の晴れ晴れとした表情がそれを物語っていた。

ライブレポート

Perfumeのコールドスリープ宣言直後の東京ドーム公演は「3歳以下のお子様は膝上鑑賞の場合チケット不要」の注意書きを見て2歳の娘を連れて行くことを決断した。正直に言うと私は冒頭からずっと涙していたが、「P.T.A.コーナー」で唯一知っている「はみがきじょうずかな」が始まると一緒に歌い、あ~ちゃんのまねをしてせっせと栗拾いをしている娘の姿に大いに励まされた。ライブ以降、娘はテレビ番組でPerfumeを見かけるたびに「かぼちゃ、かぼちゃ、すすき、すすき、栗拾い」と歌っている。またPerfumeと娘と一緒に栗拾いができる日を楽しみに待ちたい。

ライブレポート

MONO NO AWAREの八丈島公演も素晴らしかった。八丈出身の玉置周啓と加藤成順にとって凱旋ライブとなるこの公演には地元の人々も多く集い、自分の故郷ではないのになぜか地元に帰ってきて夏祭りに参加したような感覚になった。彼らの音楽にしかないあの空気感は、八丈の気候、人、食べ物、風……すべてのものから影響を受けていることを実感するステージだった。本土に戻ってきてからもずっと彼らのアルバムを聴いているし、早くまた島に“帰りたい”とすら思っている。

「今日はいっぱい曲をやるんで」。冒頭のMCで曽我部さんは確かにそう言った

文 / 望月哲

印象に残っているライブ3本

サニーデイ・サービス

「今日はいっぱい曲をやるんで」。冒頭のMCで曽我部さんは確かにそう言った。確かにそう言ったのだが、さすがにここまでとは思わなかった。計46曲、3時間半。アルバム「若者たち」のリリース30周年ということもあり、同作収録の初期曲はもちろん、「青春狂騒曲」「サマー・ソルジャー」「春の風」といったライブでおなじみの楽曲、そして「湖畔の嵐」や「あの花と太陽と」などオリジナルアルバム未収録のシングルカップリング曲まで、バンドのすべてを全身全霊で出し尽くすような壮絶すぎるパフォーマンスにクラクラした。最後の最後にやった「セツナ」のパフォーマンスはいつも以上にエネルギッシュで、汗まみれになりながら、もはや泣いているのか笑っているのかわからないような“イイ顔”で、爆音でギターソロを演奏し続ける曽我部さんの姿に激しく心を揺さぶられた。終演後、疲労困憊なんだけど、妙にすがすがしい気持ちでリキッドルームの階段を上がり出口に向かう。会場を出た瞬間、12月の冷たい空気がパーンと頬を打つ。1年の厄が吹き飛んだような心持ち。そのままツレと恵比寿横丁へ。そこで飲んだ生ビールの1杯目の旨さといったら! 2025年の年末に、忘れられないすごいライブを観た。

Juice=Juice

ライブレポート

実力派ぞろいのハロプロ勢にあってライブ力の高さで定評があるJuice=Juice。「盛れ!ミ・アモーレ」のバズという追い風を受けて、この日の武道館公演もこれまで以上の期待と熱気に満ちあふれていた。「今のJ=Jだったら、すごいライブを見せてくれるはず」。そんな観客サイドの高いハードルをパワフルかつ華麗なフォームで軽々飛び越えていくような、彼女たちの圧倒的なパフォーマンスに始終魅せられっぱなしだった。新メンバーの林仁愛さんが時東ぁみ直系のオールドスクールなメガネっ子アイドルの装いでありながら、歌とダンスがキレッキレなところも個人的にめっちゃツボ。

■井上園子

ずっと気になっていたシンガーソングライター・井上園子さんのライブをこの日のイベントで、ようやく生で観ることができた。カントリーやブルーグラスの影響を受けたという、アコースティックギターのフィンガーピッキング奏法に乗せて、日常の悲喜こもごもを誰の真似でもない自分自身の言葉で凛々しく歌う彼女の姿にすっかりヤラれてしまった。マイティマウンテンズとの対バンで観たバンドセットでのライブもめちゃくちゃよかった。昨年リリースされた1stアルバム「ほころび」は今年一番聴いた作品かもしれない。彼女の影響でここ最近はThe Dillardsをよく聴いている。

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