
再生数急上昇ソング定点観測 (2025年9月4週目) [バックナンバー]
星野源「2」の初タッグとは思えない“最高のバディ”感 / Adoはなぜ昭和を忠実に再現できるのか / 肘打ち界隈ブームでセカンドバッカーも話題に
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2025年9月26日 18:30 7
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで9月12日から9月18日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、1位に
米津玄師「IRIS OUT」ミュージックビデオ
3位には、
Number_i「Numbers Ur Zone」ミュージックビデオ
当連載では7月16日公開の記事でも
BE:FIRST「空」ミュージックビデオ
15位には
Creepy Nuts「ちゅだい」ミュージックビデオ
今の日本の音楽シーンを代表するアーティストの新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
星野源「2(feat. Lee Youngji)」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場48位
星野は以前からヨンジの音楽性に惹かれており、また彼女も去年1月に東京・豊洲PITで開催された単独コンサート「LEE YOUNGJI 1st ASIA TOUR“THE MAIN CHARACTER”-TOKYO」で星野のヒット曲「恋」を披露するなど、アーティストとして相思相愛の関係だった。そんな2人が初めてタッグを組んだ曲とは思えないほど、「2(feat. Lee Youngji)」からは両者のいいグルーヴが感じられて、「異星から2人舞い降り / 踊り交わす瞳 / 笑う僕らに / 勝てる者などいないのに」という“最高のバディ”を示したような歌詞もハマっている。
MVを制作したのは映像作家の石井英之だ。都心の路上や夏の陽光が降り注ぐ埠頭、高速道路を望むビルの屋上、シンセサイザーが並ぶホームスタジオなど、多彩なロケーションで歌う星野とヨンジの姿がどこか懐かしい質感で記録されており、随所に楽曲のテーマとモチーフを表現したアニメーションが挿入されている。
Ado「CAT'S EYE」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場56位
「CAT'S EYE」は1983年にテレビアニメ「キャッツ❤︎アイ」のオープニングテーマとして発表された
編曲は「僕のヒーローアカデミア」「ハイキュー!!」「キラキラ☆プリキュアアラモード」「ガンダムビルドファイターズ」など人気アニメ作品の劇伴を手がけている林ゆうきが担当した。アニメのリメイクが報じられた際に、Adoは「楽曲を歌唱する際、杏里さんをリスペクトさせていただきつつ、80年代の歌唱法と自分の色を混ぜてみました」とコメントしている。
公開されたオフィシャルオーディオのコメント欄では「杏里へのリスペクトが色濃く感じられる、そしてウマイ」「マジでうめぇ。キャッツアイ、小さい頃再放送で見てて元の歌も染み付いてるけど、このバージョン、新しい正解って感じがする」など原曲のファンからも高い評価を得ている。現在22歳のAdoが、なぜこれほどまでに昭和のエッセンスを忠実に再現できるのだろう。カバー曲だからこそ、改めて彼女の表現力の高さに度肝を抜かれた。
セカンドバッカー「犬とバカ猫」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場93位
「今度遊ぼうと言われて、いざデートに誘ったら既読スルーで今コレ」「自転車のサドルを盗まれて今コレ」など、「〇〇されて今コレ」という文章とともに撮影中のスマホ画面に向かって肘打ちする動画を見たことがあるだろうか? 「肘打ち界隈」というネーミングで、今TikTokを中心に流行っている。嫌な出来事を打ち明けて、これでもかと思いきりストレスを発散する動きが見ていてスカッとするので、多くの人に好まれているのだろう。
そんな肘打ち界隈が広まったきっかけは、TikTokerのなかみちが劇場アニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」のエンディングテーマ「不思議のカルテ」を流して「保育実習で園児に先生顔にぶつぶつ(ニキビ)いっぱいあるって言われて今これ」と投稿したことが始まりと言われている。そしてその動画のフォーマットを使い、セカンドバッカーのドラマー・まさみが「犬とバカ猫」をBGMにしたショート動画を投稿したところ、肘打ち界隈は一気に話題に。さらに、彼と仲のいいかやゆー(
かやゆー「流石にちょっと焦ってる」
「犬とバカ猫」は7月9日にリリースされた配信シングル。好きな人と別れたことで、自分の至らない点や彼女との思い出を振り返る描写が印象的な、切ない恋心をポップな曲調に落とし込んだロックナンバーだ。
MVを監督した加藤マニはX(Twitter)で「TikTok楽曲チャートで首位を獲得しながらも、所謂バズを意識したデザイン過剰なものではない、軽快なギターロックに、丁寧に真っ直ぐ描かれた、"かつての恋愛"が歌われる、重すぎないけどちゃんと切ない佳曲でございます」と今作の魅力をポスト。また、20代特有の心のすれ違いをテーマにした普遍性についても「そういうところが人間の愛らしいところなんじゃないの!とも、思っている」と絶賛している。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
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hachi* hachi* @jolly_a_cstm
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