7月に始まったYOASOBI初のホールツアー「YOASOBI HALL TOUR 2025 WANDARA」が11月30日の沖縄公演をもって幕を閉じた。
コロナ禍にデビューし、初ライブは無観客、有観客の初ライブは満員の東京・日本武道館、そして結成から5年でドームツアーを開催するなど、ほかに類を見ないキャリアを歩んでいるYOASOBI。全40公演からなる初のホールツアーは、YOASOBIがこれまでライブで訪れたことのない土地を巡り、各地に滞在し2~4公演を行うという、いわゆる一般的な全国ツアーとは異なる回り方で実施された。
WOWOWではこのツアーのうち、11月30日に行われた沖縄コンベンションセンター展示棟公演の模様を1月10日19:45からオンエア。これに向けた本特集では、ホールツアーを回った手応えやAyaseの地元・山口公演での思い出、沖縄公演の見どころなどを語ってもらった。また日本人アーティスト初となるアジア10大ドーム&スタジアムツアーを控える2026年への意気込みも聞いた。
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構成 / 清本千尋
ホールだからこその演出やセットリストを用意して
──今回のツアーのテーマは「RPGのような冒険の旅」だったとのことですが、セットリストはどのように構成していきましたか? またどんな狙いがあってこのような曲順になりましたか?
Ayase 最初は“旅”を意識したというよりも、ホールでの演出プランと照らし合わせて最もストーリー性があってかつ面白い、YOASOBIの今を一番フレッシュに感じてもらえて迫力のあるセットリストをストレートに考えました。そのうえで、“旅”と題して公演が40本もあったので、そのときの気分で「こういう曲をやりたい」「会場によって変えてみよう」といった変化が必ず欲しくなるだろうなと思い、ある程度柔軟性を持たせたセットリスト作りを心がけましたし、実際に変化もしました。旅をしながら“自分たちの成長とともに磨き上げていくセットリスト”みたいな感じでしたね。
──ホール公演ならではの演出もあったように思います。
Ayase 今回YOASOBIにとって初めてのホールのツアーだったので、ホールならではの距離の近さを楽しめる公演にしようと思いました。ikuraと相談して、アコースティックセッションをやろうというところから派生し、お客さんの中から協力してくださる方を募集したり、自分たちがステージから降りてお客さんのもとへ行ったり、ホール会場だからこそできる、みんなとの絆を感じ合えるようなものを1つの軸にしてセットリストを作っていきました。
──今回のツアーは初めて訪れる土地も多かったと思います。会いに来てもらうのではなく、自分たちからファンに会いに行った今回のツアーは2人にとってどんなものになりましたか?
Ayase・ikura もちろん私たちから会いに行きましたが、みんなも会いに来てくれたので、お互いに会いたいという気持ちが合致して生まれた1日1日でした。今までYOASOBIが行けていなかったエリアに自ら足を運んで、食事や景色などその場所・地域・町の空気感もしっかり味わうことができましたし、それぞれの場所で生活されている皆さんやその近辺でいつもYOASOBIの音楽を楽しんでくださっている皆さんと、その日だけの音楽でつながっていくという体験は、今回のツアーのテーマでもある“絆を深め合って仲間になっていく”という部分を強く感じられたライブツアーになりました。
──アリーナやドームでは巨大な舞台セットなど演出がありましたが、ホールツアーはステージのサイズに合わせたコンパクトなセットで、楽曲が持つ力や2人のライブ力が試される場所だったと思います。このツアーのステージパフォーマンスを通して、どういった点でYOASOBIとして成長できましたか?
Ayase・ikura ライブを通してお客さんとの心の距離をしっかり近付けていく、ということは前々から気にしていたものの、どうしてもアリーナやドームだとステージと客席が遠いですし、お客さん1人ひとりの顔を確認するなんてことは難しいんですよね。YOASOBIにはそれぞれ個々にそれまで活動してきたベースはあるものの、YOASOBIとしてはライブハウスでずっと何かを培ってきたとか、少しずつステップアップしたわけではなく、大変ありがたいことに一気に大きい会場でパフォーマンスさせていただくような稀な道のりでした。でもどんなに規模が大きくなってもやっていることは“ライブ”であり、そこにいる1人ひとりに対して歌っていて“あなたに向かってプレイしている”ということをしっかり育てていかないといけないと思っています。どんなに大きい会場でライブを成功させていたとしても、嘘臭くなってしまうようなパフォーマンスは違う。だからさらに地盤を固めるために必要な40本でした。実際このツアーを通してそういった部分がより鮮明になったことで、お客さんの存在がYOASOBIにとってより解像度の高いものになったと思います。そういった部分において成長というか、本当に必要な経験をさせていただいたと思っています。次はライブハウスツアーとかもやりたいですね。
Ayaseの凱旋公演を終えて
──このツアーで特筆すべきはAyaseさんの地元・山口での公演だと思います。凱旋公演をやってみてAyaseさんは今どんな思いですか? またAyaseさんの原点である山口での公演にikuraさんはどんな気持ちで挑み、彼の生まれ育った地のファンと対面してどんな思いを抱きましたか?
Ayase 思い入れはもちろんありますね。フェスで帰ってきたことはあったものの自分たちのワンマンライブで帰るのは初めてでした。“日々応援してくれている地元の人”というのは僕からするとやはり特別な思い入れがあります。地元が同じ人としか分かち合えない“この人は山口県民だな”という価値観や空気感みたいなものはおそらくこの先も変わらずにずっとあり続けると思います。僕はいつまで経っても山口に帰ることで安心感を覚えるだろうし、山口の人たちとしゃべることでいつでも青春に立ち返ることができます。自分の原点になっている場所で、今の自分たちの最大火力をお見せすることができたというのは、自分にとってとても必要なステージでした。待ちわびていたステージであり、開催できてよかったという気持ちに加え、バンドをやっていたときからお世話になっていたライブハウスの方や地元のバンドの先輩も応援に駆け付けてくれたりとメモリアルな瞬間もたくさんあったので、とても情熱的でノスタルジーで素敵な日を過ごすことができました。もっとビッグになってまた帰ってきます。
ikura Ayaseさんが山口で生まれ育って、その場所で作ってきた音楽と築いてきたいろんな人との絆や過ごしてきた時間が、きっとAyaseさんの中で楽曲を作る時の軸になっているんだろうなと肌で感じることができました。Ayaseさんが作った曲を実際にそのふるさとで歌ってパフォーマンスをするという、とても神聖な場所で披露するような気持ちで挑んだ2日間になりました。ファンの皆さんもAyaseさんのふるさとに思いを寄せてくださっていて、もちろん地元の方もいらっしゃいましたし、Ayaseさんの地元へ駆け付けたいと山口ではない場所から来てくださった方もたくさんいらっしゃいました。みんなでAyaseさんがこれまでたどってきた道を讃えるような時間でもあり、あの場所にいた皆さんからメモリアルな日にしようという意気込みをとても感じた2日間でした。終始、皆さんの熱量が特別に思えた日だったなと思います。私も今回でまた1つ、山口が思い入れの強い場所になったと感じています。
沖縄公演の見どころと打ち上げの思い出
──今回の旅の終着点となった沖縄公演の模様が1月にWOWOWで放送・配信されます。このライブの見どころを教えてください。
Ayase・ikura ホールツアーの最終日ということで、ホールツアーにしては大きな会場ではありましたが、集大成として僕らの気合いの入った1日でした。とはいえすべての日に特別な情熱を注いできたので沖縄だけスペシャルにがんばったということはもちろんないのですが、我々2人のパフォーマンスも、バンドメンバーたちも、ずっと磨き上げてきたものの集大成がそこには詰まっていたはずです。実際にお客さんの盛り上がりも最高潮でしたし、客席のみんなも“ツアー完走おめでとう”といった気持ちを持ってきてくれていたのを感じました。会場一体になっているその熱狂のさまをぜひチェックしてください。
──今回の沖縄滞在での思い出があれば教えてください。
ikura 最終日翌日のお昼にみんなで大打ち上げバーベキューをやりました。海辺にチームのみんなで集まって、お酒を飲みながら、ツアーのことを語ったり労い合ったりしました。私自身もとても楽しかったですし、さまざまな成長があったツアーでしたが、スタッフの皆さんもそれぞれ大変な中で参加してくださり、思いを込めてツアーを作ってくれていることを感じることができました。スタッフも含め全員で作ってきたツアーだったなということを改めて実感できる時間で、楽しい思い出になりました。
Ayase 今回のツアー中には各セクションのスタッフと夜な夜なお酒を飲み交わして熱い話をして……というのはもう幾度となく、いろんな街で繰り広げられました。もうスタッフではなく盟友だと思っていますし、その集大成である大打ち上げに70人近いスタッフが集まってくれて。中には家族を連れてきてくれる人もいました。YOASOBIの現場は、いつも安心安全でみんなが楽しい集合場所のような職場であってほしいと思っているので、ツアーという大仕事を1つ終えて、いつもの仲間で楽しく沖縄の海を見ながらお酒を飲めて、本当にいいチームで最高だなと思いました。
2026年はどんな年になる?
──年の瀬なので年末らしい質問もさせてください。今年のYOASOBIの活動や個人での活動を振り返ってみて、どんな1年でしたか? また2026年はどんな年にしたいですか?
Ayase とにかくライブの1年でしたね。アジアツアーに始まりヨーロッパにも行って、日本のフェスにも出たり……と思ったらツアーが始まって、終わったらもう年末という。ライブ数は計63本! 6日に1回はライブをしていたよという計算です。YOASOBIはもう立派なライブバンドですね。バンドとしてもかなり積み上げてきた1年でした。今年は筋トレのしすぎで免疫が落ちてしまい何度も風邪を引いてしまったので、来年は健康でいたいです。何事もバランスを考えながら来年もがんばっていきたいです。あとは明確に計画や目標を立てているので、それをしっかり達成していけるように、計画的かつ壮大で、素晴らしい1年にします!
ikura 日本人アーティストとしては初となる「10大ドーム&スタジアムツアー」も控えておりますので、より進化して楽しく健康的に活動していければと思っています。このツアーは2027年まで実施するので、気合いを入れてがんばっていきたいと思います!
プロフィール
YOASOBI(ヨアソビ)
コンポーザーのAyaseとボーカルのikuraからなる“小説を音楽にするユニット”。2019年11月に発表したデビュー曲「夜に駆ける」は、ミュージックビデオ公開直後から瞬く間に注目を浴び、国内の各種配信チャートを席巻。2025年現在、ストリーミング累計再生回数は12億回を突破している。2023年4月リリースのテレビアニメ「【推しの子】」オープニング主題歌「アイドル」は、Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で21週連続の総合首位を獲得し、Billboard JAPANの歴代連続首位記録を更新。さらに、米ビルボード・グローバル・チャート“Global Excl. U.S.”、Apple Music「トップ100:グローバル」、YouTubeのTop 100 Songs Globalでも首位を獲得し、J-POP史上初となる記録を次々と打ち立てた。結成5周年を迎えた2024年には初のドーム公演を東阪で開催。海外では2024年に世界最大級のフェス「Coachella Valley Music and Arts Festival」、2025年にスペインの音楽フェス「Primavera Sound Barcelona」に初出演。2025年6月にはイギリス・OVO Arena Wembleyにて単独公演を2日間にわたって開催した。2025年7月から国内14都市40公演のホールツアー「YOASOBI HALL TOUR 2025 WANDARA」を開催。2026年から2027年にかけて日本人アーティスト初となるアジア10大ドーム&スタジアムツアー「YOASOBI ASIA 10-CITY DOME & STADIUM TOUR 2026-2027」を実施する。




