Saucy Dog「カレーライス」で描くバンド人生、いろんな味を楽しんで

Saucy Dogの9thミニアルバム「カレーライス」がリリースされた。

「カレーライス」は「“自分だけの1枚”にしてほしい」「聴き込むたびにいろんな味を楽しんでほしい」というSaucy Dogの思いが込められたミニアルバム。「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」の主題歌「スパイス」や、映画「恋に至る病」の主題歌「奇跡を待ってたって」、サウシー自体をテーマにした「犬も喰わない」など7曲入りで、CDにはさらにもう1曲、恒例のせとゆいか(Dr)歌唱によるボーナストラック「愛しい日々よ」が収録されている。

「カレーライス」制作時に音楽との向き合い方を見つめ直し、3ピースバンドとしてのさらなる可能性を追求したというサウシー。メンバーに「カレーライス」の全収録曲の聴きどころはもちろん、1月4日に開催されるキャリア最大規模となる大阪・京セラドーム大阪での単独公演への意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 森朋之撮影 / はぎひさこ

だからこそ、この1枚ができたんだ

──9作目のミニアルバム「カレーライス」が完成しました。「はしやすめ」(2023年12月配信のEP)、「ニューゲート」(2024年12月リリースのミニアルバム)に続いて、また12月に新しい作品が聴けるのがとてもうれしいですし、いい意味でルーチンになってますよね。

石原慎也(Vo, G) そうですね。

秋澤和貴(B) 来年はお休みしようと思います。

石原 勝手なこと言わないでよ(笑)。

Saucy Dog

Saucy Dog

──本作も3ピースバンドのサウンドを軸に、Saucy Dogらしい音楽性をさらに広げていて。皆さんの手応えはどうですか?

石原 そうですね……自分自身の人生というか、音楽、バンドに向けた人生を描いているなという気がしていて。制作中、音楽に対してどう考えているのかを改めて見つめることが多かったんですよ。「スパイス」の歌詞にも書いたけど、悪いことばっかりじゃないなと。イヤなこと、前に進めないことも含めて人生だし、「だからこそ、この1枚ができたんだ」と思えば、苦い経験も捨てたもんじゃないなって。

──自分たちの曲を通して、自分自身の状況や人生に向き合える、と。

石原 今どんな感じで、どんな人生を送っているのかって、普段はあまり意識しないじゃないですか。だいたいはあとになってわかることが多いし、振り返るからこそ「まっすぐ歩いてこれたんだな」とか「ちょっと曲がってるな。軌道修正しないと」と思えるので。

秋澤 音楽的なことで言うと、曲それぞれのジャンルというか、個性がしっかり出ている感じがあって。その分、曲を覚えるのが大変になってきてます(笑)。

石原 コード進行も曲によって全然違うからね。

秋澤 ベースのフレーズについても、「手癖は許さないよ」と言われるんですよ。

石原 逆に「手癖を出して」と言うこともあるけどね。

秋澤 大変です(笑)。

──同じことをやりたくないという気持ちも?

石原 それはありますね。同じようなコード進行ばかりだと面白くないし。ゆいかも「このリズムパターン、前もやったから変えてみない?」と提案してくれるんですよ。

せとゆいか(Dr) 曲に合う気持ちいいフレーズにするのが基本ですけど、曲の印象が同じような感じになるのがイヤなんですよね。今回のミニアルバムは、いろんなフレーズを詰め込んだ曲が多いなと思っていて。「スパイス」や「まっさら」はスッと入っていけるように引き算した部分もあるし、確かに曲ごとに違いますね。

せとゆいか(Dr)

せとゆいか(Dr)

ゆいかのカレーは◯◯から作る

──1曲目の「スパイス」は、「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」主題歌です。先ほど石原さんが言ってたように、いろいろあった人生を肯定的に捉えて、先に進む決意を歌っています。この曲がミニアルバムのタイトル「カレーライス」につながっているんですか?

石原 そうですね。「次のタイトル、どうする?」という話になったときに、「『スパイス』があるんだから、『カレーライス』がいいんじゃない?」って。カレーってそれぞれ家の味があるし、シーフードカレーとかスープカレーとかキーマカレーとか、いろんな種類があるじゃないですか。このミニアルバムを聴いてくれた人にも“自分だけの1枚”にしてほしいし、聴き込むたびにいろんな味を楽しんでほしいなと。

──皆さんも「Saucy Dogにしか出せない味がある」という確信がある?

石原 それはもう必然というか、この3人だから出せるものがあると思います。前にスカパラさんと一緒に歌わせてもらいましたけど(参照:東京スカパラダイスオーケストラ谷中敦&加藤隆志×Saucy Dog石原慎也「紋白蝶」リリース記念インタビュー)、演奏の巧さは絶対にスカパラさんのほうが上じゃないですか。でも自分たちの曲に関しては、やっぱりこの3人でやったほうが歌いやすいんですよ。

秋澤 サウシーはサウンドやメロディがけっこう幅広いけど、友達や両親にも「曲調が違っても、サウシーらしいよね」「どの曲もSaucy Dogだってすぐわかる」と言われることが多くて。それも“らしさ”なのかなと。

せと 「これが自分たちだな」という確信はないですけど、いつも「サウシーらしい音だな」とは思いますね。ライブのリハでも、慎ちゃんがギターを弾くと「慎ちゃんの音だな」と思うので。

──なるほど。ジャケットに写ってるカレーライスは、メンバーの皆さんが作ったそうですね。

石原 そうなんですよ。ゆいかがいい感じに煮込んでくれて。

せと 私の作り方でやらせてもらいました(笑)。まず肉じゃがを作って、そこに水とカレーのルーを入れるんですよ。普段は肉じゃがを1日置くんですけど、撮影のときは一気にやって。

石原 めちゃくちゃおいしかったです!

Saucy Dog「カレーライス」ジャケット

Saucy Dog「カレーライス」ジャケット

粗品とライブする夢

──2曲目の「エデンの部屋」は、石原さんが夢で聴いた曲がもとになっているとか。

石原 そうなんです。夢に粗品さんとメンバーが出てきて、一緒にライブをやってて。ジャンジャンジャンって始まったものの、俺がその曲を知らなくて「どうしよう」と困惑するという夢だったんですけど、そのイントロがよかったんですよ。パッと起きて、ボイスメモに録音して、二度寝して。また起きて聴いたら意味がわかんなくて(笑)、どうしようかと思ったけど、どうにか思い出しながら曲にしてみました。

──歌詞は前向きなラブソングですね。

石原 それはゆいかのアイデアですね。「アップテンポで前向きなラブソングって、あんまりなかったよね」って言われて、確かに!と。「結」「sugar」とか、前向きな恋愛バラードはあったんですけどね。

せと こういう感じのアップテンポな曲は、応援ソングになることが多かったんですよ。サウシーって前向きな恋愛の歌がそんなになかったし、そういう歌詞がうまくハマったら気持ちいいんじゃないかなって。

秋澤 演奏でいうと、Dメロで普段はやらないベースのフレーズを入れてて。タッピングを取り入れてるんですけど、めちゃくちゃ難しいんですよ。レコーディングは一番時間がかかりました。3時間くらいかな。

石原 もっとかかったよ。もっといいプレイができるはずと信じてたので、俺もトークバックで「もう1回」「もう1回」と言い続けて。その結果、すごくいい音になりましたね。

石原慎也(Vo, G)

石原慎也(Vo, G)

ヒーヒー言いながらがんばる

──そして「第105回全国高校ラグビー大会」のテーマソング「オレンジ」は骨太のロックチューンですね。

石原 イントロのフレーズとAメロはもともとあったんですよ。高校ラグビーのテーマソングのお話をいただいたときに、「あのフレーズが合いそうだな」と思って作り始めました。ラグビーの経験はまったくないけど、そのちょっと前に大泉洋さん主演の「ノーサイド・ゲーム」(TBS系7月期の日曜劇場)を観直してたんですよ。ちょうどラグビーって面白いなと思っていた時期だったので、「この素晴らしさをみんなにも知ってほしい」という気持ちもありました。あとは自分が作る応援歌のクオリティをさらに上げたくて。

せと 自然とロックな感じ、力強いサウンドになりましたね。

石原 途中でラップっぽいパートがあったり、6/8拍子になるところもあったり。そこからサビに入っていくところもそうですけど、アレンジ的にもいろんなことができたかなと。

秋澤 うん。この曲はピックで弾いていて、ライブでもいい感じになりそうだなと思ってます。

秋澤和貴(B)

秋澤和貴(B)

──確かにめちゃくちゃライブ映えしそう。

石原 ほかの曲もそうですけど、ライブで実現可能なことしかやってないんですよ。もう1本ギターがないと成立しないとか、キーボードがいないと再現できないみたいなアレンジにはしていない。その結果、「バッキングもやって、リードも弾いて」みたいな感じになるんですけど、ライブでヒーヒー言うのは自分なんで(笑)、そこはがんばればいいかなと。4曲目の「まっさら」もすごくシンプルで。ギターも3本くらいしか入れてないし、コード進行とメロディ、3人の音だけで成り立ってる曲ですね。

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