Vシンガー・猫 The Sappinessが今年5月よりアーティスト活動を本格化。“歌ってみた”動画を多数発表し、7月以降はオリジナル曲をコンスタントにリリースしている。
猫 The Sappinessは、2024年4月に行われたメタバース音楽イベント「META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ」でデビューを果たした“バーチャル猫シンガー”。猫をモチーフとしたビジュアルと、雪乃イト、RED、ゆうゆ、星銀乃丈といった名うての作家陣によるオリジナル曲でその知名度を徐々に高めている。
音楽ナタリー初登場となるこの特集では、猫 The Sappinessの音楽的なバックボーンを掘り下げるインタビューを企画。音楽に目覚めたきっかけ、触れてきた音楽、歌唱に対するこだわりなどについて、話を聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦
「マクロスF」で音楽に目覚める
──今回の取材は猫 The Sappinessさんの人となりならぬ、“猫となり”がわかるインタビューにできればと思っていまして。趣味趣向やどんな音楽が好きかなどいろんなお話を伺えればと思います。まず、最初に音楽に興味を持ったきっかけはなんでしたか?
音楽との本格的な出会いはアニメですね。「マクロスF」の音楽に触れて真似をし始めたのが目覚めの第一歩だと思います。一時期、管楽器をやっていたこともあるんですが、そのときは楽器を演奏することにそこまでの強い興奮みたいなものは感じなくて。「音楽っていいな」と強く思ったのは「マクロスF」を観たときでした。
──「マクロスF」を観て音楽に目覚めてからは、どのような音楽に惹かれていきましたか?
ロックバンド系の音楽に惹かれるようになり、そのうちアイドルソングにも興味を持って。特にハロプロ(ハロー!プロジェクト)さんの音楽をいろいろと聴くようになりました。
──アイドルの音楽のどういうところに惹かれたのでしょうか?
どちらも音楽がよくできている、という点は共通していますが、もっと生々しいところで言うと、女性が何かを削りながら歌とダンスで表現する、という姿を観ることにハマったというか。音楽性の違いはありますが、ハロプロもロックもその観点では近いものがあるかなと、個人的には感じていました。
憧れの表舞台に立って
──憧れから音楽の世界に足を踏み入れて始まったVシンガーとしての活動は楽しいですか?
楽しいです。これまで経験したことがないことをいろいろ経験できていますし、毎週水曜日の生配信のような活動もすごく楽しい。最初は誰が観に来てくれるのかわからなくてものすごく不安だったけど、今では常連さんのヒトザ(猫 The Sappinessファンの呼称)も増えてきて。そこに新しい方もちょこちょこ来ていただけるようになりましたし、単純に配信することに対して慣れてきたので週イチの楽しみな時間になりました。
──今年7月にリリースした「散歩」を皮切りに、コンスタントに新曲を発表しています。特にお気に入りの1曲はありますか?
どの曲にも思い入れはありますが、一番歌いやすかったというか、イメージ通りの音になった手応えがあったのは「猫のみぞ知る」です。ネコザの曲は細かいボーカル表現でニュアンスを出す、ちょっとチル寄りの曲が多いんですが、「猫のみぞ知る」は思いっきり歌ってもいい曲なので、普段よりもかなり自分を解放してレコーディングできた感覚があって。歌ってて気持ちよかったですね。
──ネコザさんの音楽を聴いていて、1つ気付いたことがありまして。「散歩」「1R Vacation」といった楽曲は、自分の家の近所だったり、部屋の中だったり、極めて“半径の狭い”範囲を歌っていますよね。そのことに対して、ネコザさん自身はどう感じているのかなと。
う~ん。初めにお話しした通り、私は少し引きこもりっぽい性格で、だから歌う内容も自分の内面と向き合うような歌詞が多い。だってまだ生まれたばかりですから。人間の子供も、幼いときは自分の世界が中心で、他人を思いやったりできるようになるのは少し成長してからじゃないですか。だから今ようやく世の中のことを知り始めたところなんです。こうやって1年間、いろんな曲をリリースさせてもらって、毎週配信でいろんな方とコミュニケーションを取って、最近は外の世界のことが気になってきています。なので、もしかしたらこれから先はもっと“広い半径”を歌う曲が出てくるかもしれないですね。
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ボカロ曲はわかりやすく、不自然でないように




