ポルカドットスティングレイの5thフルアルバム「逆鱗」がリリースされた。
「逆鱗」は、ポルカ流の“グイグイくる曲、踊れる曲”が詰め込まれた全13曲入りのアルバム。2025年に結成10周年を迎えたポルカのトガった魅力が感じ取れる、ロックバンドらしさ全開の作品に仕上がっている。
音楽ナタリーのインタビューにはこれまで雫(Vo, G)のみ参加してきたが、今回はメンバー全員が登場。雫、エジマハルシ(G)、ウエムラユウキ(B)、ミツヤスカズマ(Dr)は「逆鱗」とどのように向き合ったのか。本作へのこだわりをにぎやかな雰囲気で語り合ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / はぎひさこ
エジマハルシ作曲のギターロック
──ニューアルバム「逆鱗」、素晴らしいです。現在のポルカドットスティングレイのムードがしっかりと反映された作品ですね。
雫(Vo, G) ありがとうございます。このアルバム、自信あります!
──おお! 雫さんがそこまではっきりと「自信あります」と言い切るのは稀な気がします。
雫 自信はいつもあるんですけど(笑)、アルバムってけっこう前に作った曲も入るじゃないですか。それを聴くと「こうしておけばよかった」と思いがちで、「うれしい!」と素直に喜びづらいんですよ。だけど今回は「ガチでいいアルバムができた。やった!」みたいな気持ちに初めてなってるかも。
エジマハルシ(G) 僕も同じというか、音楽的にはどんどん成長するので、以前の曲を聴くと「ちょっとアレだな」と思ったりするんですけど、今回はかなり納得度が高くて。
雫 ハルシのことで言うと、11曲目の「透明」でハルシは初めて作曲しているんですよ。
エジマ はい。作曲しました。
雫 え、それだけ!? せっかくみんなでインタビュー受けてるんだから、もっとしゃべることあるでしょ(笑)。
エジマ (笑)。以前から1人でいろいろ作ってはいたんです。その中から一番いい感じの曲を出した感じですね。「透明」はバンドっぽい曲だから、ポルカ的にやりやすそうかなと。
──ギターロックですよね。
エジマ そうですね。しっかりデモ音源を作り込んで、メンバーに渡して。
ウエムラユウキ(B) ちょっと平成の雰囲気を感じたので、アレンジもそっちに寄せたり。
ミツヤスカズマ(Dr) ドラムはデモよりカッコよくしました(笑)。
エジマ (笑)。ギターのリフに合わせて打ち込んだんですけど、ミツヤスさんが個性を生かして叩いてくれて。
雫 結果、もっと難しくなったよね。
ミツヤス いつも打ち込みでフレーズを作ってから実際に叩くという手順を踏んでいるんですけど、特に「透明」はギターのフレーズに追従するような感じになってるので、本当に難しくて。
雫 自分で作ったのに演奏できないっていうのは、全員そうなんですけどね。コロナ禍以降は宅録である程度進めることが増えたので、レコーディングのときに「全然弾けない」という事態になる。
ミツヤス 「逆鱗」はめちゃくちゃ音を詰め込みましたね。アルバムの制作に入った頃、ドラムをイチから学び直したので、その成果も反映されていると思うし、出来栄えに満足してます。
対バン相手からの刺激
ウエムラ 「逆鱗」では新しいこともけっこうやってますね。「アウト」みたいなヘビーなサウンドも初めてで、それに合わせたフレーズや音色を模索しました。
雫 「メゾン」もすごいよね。BPM200なんですけど、全員がすごいフレーズを弾きまくってて。ライブでやったときにミツヤスが叩いてる姿を見て「うわー、本当にやれるんだ」とびっくりしました(笑)。
ミツヤス 必死です(笑)。
ウエムラ 「メゾン」は本当に演奏のハードルが高くて。ライブで1回でもミスると、なかなか軌道修正できないんですよ。この曲のベースラインは、おいしくるメロンパンと対バンしたときにヒントをもらって作りました。
雫 「メゾン」はボカロから着想を得た曲で。「めちゃくちゃ複雑なボカロ曲をみんなで演奏する」というのに挑戦してみたんですけど、ユウくんはおいしくるメロンパンをリファレンスにしてたようです。
ウエムラ 対バン相手に刺激をいただきました。
雫 そういうことはけっこうあるよね。
ミツヤス うん。「Boy Boy」のドラムは1番のBメロが四つ打ちで、2番のBメロはもっとシビアに歌に合わせているんですけど、自分の中ではフレデリックをイメージしながら作っていて。
雫 特にツーマン前は対バン相手の曲をしっかり聴くからね。カバーもやるし、「こういう感じで曲を作ってみようかな」と着想を得やすくて。
ミツヤス 「自分もこの方向性でやってみたい」と思ったり。
──1月に行われたKANA-BOONとの対バン(参照:ポルカドットスティングレイがKANA-BOONと対バン、ピザパ楽しむキービジュアル公開)もめちゃくちゃ楽しそうでしたよね。
雫 我々、KANA-BOONが大好きですから。私の中で「テレキャスター・ストライプ」はKANA-BOONみたいな曲をやってみたいと思って作ったんですよ。KANA-BOONは今もずっと好きだし、また対バンしたいです。
ウエムラ 絶対したい。
採用した◯◯システムのおかげで
──対バンライブが増えたのもそうですけど、この3年半、ポルカドットスティングレイにはいろんなことがありましたよね。2024年の夏にはバンド活動の“第一章”の終了を宣言し、シングル「JO-DEKI」のリリースとともに“第二章”がスタートしました。活動の体制も大きく変わったそうですが、皆さんにとってこの3年半はどんな期間でしたか?
雫 本当にいろいろありましたね。しょんぼりするような出来事はなるべく通りたくなかったですけど、それを経て、メンバー同士が一番結束できたというか、かつてないまとまりを見せているのはよかったのかなと。
ウエムラ うん、よかったと思う。みんなで集まることも増えて。
雫 メンバー全員でごはんを食べるとか、今まではありえなかったんですよ。10年経って、普通に行くようになりました(笑)。
ウエムラ 別に仲が悪かったわけではないですけどね。
雫 もともとポルカドットスティングレイは仕事仲間みたいなマインドだったので。ごはんに行っても、大した話はしてないんですけどね。
ウエムラ 本当に実のない話しかしてない(笑)。
──どうでもいい話ができるのはすごくいいことだと思います。
雫 そうかも。あと、去年から“大臣システム”を採用してるんですよ。例えばミツヤスならFCの動画とかを作る“FC大臣”で、ユウくんとはライブのセットリストの相談をしていて、ハルシには曲のアレンジを進めてもらって。分業制にしたことで風通しもよくなったんですよね。
ミツヤス やりとりが増えるからね。お互いが考えていることが見えやすくなって、一体感が強まるというか。
──なるほど。ミツヤスさん、動画編集が得意なんですか?
ミツヤス いや、実はやったことがなかったんですけど、勉強しながら覚えて。
雫 器用なんですよ。「JO-DEKI」のレコーディングのときも、ホイッスルをめちゃくちゃうまく吹いてくれたり。
ミツヤス サンバホイッスルね。吹奏楽部でパーカッションをやってる人はみんな吹けるんです。
雫 え、そうなの?
ミツヤス はい(笑)。動画で言うと、ユウくんが自発的にネタを発案してくれるんですよ。それが本当に面白くて。
雫 この前の“本気じゃんけん”も面白かったよね。サポートの鳥山昂くん(Key)とスタジオで本気でじゃんけんするっていう(笑)。
ここは寿司だよ! やっちゃって!
──そしてエジマさんは“アレンジ大臣”です。雫さんが作ったデモ音源をもとにアレンジを進めるということですか?
エジマ はい。曲にもよりますけど、僕が中心になってアレンジを作ってます。
ウエムラ 先頭に立ってくれてます。
エジマ あとは新しい展開を作ったり。音楽以外のことは全然できないので(笑)、せめてそれだけはがんばろうと。
雫 一番大事だから(笑)。デモの前段階で、歌のみのトラックを私が作るんですけど、アレンジ全体のイメージはふんわりしてることがあるんですよ。「Boy Boy」のアウトロのギターソロは「イエーイ!」って感じでお願いします、と伝えて。
エジマ それを真摯に受け止めることもあれば、受け流すこともある(笑)。
雫 基本的にハルシには、ギターソロを弾いてほしいんですよ。
エジマ 以前はただギターソロのフレーズを考えるだけだったんですけど、最近は面白い音にできないかなと試行錯誤していて。ほかの人が思いつかないようなソロを弾きたいんです。
ミツヤス ギターソロの展開に説得力があるんですよね。
雫 わかる。ほかの楽器や歌と一体感のあるギターソロが増えたよね。特に「透明」のギターソロは一番好きかもしれない。けっこう尺もあるんだけど、フレーズがすごくいいからすっと聴けるんですよ。
──「あのね、」のBメロのギターもすごいですよね。ボーカルの後ろで速弾きしまくってて。
雫 あれは歌のバックで弾くフレーズじゃないですよね(笑)。我々はああいうギターを“寿司”って呼んでるんですよ。以前は「歌が焼肉だとしたら、ギターが寿司みたいになってるけど大丈夫?」みたいなニュアンスで使ってました。
ミツヤス 組み合わせがよくないんじゃない?っていう。
雫 そうそう。今はそうじゃなくて、「ハルシ、ここは寿司だよ! やっちゃって!」みたいになってて。ちょっと麻痺してます。
ウエムラ あはははは。
エジマ 必要ないと思ったら抵抗してますけどね(笑)。
ウエムラ ギターの音はデカければデカいほどいいと思ってるしね(笑)。
ミツヤス それもポルカドットスティングレイらしさですよね。
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遅れてやってきた下積み





