再生数急上昇ソング定点観測 (2025年11月4週目) [バックナンバー]
優里「最低な君に贈る歌」がリアルな理由とは / 雨夜燕「理論武装して」が描く“強さ”と“覚悟” / つんく♂「私のラミンタッチオーネ」に込めた思い
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2025年11月28日 18:30 3
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで11月14日から11月20日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、3位に
Snow Man「悪戯な天使」ミュージックビデオ
15位には
星野源「いきどまり」ミュージックビデオ
また
Buono!「初恋サイダー」(Live at 日本武道館 2016/8/25)
77位に登場したのは
RADWIMPS「狭心症」ミュージックビデオ
今話題のドラマや映画の主題歌から、10年以上前の楽曲まで幅広い世代のMVが並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
優里「最低な君に贈る歌」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場9位
角田光代の小説「愛がなんだ」は、28歳のOL・テルコが1つ年下で出版社勤務のマモちゃんに、過剰なほどの片思いをしている様子を描いた作品だ。マモちゃんはテルコの気持ちを知ったうえで、付き合う気がないのに、深夜に呼び出したり買い出しをお願いしたりと、いいように甘える。テルコも相手が自分に恋心を抱いていないことをわかったうえで、マモちゃんに尽くすところに、2人の歪な関係を感じる。
ある日、マモちゃんから「なぜ、自分にそこまで親切にするのか?」と尋ねられ、テルコは心の中でこんな気持ちを抱く。「好きだから、なんて理由で、私のやっていることのすべてを括ることができればどんなにいいだろう」。ときとして片思いは大きな矛盾を孕んでいる。「どうせ成就しないのだから、早く気持ちを切り替えたほうがいい」「この人は自分を求めているわけではないのに」と頭ではわかっていても、一緒にいたいという思いは止められない。
初星学園「理論武装して」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場72位
「アイドルマスター」シリーズの最新作「学園アイドルマスター」にて11月16日に追加プレイアブルキャラクターとして新アイドル・雨夜燕が実装された。雨夜燕は初星学園の生徒会副会長で、学園内でNo.2のアイドル。書道、数学、日本史、読書など多様な趣味・特技を持っており、プライドが高くて自他ともに厳しい実力主義者だ。また、幼馴染で生徒会長である学園一のアイドル・十王星南のことを強くライバル視している。
そんな雨夜燕のオリジナル曲として2026年2月25日にリリースされる1stシングルの表題曲が「理論武装して」だ。作詞作曲はBiSやBiSHなどの人気曲を多く手がけてきた
この曲は「決して朽ちない崩れない / 遠くの景色見るために」「照りつける太陽浴びて / あるべき姿思い出せ」というフレーズからも読み取れるように、誇り高いNo.2の雨夜燕が知性や実力を武器にNo.1を目指す姿を描いている。全編通して強気な姿勢が表現されている一方、それだけでなく「恐れを知ったから / 負の感情がこぼれた」など、彼女が自分の弱さを自覚したうえで高い壁を乗り越えようとする描写もあり、キャラクターの人間味が際立っている。激しく重いサウンドや力強いリズムからも、雨夜燕の“強さ”と“覚悟”が感じられる1曲だ。
モーニング娘。'25「私のラミンタッチオーネ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場73位
プロデュースを手がけたつんく♂は自身のnote「つんく♂のプロデューサー視点。」内で、今作の解説を公開している。この記事によると「私のラミンタッチオーネ」の歌詞は、次のような思いを込めて書いたという。
「失恋して冬を迎える。彼に依存してた私は、その依存から解放されて良かったじゃんと自分で自分を肯定しようともがいている曲です」
曲の世界観を表現するために、サビを歌うメンバーの表情についてもつんく♂は強いこだわりを持っているようだ。振付を担当しているYOSHIKOに、彼はこんなことを依頼したそうだ。
「『曲の雰囲気で行くときっとサビは悲しい、切ない顔を全員すると思うけど、そうじゃない。ここは笑ってやっててください。その方が、フッた彼氏にとっては怖いから』ということを伝えたので、結構良い感じの笑顔をしてくれてます」
「てか HAPPYのHAPPY!/ 私のラミンタッチオーネ」は、12月5日に行われる神奈川・横浜アリーナでのコンサートをもって卒業する12期メンバーの羽賀朱音と、13期メンバーの横山玲奈、および年内で卒業となる15期メンバーの北川莉央にとってラストシングルであり、現在の11名体制での最初で最後のシングル。それを踏まえると「出会った頃よりも / 割と背が伸びていた」「希望ばかり未来しかないわ」といったフレーズは、過去を振り返りつつも新しい人生を歩もうとする、モーニング娘。'25の物語を表しているようにも思える。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
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真貝 聡(シンカイ サトシ) @shinkai3
今週の連載記事が公開されました! https://t.co/j0sJSru2MI