再生数急上昇ソング定点観測 (2024年5月2週目) [バックナンバー]
Nissy×SKY-HIの曲が感じさせる長年の2人のドラマ /「wowakaが作った魂の叫び」は今も鳴り止まない
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2024年5月10日 18:30 6
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで4月26日から5月2日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、4位に
SEVENTEEN「MAESTRO」ミュージックビデオ
NewJeans「Bubble Gum」ミュージックビデオ
そのほか、19位にはKanariaの「Dec.」が初登場。4月26日にMVが公開されてから、2週間で330万回再生を突破した。YouTubeのコメント欄では「MVに登場する銀色の人物は、Kanariaの過去曲『エンヴィーベイビー』に出てきた道化師の子供じゃないか?」などの考察で盛り上がっている。
Kanaria「Dec.」ミュージックビデオ
43位には
紫今「魔性の女A」リリックビデオ
人気のK-POPアーティストの新曲や、思わず考察したくなるような楽曲が多かった今週は下記の3曲をピックアップ。
Nissy×SKY-HI「Stormy」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場30位
公開3日間で観客動員数33万7000人、興収4億6300万円を突破したアニメーション映画「劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-」の主題歌として書き下ろされた、Nissy×
4月7日に開かれた映画の公開記者会見で、原作ファンだというSKY-HIは楽曲制作について「『ブルーロック』ってサッカーがロジカルで面白いことに加えて、キャラクター1人ひとりの人生、個性の濃さが魅力だと思ったので、その主題歌を作るということはいろんな人生を背負う作業だなと思ってプレッシャーはありました」とコメント。
その言葉の通り、同曲は曲単体としての反響も大きいが、原作ファンからの評価も非常に高く、「『ブルロ』(※原作の略称)にドンピシャすぎる」「この曲を聴くために、また映画館に行きたい」という声が多く挙がっている。
また4月17日に行われた映画の完成披露“超速”上映会では、Nissyが「(SKY-HIは)アーティスト同士でもあり、(
“放課後に練習している感覚”という表現が何とも愛らしく、青春を感じさせる。個性や性格は異なるものの芯の部分で惹かれあっている凪と玲王の姿は、同じAAAのメンバーでありつつそれぞれの個性を生かしたソロ活動を追求してきたNissyとSKY-HIの関係にも通じるものがある。アニソンという枠では収まらない、長年歩んできた2人のドラマもこの曲には詰まっているように思う。
Nissy×SKY-HI「Stormy」Part Switch ver.
5月2日には、パートチェンジしてNissyがラップ、SKY-HIがボーカルをリップシンクするという、遊び心あふれる動画「Part Switch ver.」も公開された。何度も間違えたNissyが舌を出して照れるところなど、2人の仲のよさが感じられる楽しい映像になっているので、MV本編と合わせてこちらもチェックしていただきたい。
ヒトリエ「アンノウン・マザーグース」THE FIRST TAKE
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場34位
2017年に発表された「アンノウン・マザーグース」は、初音ミク10周年記念コンピレーションアルバム「Re:Start」に収録するため、wowakaが6年ぶりに作ったボカロ曲だ。このボカロバージョンはwowakaを擁する
ヒトリエ「アンノウン・マザーグース」2018.3.25 LIVE at EX THEATER ROPPONGI
5年前の2019年4月5日にwowakaが亡くなったことで、ボカロ曲としてはこれが彼の遺作となってしまった。しかしその後も「アンノウン・マザーグース」の人気は衰えることはなく、最近では、今年4月に米カリフォルニア州インディオで開催された世界最大級の音楽フェス「Coachella Valley Music and Arts Festival」に初出演した初音ミクが、ステージでこの曲を歌唱したことも話題になった。
wowakaが亡くなってからも、彼が作りあげたものを守りながら3人で前に進んできたヒトリエ。彼らは4月26日にTHE FIRST TAKEに登場し、「アンノウン・マザーグース」を一発撮りでパフォーマンスした。3人編成になってからのヒトリエがライブでこの曲を披露するときに毎回言う曲振りの言葉「wowakaより愛を込めて」を冒頭でシノダ(Vo, G)が叫んだところから、すでに涙を流した視聴者が続出。間奏では原曲で流れる初音ミクの声も使用され、wowakaの世界観を最大限そのまま再現したことにグッときている人も多かった。速くて複雑な曲の上で早口で歌唱するという、一発撮りをするにはかなりハードルの高い曲を完璧に演奏しきったことにも、多く視聴者から称賛の声が上がっている。
シノダはTHE FIRST TAKE出演を振り返って「『アンノウン・マザーグース』はヒトリエのリーダーwowakaが作った魂の叫びであり、それを僕たち3人で毎回ライブでもこの曲がどんだけすごいか、“うちの天才wowakaどうだ、すげえだろ!”という気持ちでやっているんですが、今回もその気持ちでやらせていただきました」とコメント。リスナーとして何よりうれしいのは、この曲を彼らが歌い続けることで、その魂は生き続けていくと表明してくれたことだ。
ヒトリエ「オン・ザ・フロントライン」THE FIRST TAKE
なおヒトリエは5月8日にもTHE FIRST TAKEに出演。テレビアニメ「無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~」第2クールのオープニングテーマとして書き下ろされた「オン・ザ・フロントライン」をスペシャルアレンジで披露しているので、そちらも併せてチェックいただきたい。
めいちゃん feat. 葛葉「ピカレスクロマンサー」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場57位
「あっけない」「音色」に続く、
コラボをする前から葛葉は「歌い手の中でめいちゃんが一番好き」と公言しており、自身のYouTube配信ではめいちゃんの「KING」歌ってみた動画を絶賛していたこともある。一方でめいちゃんも以前から葛葉に惹かれていたようで、MVが公開された際、X(Twitter)に「ずっと一緒に歌いたかった葛葉くんとオラオラかましたぜ~」とポスト。そんな共鳴し合う2人だからか、「ピカレスクロマンサー」では抜群な歌声の相性をみせている。また楽曲だけでなくMVも、2人の相性のよさが伝わる仕上がりに。夜の道路をバイクで駆け抜けるサビのシーンはバディ感がたまらない。
ちなみに、めいちゃんは6月7、8日に大阪・大阪城ホール、15、16日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催する自身最大規模のアリーナツアーをもって活動休止。7月17日に自身の集大成となる2年ぶりのアルバム「やきそばパン」をリリースする。これに向けて今後も新曲やタイアップ、コラボレーションが発表されるようなので、次はどんな曲を聴くことができるのか楽しみにしておこう。
バックナンバー
- (2024年11月5週目) B'zの新曲はイルミネーションのように人生を彩る / 学園一のアイドル十王星南が抱く「小さな野望」とは
- (2024年11月4週目) 一躍人気のサツキが「オブソミート」で描く戸惑い / 偶然の一致?「テトリス」ネタの2曲が同時にバズる
- (2024年11月3週目) DJ社長に振り回される「不憫ボーイズ」に期待の声 / 活休前の嵐の心情を描いた「5×20」に今改めて感動
- (2024年11月2週目) なきそが一切の救いがない現実を描く「化けの花」 / timeleszが感謝込め3人で作り上げた「because」
- (2024年11月1週目) キヨ東京ドームが大盛況!Eveが描いた15年の軌跡 / 星街すいせい&葛葉の初コラボに感じる熱いドラマ
- (2024年10月4週目) こっちのけんと「もういいよ」はどうしてタヌキ? / Ado作詞作曲「初夏」の心の叫びに救われる人が続々
- もっと見る
- 真貝聡
-
ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
真貝 聡(シンカイ サトシ) @shinkai3
【連載】ナタリーで執筆している「#再生数急上昇ソング定点観測」が更新されました! https://t.co/3Fq81f63UD