YU-Mエンターテインメント所属タレントと代表の山田昌治。

アイドルが考える、健康な心と体 (前編) [バックナンバー]

タレント事務所・YU-Mが生理研修から学んだこと

根性論もチームワークも現代版にアップデート!

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話しやすい空気作りのために、意識していること

笑顔でステージに立ち、苦労をあまり表に出さないアイドル。同じ人間なのだから、体の不調があって当たり前のことなのに、彼女たちはどうやって生理を乗り越えているのだろうか。同事務所でも、特にストイックなパフォーマンスやライブ活動が多い、アプガ(仮)。彼女たちは標高の高い富士山頂でのライブや、2時間ノンストップライブなど、グループ名の由来である「毎日一杯一杯になりながらも“上へ上へ”を目指す」というアグレッシブな姿勢でファンを魅了し続けている。「健康が第一」と考える山田は、2013年からグループに定期的なフィジカルトレーニングを導入し、メンバーたちがハードな活動に耐えられるよう基本的な体作りもしっかりと行うようになった。しかし、体作りと生理はまた別の問題。「グループ内では生理のことも、体のことも、オープンに話せる空気を意識して作っています」と、アプガ(仮)リーダーの関根梓は話す。

関根梓(アップアップガールズ(仮))

関根梓(アップアップガールズ(仮))

「以前から、生理が重たくて気絶したり吐いちゃったりするメンバーを見てきたので、どれだけつらいことなのか、自分の体験も含めて身をもってわかっているつもりです。なので、比較的オープンに話しますし、リーダーになってからほかのメンバーの状態もすごく気にかけるようになりました。具合が悪そうだったら、今生理が何日目で、どんな状態なのか聞いて。私たちはリハーサルやトレーニングに割く時間が多いので、無理して体を壊さないよう、ステージに立たなくてもいい日はなるべく休んでいいという空気を作るようにしています。リーダーである私が率先して休むことで、グループ全体がそういう空気になっていくと思うんですよね」(関根)

「私はアプガ(仮)に加入してまだ10カ月ですし、男性スタッフも多いので、生理痛がつらくてもどうしても言えなくて。自分のつらいレベルもわからなくて、『とにかくがんばらなきゃ!』という考えになっていました。だけどあずさん(関根梓)が、自分自身の体験をけっこう話してくださるんですよね。自分の生理時の状態とか、何日目がどれくらいつらいのかとか、どんなふうに動けなくなるのかとか。使っているアイテムや薬のことも教えてくれるので、メンバー同士でも生理についてオープンに話せるようになりました。人によってつらさやリズムが違うので、知らぬ間に無理させちゃうこともあると思うんですけど、話したり学んだりすることで、お互いを気遣えるようになったなと思います」(鈴木)

鈴木芽生菜(アップアップガールズ(仮))

鈴木芽生菜(アップアップガールズ(仮))

約10年間、スマイレージ時代からグループでリーダーを務めていた和田は、関根の姿勢を見て、「上の人が休む姿を見せることの大切さ」を感じたという。

「グループには先輩後輩があるし、ハロプロの子たちはみんな真面目だから、迷惑にならないようにと我慢しちゃうんですよね。私も我慢強いタイプだったから、たとえ体がつらくても自分の都合でグループのスケジュールを変更させることはできなかったです。体調が悪いほかのメンバーに対して何ができたかというと、とにかく『寝ていて大丈夫だよ』と楽屋で休ませることくらい。仕事の時間になったら、様子を見て声をかけていました。今思い返せば、理想的なのは、例えば選抜メンバーで仕事をする場合はその仕事を交代したりだとか、私が休むことで後輩が休みやすい環境を作ったりするとか。メンバー同士でカバーできることがあった気がします」(和田)

和田の意見に大きくうなずくのは、アップアップガールズ(2)(以下、アプガ(2))の鍛治島彩。アプガ(2)はアプガ(仮)の妹分として5年前に結成され、最年少メンバーは15歳というフレッシュなグループだ。11月26日開催の東京・Zepp Tokyo単独公演「アップアップガールズ(2)Welcome to にきちゃんぱれーど」に向けて奮闘中の彼女たち。ストイックな姿勢で練習に励む日々の中で、ときには無理してしまうこともあると鍛治島はこぼす。

鍛治島彩(アップアップガールズ(2))

鍛治島彩(アップアップガールズ(2))

「アプガ(2)のメンバーは、めちゃくちゃ無理する人ばっかりで。自分の体のこととか、比較的オープンに話せるんですけど、生理痛ですっごくつらかったとしても『私、がんばる』みたいな感じで練習は休まない。世間から『生理は我慢するもの』という考えを植え付けられた人たちの集合体、みたいな感じなんですよね(笑)。だけど、今回の研修で『体がつらいときは我慢するものじゃない』と改めて教わったので、みんなが変わるといいなと思います。アプガ(2)はメンバー同士の年齢が離れている分、若い子たちは経験も浅くて知らないことも多いと思うし、そういうところも年上メンバーがフォローできたら。こうやって考えてみたら、きっとできることはたくさんありますよね」(鍛治島)

鍛治島彩(アップアップガールズ(2))

鍛治島彩(アップアップガールズ(2))

「私もグループに所属していたとき、ライブのMCタイミングなどでは、体調が悪い人には話を振らないようにしていたかな。あとはMCを交代するのもいいよね。かじぃ(鍛治島)のグループもあーちゃん(関根)のグループも素晴らしいところは、みんなで話せる空気があること。それができないと、1人で抱え込んでしまうじゃないですか。自分が今どういう状態なのか、近くにいる人に知っておいてもらうだけでも気持ちが楽になると思うので、アイドルグループだけに限らず、会社や学校でもそういう機会が増えるといいなと思います」(和田)

男性にも知っておいてもらえるだけで、気持ちが楽になる

生理で調子が悪いとき、自分のコンディションを知ってもらうだけで気持ちが楽になるというのは、男性に対しても同じ。グループ活動を支えるマネージャーが男性だった場合、生理の仕組みや対処法について完璧に把握しておいてほしいというのはなかなかハードルの高い話かもしれないが、「不調だと知っておいてもらえるだけでお互いに楽になる」と、メンバーたちは口をそろえる。和田はアンジュルム時代に経験した男性マネージャーとのエピソードを話してくれた。

「まだ生理に対して恥ずかしいという意識を持っていた当時、練習中に突然生理が来てしまって、すごくお腹が痛くなってしまったんです。マネージャーさんに『鎮痛剤ありますか?』と聞いたら、『なんで?』って聞くんです。マネージャーさんとは仲がよかったし、普段から話しやすいタイプの人だったけど、そこは察してほしいと思ってしまった。『どういう痛み?』と聞かれたけど、『生理痛』と答えるのが恥ずかしくて、つい怒っちゃったんですよ。デリケートな部分ではあるから、慎重に接しないと傷付いてしまう子もいるはず。だから、お互いに理解し合うことが必要ですよね。生理を体験できない人でも、生理痛にはどんな対処法があって、どういう薬を使うのかとか、知っておくだけで相手との関わり方がまったく変わってくると思うんです。だから普段から情報交換をしておくことが必要だなと思います」(和田)

そのストイックな仕事ぶりから、かつてスマイレージのファンから“鬼軍曹”と呼ばれていた山田。「1年間で1日しか休みがなかった」と当時を振り返るほどメンバーと行動をともにしていた経験もある彼は、生理に対して恥ずかしさや抵抗感などは感じていなかったという。

「僕自身はわりとオープンな性格なので、これまであまり深く考えてこなかったんですけど、生理に対しても『女性のものだから触れてはいけない』みたいに思ったことはないです。もちろん、年頃の女性タレントと接していたので、発言やコミュニケーションの取り方には都度配慮してましたし、知識は全然なかったけど、生理痛も頭痛や腹痛と同じラインで考えていました。21歳から20年以上ずっと女性アイドルに携わる仕事をしてきましたし、僕の母親が働きながらつらそうにしている姿も見てきたから、男性の中では理解しているほうかもしれないです。過去を振り返れば『もっと知識があればこんなふうにフォローできたかも』と反省することもありますし、男性が知ることは必要だと思います」(山田)

「YouTubeで彼氏に生理を体験してもらうって企画の動画を見たんですけど、そういうふうに実際に体験するのが難しくても、少し知識があるだけで全然違うと思います。それに生理について他人と話す機会が増えれば、状況も変わると思うし、誰かをサポートするタイミングが来たときに役立つはず。いち女性としても、少しでも生理について知ってくれている人には悩みやつらさを打ち明けられる気がするし、それだけでだいぶ助かるだろうなと」(関根)

関根梓(アップアップガールズ(仮))

関根梓(アップアップガールズ(仮))

ぱいぱいでか美は、長く同じ男性マネージャーと活動をともにしている。彼女自身の性格もあるだろうが、普段から自分の体調の変化を細かく伝えていることで、「助けられていることが多い」と話す。

「私は、ちゃんと“生理の人”になっちゃうんです。イライラするし、普段なら我慢できるようなTwitterのリプライにも食ってかかりそうになるし(笑)、体調が悪いときは起き上がれなくなる。だから、症状の程度に関係なく、生理がきたら『今日は生理』とマネージャーに伝えます。生理周期の前半に症状が重くなることが多いんですが、そう伝えておくと相手も気を遣ってくれますし、イライラして当たってしまっても『自分のせいじゃない』と思ってもらえたりする。言っておいたほうがお互いに楽だろうなと感じています。

ぱいぱいでか美

ぱいぱいでか美

でも、今日みんなと話していて思ったのは、私がソロで活動しているから、こんなふうに融通が効くんだなと。打ち合わせをずらしたり、ギリギリまで寝かせてもらえたりとか、グループで動いている子たちには、なかなか難しいかもしれないですよね。『ほかのメンバーに迷惑をかけたくない』と言いづらい気持ちもわかるけど、だからこそ自分の状態をみんなに共有したほうが、お互い気持ちよく仕事できるんじゃないかな。自分からは言い出せないタイプの女の子をマネジメントしている人は、余計先回りして学んでおくといいんだろうなと思います」(でか美)

生理について学び、話すこと。「躊躇してしまう気持ちもわかる」と前置きをしたうえで、彼女たちはその大切さについて身をもって語り、自分たちもまだ学んでいる途中であることを教えてくれた。後編では彼女たちに、各々の生理の乗り越え方や具体的なエピソード、YU-Mが目指す「現代型の根性論」について語り合ってもらった。

<後編へ続く>

山田昌治

株式会社アップフロントグループでモーニング娘。、後藤真希、スマイレージらのマネージャーを担当後、2016年にYU-Mエンターテインメント株式会社を設立。現在アップアップガールズ、吉川友、辻希美、和田彩花、仙石みなみ、新井愛瞳、ぱいぱいでか美らが所属する同社の代表取締役を務めている。

和田彩花

1994年生まれ、群馬県出身のアイドル。2009年にスマイレージ(現アンジュルム)の初代メンバーに選出されリーダーを務める。2010年に1stシングル「夢見る 15歳」でメジャーデビュー。2019年にアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業し、以降は音楽活動の傍らトークイベントや執筆活動などを行う。趣味は美術に触れること。特に好きな画家はエドゥアール・マネで、好きな作品は「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」。2021年11月23日に初のソロアルバム「私的礼讃」を配信リリースした。

ぱいぱいでか美

1991年生まれ、三重県出身のタレント / 歌手。ソロ楽曲の作詞作曲やライブ活動、他アーティストへの楽曲提供、DJ、コラム執筆などの傍ら、2014年8月から2021年9月まで日本テレビ系「有吉反省会」にレギュラー出演していた。また自身が中心となるバンド・ぱいぱいでか美withメガエレファンツ、アイドルユニット・APOKALIPPPSのメンバーとしても活動中。2021年3月に新曲「イェーーーーーーーー!!!!!!!!」を配信リリースし、同年4月よりYU-Mエンターテインメントに所属している。

アップアップガールズ(仮)

ハロー!プロジェクトのハロプロエッグ(現ハロプロ研修生)の研修課程を修了した7人によって2011年に結成されたアイドルグループ。結成当初は「アップフロントガールズ(仮)」として活動し、同年7月に「アップアップガールズ(仮)」に改名した。以降楽曲をリリースしながら精力的にライブ活動を行い、2014年8月には富士山山頂でのライブに挑戦。2015年5月にはハワイ・ホノルルで開催された「ホノルル駅伝」に参加しメンバー全員が完走した。2017年9月と2020年12月のタイミングで関根梓以外のオリジナルメンバーが卒業。同時に新メンバーが加入し、現在は関根、古谷柚里花、鈴木芽生菜、工藤菫、鈴木あゆ、小山星流、青柳佑芽、住田悠華の8人で活動中。

アップアップガールズ(2)

アップアップガールズ(仮)の妹分として結成されたアイドルグループ。2016年に行われたアップアップガールズ(仮)の東京・日本武道館公演にてメンバーオーディションの開催が発表され、翌2017年に活動がスタートした。初期メンバーの吉川茉優、鍛治島彩、高萩千夏の3人に加え、2018年4月に中川千尋と佐々木ほのか、2019年3月に島崎友莉亜、新倉愛海、森永新菜が新メンバーとして加入。現在は8人体制で活動している。最新作は2021年11月17日発表の音源集「にきちゃんわんだーおんぱれーど」。

※高萩千夏の「高」ははしご高が正式表記。

アップアップガールズ(プロレス)

2017年にアップアップガールズとプロレス団体「DDTプロレスリング」による新プロジェクトとして結成されたアイドルグループ。2017年にライブイベント「@JAM EXPO」でアイドルデビュー、2018年に「東京女子プロレス」後楽園ホール大会にてプロレスラーデビューを果たし、同年乃蒼ヒカリ、渡辺未詩、らくの3人体制での活動をスタートさせた。アイドルとして単独日本武道館公演、プロレスラーとして日本武道館メインイベント出場を目指し、日々アイドル活動とプロレスの稽古に励んでいる。現在東京女子プロレスの興行にレギュラー参戦中。

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