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ほしのディスコ(パーパー)

私と音楽 第21回 バックナンバー

パーパー・ほしのディスコが語るクリープハイプ

卑屈に共感し、“負”を笑いに昇華

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各界の著名人に、愛してやまないアーティストについて話を聞くこの連載。今回は「キングオブコント2017」の決勝ステージでクリープハイプのライブTシャツを着ていたことで音楽ファンからの注目も集めたお笑いコンビ・パーパーのほしのディスコに、クリープハイプに対する熱い思いを語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / トヤマタクロウ

特徴的な声に親近感

クリープハイプを好きになったのは2013年です。その頃コンビを組んでた相方とカラオケボックスでネタ合わせをしてたら、モニタ画面にずっと「憂、燦々」のPR動画が流れていたんです。そこで「すごく特徴的な声だな」と引っかかって。最初は女の人が歌っているのかと思ったんですが、MVを観たら男性(尾崎世界観)が歌っていたから、「あ、この人が歌ってるんだ」と。僕も声が高いから親近感を覚えて、ちょっとうれしくなりました。そのあとYouTubeでほかの曲も聴いて、「オレンジ」がすごくいいなと思ったんです。「きっと2人なら 全部上手くいくってさ」という歌詞があって、たぶん恋愛の歌だと思うんですけど、僕は「このコンビで売れたい」という気持ちとリンクさせながら聴いてたんですよね。まあ、うまくいかなかったんですけど(笑)。

「がんばれ」って歌わない姿勢

最初に買ったCDは「憂、燦々」が入っている「吹き零れる程のI、哀、愛」というアルバムです。1曲目が「ラブホテル」という衝撃的なタイトルで、「こんな題名の曲が入ってるCDを買って、おかしなヤツに思われないかな?」と戸惑いながら(笑)、当時アルバイトをしていたTSUTAYAで買いました。曲は全部よかったし、自分と重ねられるところもたくさんあって。「女の子」という曲は“憧れていた芸能人とデートしたけど、結局裏切られる”という内容の歌詞なんですけど、「自分にもいつかこんなことあったらいいな」と妄想したり(笑)。ほかにも日常的なことをリアルに歌っていたり、怒りとか卑屈なところも歌詞にしていることに衝撃を受けました。自分もそんなに幸せな人生じゃなかったし、クリープハイプのちょっと暗い感じ、卑屈な感じの曲にすごく共感して。僕は友達が少ないから、悲しいことがあっても相談できる人がいないんですよ。でも自分の心情に合ったクリープハイプの曲を聴くことで、また次の日もがんばれるんですよね。直接「がんばれ」って歌わないのもいいんです。ストレートに「がんばれ」って歌われると恥ずかしいし、「がんばらなくちゃいけないのかな」って思ってしまうので。

初の武道館ライブで涙

初めて行ったライブは2014年4月の初日本武道館公演の2日目です(参照:クリープハイプ、大盛況の初武道館「もう絶対移籍しない」)。その前からずっとライブに行きたかったんですけど、「HE IS MINE」という曲で有名なコール&レスポンスがあって、お客さんが「セックスしよう!」って大声で叫ぶんですよ。僕はそういうのが苦手で、たぶん言えないから、ライブは無理だなって。でも初の武道館は大事なライブだし、思い切って当時お付き合いしていた彼女を誘って行ったんです。ライブは最高でした。1曲目の「オレンジ」でいきなり最高潮。ちょうどレコード会社を移籍した時期で、ファンとしては「どうなっちゃうんだろう?」と心配してたんですけど、尾崎さんがMCで「これからも続けていきます」みたいなことを言って、安心して泣きましたね。あと新曲としてレコード会社をディスる曲をやってたんですけど、それもビックリしました。「こんなこと歌っていいんだ!?」って。

尾崎さんに申し訳ない

その次に行ったライブは2014年の「ストリップ歌小屋」(参照:クリープハイプが“エロサイト”オープン)で、千原ジュニアさんが最初に出てきて朗読したライブです。そのときはもう彼女とは別れてたんですけど、チケットを取ってあったし、ほかに行ってくれる人もいないから、腹を切る覚悟で「申し訳ないですけど、一緒に行ってもらえますか?」とお願いして来てもらいました。なのでライブ中もずっと気まずい雰囲気でしたね……そのあともライブには年に5、6回くらいは行かせてもらってます。僕は盛り上がって手を挙げたりできないんですけど、クリープハイプはそういう曲も少ないし、居心地がいいんですよ。ただ、スタンディングの会場では後ろのほうで観るようにしています。盛り上がってないヤツが前のほうにいると尾崎さんに申し訳ないので。尾崎さんもあまり煽ったりしないんですけど、たまにMCで「もっと盛り上がってもいいんだけど」みたいなことをポロッと言うんですよ。そういうところにも勝手に親しみを感じてますね。

思いが高ぶったら、また買う

尾崎さんが初めて神宮球場で始球式をやったときも(参照:尾崎世界観、神宮のマウンドに立つ!23年間の思い伝える一投)、先輩の芸人さんにチケットを取ってもらって、観に行きました。携帯でいっぱい写真を撮ったんですけど、今思うと、ちょっとストーカーみたいですよね……グッズもたくさん持っていますし、今日着ているパーカーと靴下もクリープハイプのツアーグッズです。持っているTシャツの9割はクリープハイプだし、もはやファッションブランドとして捉えています。もちろんCDも買ってます。好きなものは2枚も3枚も買っちゃうんですよ。誰かにあげるわけではなくて、自分の中の思いが高ぶったら、また買っちゃうんです。どうしてそうなるか、自分でもわからないんですけど(笑)。

絶対に泣いちゃう「二十九、三十」

好きな曲はたくさんありますけど、一番は「二十九、三十」ですね。「いつかはきっと報われる」という歌詞で始まるんですけど、それがすごく響いて。当時はパーパーを組んだばかりでどうなるか全然わからなかったし、芸歴も6年目くらいになって、そろそろ結果を出さないとヤバイという時期でもあって。コンビニの夜勤のバイトに行く前は必ず「二十九、三十」を聴いて、「いつかきっと報われる。30歳になるまでにバイトを辞められるようにがんばろう」と言い聞かせていました。尾崎さんも下積みが長くて、苦労されていた方なんですけど、今はスターになって、武道館でライブをやったりしていて。「もしかしたら自分もそうなれるかもしれない」と思ってたんですよね。まだ全然うまくいっていないですけど、バイトは30歳までに辞められました。「二十九、三十」をライブで聴くと、絶対に泣いちゃいますね。この前の10周年記念ライブ(2019年11月16日東京・下北沢CLUB Que)でも最後のほうでやってくれて、前奏が終わる頃には泣き終えてました(笑)。

願掛けTシャツで「キングオブコント」決勝へ

あと、「大丈夫」も大好きですね。僕はホントにうまくいかないことが多くて、ライブでスベッたときとかに「大丈夫」を聴いて、「今日はお酒飲んで寝よう」って自分を慰めてます。この曲にちなんだTシャツがあって、大事な収録のときには必ず着てるんですよ。“all right”と書いてあるんですけど、「この収録、大丈夫だ」っていう願掛けみたいな感じで。「キングオブコント2017」の決勝に出たときも、このTシャツを着てたんですけど、それをクリープハイプのファンの方が気付いてくれて、ベースの長谷川カオナシさんに伝えてくれたんですよ。そこから尾崎さんにも知ってもらえて。このTシャツのおかげで巡り会えたんですよね。ずっと着てるから色褪せがすごいんです。もっとたくさん買っておけばよかった。

人生のピーク

2018年12月5日に尾崎さんのラジオにゲストで呼んでいただいて、初めてお会いしました。居酒屋で飲みながらしゃべるっていう楽しい企画だったんですけど、とにかく一番会いたい人だったし、緊張して2日くらい前から全然寝られなくて。前日も仕事を入れないで臨んだんですが、何をしゃべったかまったく覚えていないんです。あとでオンエアを聴いたら、面白いことを1つも言えてなくて、芸人としての役目はまったく果たせていなかったです(笑)。ただのファンが一緒にお酒を飲ませてもらってるだけで、「いいのかな?」って思いました。僕はカルピスサワーが好きなんですけど、尾崎さんが「俺もそれにしよう」って一緒に飲んでくれて、めちゃくちゃうれしかったですね。しかも連絡先も交換させてもらって、「夢って叶うんだな」と思ったし、あれが人生のピークでしたね。

尾崎さんに連絡するのは、「明日、ライブ行かせてもらいます」と「ライブよかったです」くらいです。一度楽屋で挨拶させてもらったんですけど、初めて告白する女子みたいに、プレゼントを「どうぞ!」って渡して、何も言えないまま帰ってきてしまって。それ以来、楽屋には行ってないです。いまだに何を話していいかわからないし、仲よくなれる日が来るのかどうか……「ライブのたびに連絡してきやがって」って、嫌われてないかだけが心配です。もし自分が女の子だったら、“付き合う”という可能性がある分、近付けるチャンスがもう1つ増えるのかなと思ったり……そんなことないか(笑)。

“負”の部分を仕事に生かす

クリープハイプの曲を直接ネタにしたことはないですけど、ストーリー性のあるネタだったり、悲しいネタを作ろうと思ったのは尾崎さんの歌に出会ったからかもしれないです。また元カノの話なんですけど、相手に二股をかけられてフラれたんですよ。ホントにつらかったんですけど、「ネタに昇華しよう」と思って。結局は悲しいままなんですけど、そのネタでお客さんに笑ってもらえたらうれしいので。僕が理不尽に振り回されるネタが増えたのも、クリープハイプを聴いてからですね。“負”の部分を仕事に生かすというのかな。それも尾崎さんから学んだことかもしれないです。

クリープハイプみたいになれたら

「売れると価値観が変わる」ってよく聞きますけど、尾崎さんはあんなに成功してもずっとネガティブでいらっしゃって、それはすごいなと思います。明るい曲も増えてますけど、それもいいんですよね。「昔のほうがよかった」なんてことも全然ないし、インディーズの頃の曲も新しい曲も同じように好きですね。この前、尾崎さんが金髪にしたときは「何かあったのかな」って気になりましたけど(笑)。ライブの雰囲気も変わってきた気がします。以前は「バンドはどういう関係性で成り立ってるんだろう?」とか「なんで小川(幸慈)さんだけマイクがないんだろう?」って思ってたんですけど(笑)、最近はメンバー同士の仲もよさそうで。10周年を記念した書籍「バンド」にも「お互いを認め合って、バンドを続けている」というようなことが書いてありました。ファンにとってはすごくうれしいし、今が一番いい状態なんだと思います。パーパーは関係性が最悪なので、クリープハイプみたいになれたらいいですね。2020年の10周年のツアーも楽しみです。幕張メッセのチケット、買いました!(参照:クリープハイプ現体制10周年記念ツアーにキャリア最大規模の幕張メッセ公演

パーパー

マセキ芸能社に所属するほしのディスコとあいなぷぅによるお笑いコンビ。ほしのディスコの芸名は、彼がファンを公言するPerfumeの代表曲「チョコレイト・ディスコ」を由来としている。また2017年にTBSが主催するコントの大会「キングオブコント」で決勝ステージに進出した際、クリープハイプのライブTシャツを着用していたことが音楽ファンの間で話題となった。

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