般若は昨年7月に15thアルバム「ラストアンサー」を発表。12月には、自身が勝ち取ったMCバトルの賞金でカンボジアに井戸を掘りに行くドキュメンタリー番組「ラッパー、井戸を掘る。」もABEMAで配信された。「ラストアンサー」リリース後初のワンマンということもあり、Spotify O-EAST公演のチケットはソールドアウト。会場には老若男女、さまざまな観客が集まった。
捻くれたベテランがたどり着いたストレートなメッセージ
ステージ上に設置されたのはDJブースのみ。般若の愚直さが表れているような、無駄を省いたシンプルな構成だ。バックDJのDJ FUMIRATCHがブースに入ると客電が落ち、般若が登場。大歓声が沸き起こる中、般若は最新アルバムの冒頭を飾る「邪魔すんじゃねえ」でライブをスタートさせた。
「調子はどうだ? 小春日和。花粉怖い。全口パクライブの幕開けだ。後ろのDJ、FUMIRATCH。ゲストはいない。友達いない」と、般若はオートチューンをかけた声で挨拶。そして「生きる」「世界はお前が大ッ嫌い」「konnichiwa」までを一気に歌い、「やってもねえのに」を1小節だけ蹴ってすぐにブレイクに入った。
改めて口を開いた般若が「ツアーファイナルって言ってんだけど、アルバム出してから1回もライブやってないんだ」と話すと、観客から笑いが起きた。挨拶にだけオートチューンをかけたことも含め、捻くれた視点と、ユーモアを交えてオンとオフがひっきりなしに交差するのが般若らしさだ。そして彼は再び話題を「やってもねえのに」に戻す。
「本当はこんなことも言いたくないけど……人が一生懸命何かをやってたり、やろうとしているときに、何か言ってくるやついるじゃん? マジで俺たちが一生懸命やっているということは間違ってないと思うんだよね。それでもなんか言ってくるやつに対しては、ほんっとに無言でぶっ殺してやろうぜ」
そう観客に語りかけた般若が再び「やってもねえのに」をスピットすると、観客はひと際大きな歓声を上げた。さまざまなフロウを複雑に詰め込んだ「すべて」、音楽への情熱を歌った「INTRO」から、人気曲「最ッ低のMC」へ。フックでBUDDHA BRAND「人間発電所」のビートにスイッチし、観客と一緒に「そして天まで飛ばそう」というラインを合唱した。
2000年代からソロラッパーとしてのキャリアを本格化させた般若。しかし当時、日本のヒップホップは急速に力を失い始め、アンダーグラウンドへと向かっていった時期でもある。その後、フリースタイルブームを経て、今シーンは過去最高の活況に沸いている。般若は常に最前線に身を置きながら、同時にシーンとは一線を画す独自のスタンスを貫き通してきた。最初のブロックでは、複雑なバックボーンを持ったラッパーが激動のキャリアを経て辿り着いた、ポジティブなメッセージが際立っていた。
「呼んでないのに来ちゃった」ゲストたち
ここでステージは暗転し、謎の寸劇MCが繰り広げられる。パッとステージが明るくなると、そこには
2006年に発表したアルバム「内部告発」から代表曲「スーパースター」を歌ってファンを沸かせた般若は、「あれから20年近く経ったぜ。そしたらこの曲も伝説になるよな」と感慨深げにしながら、同曲をサンプリングしたDJ CHARI & DJ TATSUKIの「SUPER STAR」へと突入。客演として
曲が終わるとTOKYO世界は「素晴らしい人たちと曲をできてマジで光栄です」と挨拶して去ったが、ちょうどこの日に誕生日だったRed Eyeはそのままステージに。般若と観客からバースデーソングで祝福されたRed Eyeは、「ラストアンサー」の収録曲「Once Again」をともに歌い上げた。
地元・三軒茶屋を歌った「地元の唄」のあとで、般若は突然「愛人がいます」と告白。「九州の愛人はめっちゃ臭くて、めっちゃ固いけどクセになるんすよね」と語り、さらに広島、岡山、新潟、青森、秋田、北海道と各地にも愛人がいると続ける。この不敵なMCは、各地のラーメンへの愛を歌った「愛人~また来る必ず~」のフリだ。「愛人」のフランス語である「L'Amant(ラマン)」と「ラーメン」をかけたこの曲は、1992年に日本公開されたフランス映画「愛人/ラマン」を元ネタとしている。セクシーな内容で話題を呼んだ映画のタイトルを拝借し、各エリアへのリスペクトをユーモアたっぷりに落とし込んだこの曲を歌い終えると、ポジティブなバイブスにあふれた「じんせいさいこおお」で大合唱が巻き起こった。
ともにNORIKIYOのカムバックを祝福
ここで
カムバックしたNORIKIYOを送り出したあとで、般若は新曲「はいあがる」を披露。鬼気迫るパワーでラップするこの曲は、「未来予測してみ? / AI ChatGPT / 今朝聴いて散歩した /
そして般若は「次の『やってやる』は、当時17、18歳だったSOULっていうビートメイカーが、当時29、30歳の俺に送ってくれた曲だ。だけどSOULはちょっと前にがんで亡くなっちゃって。今日ぜってえやんなきゃいけねえ曲だろ? やってやる」と明かし、「やってやる」を力強く歌い上げる。さらに、人生のやりきれなさと生の実感を落とし込んだ「ふと」、セットリストに入れるか迷ったがワンマンで歌うべきだと改めて思ったという「シングルマザー」、それぞれの苦悩を踏まえて「必ずできるあの頃じゃねえ / 一番強えのは今だぜ」と歌う「あの頃じゃねえ」を届けた。
硬軟のメッセージを織り交ぜた一夜
「こんな俺でも(ライブを)やることで楽しんでくれたり、熱い気持ちになったり。そういう歌ばっかりじゃなくて、歌うことによって自分が心苦しくなってしまったり、悲しい気持ちになる曲もあって。ちょっと次はあんまりやりたくない曲だけど、やってもいいかな?」
神妙な面持ちでオーディエンスにそう語りかけた般若に、温かい拍手が送られる。そしてDJ FUMIRATCHが曲出ししたのは、祭囃子をバウンシーに取り入れたパーティチューン「わっしょい」。客演として
「こうやって楽しい曲もあったり、熱い曲もあったりするじゃん。本当に心苦しい曲っていうのがいくつか存在していて。実際に俺だって、作って、やって、泣きそうになったりだとか、『どうしてこんな曲を作ってしまったんだろう』と思う曲もあって。もう1曲やってもいいですか?」
そして今度は代表曲「やっちゃった」へ。予想外の展開に会場のボルテージは最高潮に達した。ライブも終盤に差しかかり、般若は
「終わりが近付くと寂しくなるね」と般若が観客に語りかけて、始まったのは「こんな夜を」。彼はファンへの感謝の気持ちを込めた最後の歌詞をアカペラで歌唱し、声を震わせながら一語一語をマイクにぶつけていく。続いて「イクぜ ドコへ? イったトコもねートコへ そのまま止まんのかよ? そこで こっちはいつでもイイせOK?」と歌う「サイン」を披露し、般若はまた静かに語り始めた。
「俺、幸せ者だと思っています。こんなに人が集まってくれて。本当にありがとうございます。でも、俺のライブに来てる人って人生に満足できていない人が多いような気がする」
「悔しい思いをしている人がこの中にはいっぱいいるでしょ。俺がその最たるやつだよ。ヒップホップがどうとかっていうのは別にどうでもいいと思っていて。クラブの夜中2時とかにフロアでかからなくても、同じ夜中2時に部屋で独りで聴いてるやつの後押しになる曲しかもう書けねえからさ。だからまたライブやってくし。最後に勝てば負けじゃないから。勝つまでやってやろうよ。俺もその気持ちでずっとやってるよ。今の負けは負けじゃねえよ。俺たち、また笑って会おうよ」
その言葉のあとで、般若はアカペラで「サイン」の2ヴァース目を披露。そしてラストソング「乱世」を観客と一緒に大合唱した。最後にステージに客演を全員呼び込んで観客と記念撮影を行い、硬軟のメッセージを織り交ぜた、2時間超え全35曲におよぶ濃密なワンマンライブは幕を下ろした。
なおこの日のセットリストは、Apple Music、Spotify、YouTube Music、LINE MUSICにて公式プレイリストが公開されている。
セットリスト
般若「ラストアンサー LIVE TOUR 2026 FINAL」2026年2月23日 Spotify O-EAST
01. 邪魔すんじゃねえ
02. 生きる
03. 世界はお前が大ッ嫌い
04. konnichiwa
05. やってもねえのに
06. すべて
07. INTRO
08. 最ッ低のMC
09. 今じゃない feat.
10. タカラモン
11. ビルの向こう
12. 夢の痕
13. ゼロ
14. スーパースター
15. SUPER STAR feat.
16. Once Again feat. Red Eye
17. 地元の唄
18. 愛人~また来る必ず~
19. じんせいさいこおお
20. 運命 ~SADAME~ feat.
21. プラネタリウム feat. NORIKIYO
22. Beats&Rhyme feat. NORIKIYO
23. 百千万(Remix) feat. NORIKIYO
24. はいあがる
25. 時代遅れ
26. やってやる
27. ふと
28. シングルマザー
29. あの頃じゃねえ
30. わっしょい feat.
31. やっちゃった
32. 卒業 feat.
33. こんな夜を
34. サイン
35. 乱世
音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】
般若O-EASTワンマン
硬軟自在なメッセージ織り交ぜ35曲熱唱
「夜中2時のフロアでなく、
夜中2時に独りのやつへ」
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Jinmenusagi、Red Eye、TOKYO世界
NORIKIYO、SKRYU、柊人も登場 https://t.co/siGucO3xSA