Gacharic Spinアンジェリーナ1/3がソロで歌う理由|決意の初EP「ailly」を語る

Gacharic Spinのアンジェリーナ1/3が「ailly」名義でソロデビュー。6曲入りの1st EP「ailly」をリリースした。

セルフタイトルを冠したEPには、ソロデビュー曲「Radiory」でタッグを組んだ加藤綾太(ex. THE 2)をはじめ、彼女自身が強い影響を受けた高橋優、yonigeの牛丸ありさが参加。これまでGacharic Spinのボーカルとして「私の歌う場所はここしかない」と思っていたという彼女が、ソロデビューを決意して今作をリリースするに至るまでを、このインタビューで掘り下げる。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / kokoro

Gacharic Spinと同じことをしても意味がない

──Gacharic Spinのマイクパフォーマーであるアンジーことアンジェリーナ1/3さんが、ソロプロジェクト・aillyをスタートさせるに至った経緯をまず聞かせてください。

少し前からスタッフチームの中で「アンジーはいつかソロをやってみてもいいんじゃない?」という話が出ていたんです。でも自分の音楽の基盤を作ってくれたGacharic Spin以外のところで歌うことがイメージできなくて、「私の歌う場所はここしかない」みたいな気持ちでした。そんな中、昨年のZeppツアーを終えて、Gacharic Spinの活動が緩やかになることが決まったとき、「となると、自分が音楽を表現するにはどうしたらいいんだろう?」と考え始めたんです。同時に、「自分がGacharic Spin以外で歌わないことは、バンドのためになるのかな?」という疑問も生まれた。だったら活動が緩やかになっている間、Gacharic Spinというバンドの存在を守り、その名前を広めていくためには自分が歌い続けることのほうが意味があるんじゃないかなと思うようになったんです。

──そこでソロとして動くことを決断したと。

はい。バンドとは違ったアプローチで何か表現できるかもしれないと思って、ソロプロジェクトをスタートさせることにしました。自分としては、その決断の裏には強い思いがめちゃくちゃありましたね。私にとってGacharic Spinは本当に大事な存在なので。

ailly

──ソロとして動き出すのを決めた段階で、ご自身の中で活動の指針みたいなものは明確にあったんですか?

それが最初はまったくイメージが湧かなくて(笑)。Gacharic Spinではメンバーみんなが“アンジー”というステージキャラクターを作り上げてくれたところがすごく大きくて、私自身もみんなが求めてくれる“アンジー像”を表現することに全力を注いできたんです。だからソロとしてゼロからイチを生み出す活動を始めるにあたっては、相当悩みましたね。3カ月くらいかけてスタッフさんと徹底的に話し合い、まず私がなんで音楽を好きになったのか、どんな音楽が好きなのかという部分からすり合わせていったんです。その中で徐々にやりたいことが明確になっていきました。

──楽曲を聴かせていただくと、aillyさんのルーツが見えてきますね。きっとロックなバンドサウンドがお好きなんだろうなと。

はい! 根っからのバンドサウンド、ロック好きです(笑)。ソロとしてはやっぱりそのルーツを軸に表現したいと思いましたね。とは言え、自分で楽曲をイチから作れるわけではないので、今うちのバンマスもやってくれている加藤綾太くん……私はPちゃんって呼んでるんですけど(笑)、彼に制作にも大きく関わってもらうことにしたんです。最初にリファレンスとして私の好きな楽曲をバーッとプレイリストにして送り、「こういう曲調、こういう歌詞が好き」というのを共有して。そうしてPちゃんが一発目に書いてきてくれたのが、aillyとして最初にリリースした「Radiory」だったんです。

──ソロ名義である“ailly”は、ご自身の本名に由来しているそうですね。そういった意味では、ソロとして等身大の思いを発信したいのかなと思ったのですが。

そうなんです。ソロをやると決めたとき、Gacharic Spinと同じことをしても意味がないなと思ったんですよね。ソロでは自分の内から出るもので勝負したかった。とは言え、同じ人間ではあるので、どこかでGacharic Spinと合致する部分もあるとは思うんですけど。そういった意味ではアンジーを守りながらも、別軸としてaillyの表現をしていきたいということなんです。そこはしっかり計算しながらやっているところもあります。

──aillyならではの表現は、サウンドはもちろんですけど、ご自身で書かれている歌詞による部分も大きいですよね。

aillyの楽曲では私という人間について書いているんです。私って実はすごくめんどくさいし(笑)、女の子っぽい一面もあったりするから、アンジーのパワフルさとは違った軸で歌詞を書いているところがあります。歌詞を書き始めた当初はけっこうしんどかったですけどね。どうしても求められる自分を歌詞に反映させてしまうところがあったりして、aillyとして歌う意味のない歌詞になりがちだったから。そんなとき、「aillyはそう思わないんじゃない?」「そこは飾る必要はないんじゃない?」って、周りのスタッフさんが私の心を尊重してちゃんと指摘してくれたので、すごく助けられました。今はaillyとして歌詞を書くことがすごく楽しいです。今までと違った書き方を手に入れたことで、Gacharic Spinに戻ったときにどうアプローチしていくべきなのかが、より明確になったところもありますしね。

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アンジーとaillyの橋渡し

──昨年9月にソロデビュー曲として配信されたのが、先ほどお話に出た「Radiory」。ご自身が大切にしているラジオについて歌われています。

この曲の作詞に一番時間がかかりましたね。アンジーからaillyに名前が切り替わる最初の曲だったので、まずは自分にとって大切なものを書こうと決めたんです。悩みながら書き進めていったら、たどり着いた先がラジオのことだったという。ラジオにはアンジーとして出ているけど、やっぱりステージに立っているときとは全然違うんですよ。ラジオではより素に近い言葉というか、aillyに近いアンジーでしゃべっている部分があるので、そこを橋渡ししてくれるラジオをテーマにした曲になったのは、ソロ一発目にすごくふさわしいと思います。

──ボーカルに関してもアンジーとは違う表情がしっかり見えていますよね。

めっちゃ違いますよね。最初はアンジーとしてのボーカルスタイルのまま歌おうとしていたんですけど、それを見たPちゃんが「もっと力を抜いて」「ラジオでしゃべってる感じで歌って」「aillyになって」みたいなディレクションをしてくれて。結果、時間はすごくかかったんですけど、この曲でaillyとしてのボーカルスタイルがひとつ確立した実感がありました。今まで以上に、自分の声色に向き合ったことで、「私ってこんな甘い声を出せるんだ」とか、新しい発見もありましたし。しかも、「Radiory」のレコーディングをしたあとにGacharic Spinのライブで歌う機会があったんですけど、いろんな人から「めっちゃ歌がよくなったね!」と言ってもらえたんです。ボーカリストとして新しい引き出しを開けることができたんだなって、うれしくなりました。

私って初手ヘイトが多いタイプなんです

──続いて昨年12月に配信されたのが「噺々」でした。この曲の歌詞には岡本太郎さんの名言や落語のフレーズなどが盛り込まれていますね。

すごく嫌なことがあったときの気持ちを、そのまま落とし込んだ歌詞になってます(笑)。「ソロプロジェクトをスタートさせます」と告知をしたときに、喜んでくれる声がたくさんあった一方で、チクチクと嫌なことを言う人もいたんですよ。「Gacharic Spinはどうなるんだ?」とかね。「いやいや、あんたより私のほうがしっかり向き合ってるから!」って(笑)。そもそもGacharic Spinに加入するときやラジオを始めたときにも、けっこういろんなことを言われましたからね。私って初手ヘイトが多いタイプなんです(笑)。でも、ヘイトを受けたときに「なにクソ!」とヒステリックになれるっていうことは、それぞれの物事に対してしっかりと本気で向き合っている証明でもある。そんな思いを歌詞にしたんですけど……そのまま書くと重くなりすぎるので、岡本太郎さんや古典芸能の言葉をお借りして、ちょっとコミカルにしました。

──痛快な1曲だと思います。今回のEPでは、「噺々 -2026ver-」としてオープニングを飾っていますね。

はい。曲の中に年号が入っているので、そこが“2026”になっています。疾走感のあるロックサウンドなので、EPの始まりにふさわしいなと思って。「Radiory」とはまた違ったタイプの楽曲を持ってきてくれたPちゃんに、めっちゃ愛を感じましたね。この2曲だけでもaillyの表現の幅を感じさせてくれている。

こんな人になりたい!

──続く「EXP」と「ガールズトーク」は、ともにyonigeの牛丸ありささんが作曲されたものです。牛丸さんとはかねてから親交があったんですか?

そうですね。交流で言うと3年くらいかな。もともと私は中学生の頃からyonigeが大好きで、ライブにもガンガン通ってたんですよ。そのときから丸ちゃん(牛丸)を見て、「私もこんな人になりたい!」とずっと思ってた。そこから時間が経ち、私がGacharic Spinに加入したあと、イベントでyonigeと対バンする機会があって。そこでは挨拶することしかできなかったんですけど、後日SNSを通じてつながることができたんです。それ以来、ごはんを食べに行ったり、すごく密な関係を続けさせてもらっています。

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──そういった関係性も含め、ご自身のルーツでもあるyonigeの牛丸さんに楽曲を提供してもらうことは、aillyとして必然だったんでしょうね。

本当にそうですね。自分の原点をたどると、yonigeの存在はかなり大きくて。aillyであればyonigeのような音楽をやれるかもしれないという思いがあったんです。それを丸ちゃんに伝えたら、「じゃあ一緒に作ろうよ」と言ってくれて、この2曲が生まれました。

──具体的に制作はどう進んでいったんですか?

まずは丸ちゃんと私とPちゃんの3人でスタジオに入って。そこでPちゃんのギターに合わせて丸ちゃんが鼻歌を歌い、その横で「このメロだったら歌詞はこうかな」みたいな感じで私が言葉を紡いでいきました。セッション形式で作り進めていって、最初に「ガールズトーク」ができたんですけど、もうちょっとハイテンションなバンドサウンド系の曲も欲しいよねということで、別の日にもう一度集まり、「EXP」ができたんです。それぞれベース部分は1日でガッと作って、そのあとそれぞれが持ち帰って細かいところを固めていった感じです。