レトロリロン「コレクションアローン」特集|激動のメジャーデビューイヤーを経て1stアルバム誕生

レトロリロンの1stフルアルバム「コレクションアローン」がリリースされた。

2025年5月リリースのメジャーデビュー曲「UNITY」以降、ポップス、ロック、ジャズ、ファンクなどメンバーのルーツをミックスした魅力的なハイブリッドJ-POPと、孤独の中に希望と連帯を見つけ出す力強い歌詞の個性が際立つシングルを発表していたレトロリロン。その世界はリード曲「リコンティニュー」をはじめ、アルバム収録の新曲でさらに広がった。

音楽ナタリーでは、大きなターニングポイントを超えた4人にインタビュー。メジャーデビュー以降の成長と葛藤、そしてソングライター・涼音(Vo, A.G)が中心となり、メンバー全員が高い集中力を保ちながら臨んだという濃密なアルバム制作の内幕について本音を聞いた。

取材・文 / 宮本英夫

涼音の中だけで進行していた計画

──本題に入る前に、2025年5月にメジャーデビューしてからの9カ月を振り返って、何を感じているかを聞かせてください(※取材は2026年1月下旬に実施)。

飯沼一暁(B) バンドと音楽が、生活になっていった時間だったなと思います。行ったことのない土地にたくさん行って、いろんな人と出会って、少しずつお客さんが増えていく感覚があって。出たかったフェスに出られたりとか、変化をまざまざと見た2025年でした。バンドもそうですけど、僕自身もすごく変化したなと思います。特に今回のアルバムを作っていくうえで、レトロリロンのベースとして何をしていくか?とか、1人の人間としてどういう生き方をしたいのか?とか、そういうことを考える時間をたくさんもらいました。「あのときあれをやってよかった」も、「あれをやれなくて、何やってんだ俺は」も、全部ある期間でした。

永山タイキ(Dr) 2025年は、大前提としてすごく楽しい1年でした。自分に足りないところが見つかったし、自分がこのバンドに対してどう向き合いたいか、自分の持っているもので何ができるか、ということをこの期間に発見できたのかなと思っています。僕はもともと自分が好きなものとバンドでやることを別で考えていた部分があって、「このバンドでイチから生まれ変わるんだ」とか思っていたんですけど、振り返ると、自分じゃない誰かになろうとしていた感覚でもあったんですね。そういうタームももちろん大切だったけど、それを経て「自分ならではの表現がしたい」という感覚が前よりも濃くなったので、それを生かして2026年も活動していけたらいいなと思っています。

miri(Key) 初めての場所でワンマンをさせてもらったり、初めて海外に行ったりして、そこに待ってくれている人がいることがすごくうれしかったです。ライブを重ねていくうちに、自分のパフォーマンスとすごく向き合うようになりましたね。ライブのあとに毎回映像を観るんですけど、それを繰り返していくうちに、レトロリロンでの自分のプレイスタイルとか、どういう見せ方だとお客さんと一緒に楽しめるんだろう?とか、すごく考えるようになって。自分の中だけじゃなくて、相手との共有というところをすごく意識した1年だったと思います。

──頼もしいメンバーですね。涼音さん。

涼音(Vo, A.G) 頼もしくなりましたね。

miri おかげさまで(笑)。

──そして初めてのフルアルバム「コレクションアローン」が完成しました。

涼音 ギリギリ間に合いました。そもそも「アルバムを出します」と発表したとき、6曲しかなかったんですよ。「全8曲」って書いてあるのに。

miri あと2曲ないじゃん!って(笑)。

涼音 全部自分が悪いんですけどね。もっといっぱい曲のストックがあれば、メジャーデビュー前にアルバムの話が出ていたはずだけど、インディーズでEPを出したばかりで、タイミングがずれてしまって。でもやっぱり、芸術家である以上は作品を形として残したかったし、最近はアルバム=シングルの詰め合わせみたいな風潮もあるけど、そういうものにはしたくないなと。「UNITY」(2025年5月配信のメジャーデビューシングル)を出してからシングルを3曲ぐらいリリースすることは決まっていたので、それらをアルバムに入れるとなると、アルバムのことを考えて曲を書こうと「UNITY」のときから思っていました。

──そういうプランがあったんですね。

涼音 ということを、1人で勝手に頭の中で考えていました。メンバーには知らせずに。

miri 「ラストハンチ」(2025年8月配信の2ndシングル)を作ったときに、初めて言われました。

涼音 そのときすでに「UNITY」「ラストハンチ」「バースデイ」(2025年11月配信の3rdシングル)のシングル3曲はアルバムに入れる前提で書いていたのですが、それを悟られず、シングルとして流れができるように、というところにすごく頭を使っていました。

──シングル3曲の、アルバムの中での収まりのよさの理由がわかりました。

涼音 インディーズ時代は、まずシングルを出して、そのうえでどういうコンセプトのEPにしていこうか?と考える流れだったけど、それが嫌で、どうしてもちゃんとコンセプトを決めてからアルバムを作りたい気持ちがあったんです。でもそれをメンバーに言っちゃうと、「アルバムのために」という思考になってしまって、シングルとしての魅力が減る恐れがあった。「この1曲が自分たちの今後を決めていくんだ」という気持ちを持ち合わせた状態で作品に臨んでほしかったので、ギリギリまでアルバムのことは言わずに黙っていましたね。

──策士ですね。

涼音 敵をあざむくにはまず味方から、と言いますから。

miri あざむかれました(笑)。

涼音 先入観を持たずにいてほしかったので。結果、「UNITY」「ラストハンチ」「バースデイ」はシングルとしていいものになったと思います。

メジャーデビューは「砂時計をひっくり返した感覚」

──アルバムの冒頭を飾る「リコンティニュー」は本作を代表するリード曲であり、今までのレトロリロンの最高到達点だと思います。歌詞は何をテーマに書きましたか?

涼音 よくも悪くも現在地で、「過去でも未来でもない今」というテーマがありました。メジャーデビューって、僕の中では前に進んだというよりは、砂時計をひっくり返したような感覚があったんです。インディーズの頃は自分たちがやりたいことを好きなだけ突き詰める時間があったけど、メジャーデビューした瞬間から、タイムリミットを感じるようになって。自分の音楽生命が砂時計の砂のように落ちていく中で、「落ちきる前に今の自分にできることをどれだけやるか」みたいな感覚。そういう意味で「リコンティニュー」は、“賽を投げる”という言葉が自分の中でキーワードでした。

──ちょうど、曲の真ん中あたりに出てくる言葉ですね。

涼音 曲を聴いてくれる人に向けた、何回もサイコロを投げて自分らしく生きていこう、というメッセージでもあるんですけど、元来“賽を投げる”という言葉は「始まってしまった運命はそのまま進むしかない」という意味があるので、この曲を1曲目に置きたいと。僕の中では覚悟の曲です。この曲が2026年の自分をちゃんと立たせてくれるための相棒みたいな感じになるのかな、と思いながら歌詞を書きました。

──インディーズ時代に「Restart?」(2022年4月配信)という曲を作りましたよね。それと「リコンティニュー」の間には、何か共通項があるのでしょうか。

涼音 「Restart?」はソロ時代との決別みたいな意味合いがあったんです。でも、それまでやってきたことがバンド結成につながっているという意味を込めて、ただの「Restart」じゃなくてハテナを付けたんですよ。

──なるほど。

涼音 そして今、メジャーデビューして最初のアルバムに向かう中で、インディーズの時期は自分たちにとって必要なものだったし、これから先に起こることも必要だから、リスタートではなくて「リコンティニュー」だなと。「リスタート」は全部なかったことにしちゃう感じがあるし、「コンティニュー」だけだと弱いので、「今まで続けてきたことをもう1回続けよう」という意味で「リコンティニュー」にしました。