m-floがニューアルバム「SUPERLIMINAL」をリリースした。25周年イヤーを経て完成した本作には、同じ時代を駆け抜けた仲間から注目のニューカマーまで多彩な“lovesアーティスト”が参加。セルフオマージュしたトラックや、m-floらしい遊び心が満載のナンバー、さらに現在進行形のサウンドなど、幅広い楽曲が収められている。
本作リリース後のワンマンライブで“リミナル期間”に突入する3人は、今、何を思い、次をどう見据えているのか。アルバム制作の裏側や、櫻井翔、Diggy-MO'、RIP SLYMEが参加した話題曲の制作エピソード、さらにリミナル期間への思いなど、節目を迎えたm-floの現在に迫った。
取材・文 / 猪又孝撮影 / 佐々木康太
自分ができることは出し切れたと思う
──アルバム完成、おめでとうございます。まずは、作り終えた今の気持ちから教えてください。
VERBAL 正直、作り終えてないという感じもあるんですよね。アートって、そのアーティストが「ここで終わり」って言ったときが完成だと思うんです。でも、状況的にそうは言ってられないから、ひとまずここで区切りをつけた感じ。すごく満足してるけど、もっといろいろできたかもしれないという気持ちもあります。
LISA その話を聞いて「なるほどね」って思いました。確かに、もう一段階くらい先があったかもね、という気もしつつ、今回はm-floらしい楽曲から変化に富んだ楽曲まで、バラエティ豊かな作品になったんじゃないかと思います。たくさんの人に楽しんでもらえるはずなので、早く皆さんに聴いてほしいです。
☆Taku Takahashi 僕はいつもより制作期間が長く感じました。実際、けっこう前に作った楽曲も入っているし、完成までに時間がかかったんですよ。僕は今、絶好調なんですけど、年齢を重ねるにつれ、自分が活動できる期間は無限じゃないと意識するようになって。だからこそ、少しでも悔いのないように作ろうと思っていたんです。それでもVERBALが言った通り、物足りなさは出てくるかもしれない。ただ、自分ができることは出しきれたと思います。
──本作には、2019年の20周年イヤーのときにリリースされた「MARS DRIVE」も入っています。その理由は?
☆Taku 「MARS DRIVE」は前回のアルバム「KYO」に入っていなくて。今回の制作中に、このアルバムに合うんじゃない?という話になって、最後の最後に追加しました。
──2020年にリリースした「tell me tell me(m-flo loves Sik-K, eill &向井太一)」と「RUN AWAYS(m-flo loves chelmico)」も入っていますね。
☆Taku LISAが復帰して3人体制になったけど、lovesシリーズも復活させようと思って作ったのが「tell me tell me」なんです。そのまま、すぐアルバムまで行くかなと思っていたんだけど、そこでちょっと休みましょうということになって。
──結果、4年空いて、2024年に25周年イヤー第1弾シングルとして「HyperNova(m-flo loves Maya)」を出しました。アルバムの制作が本格的に始まったのは、その頃ですか?
☆Taku 制作はコロナ禍の少し前から始まってたんです。僕は曲を作るたび、アルバムのことを考えていて、それはメンバーも一緒だと思うけど、ギアが上がったのは「HyperNova」からですね。25周年イヤーというお祭りに合わせて、もともとは去年12月のリリースを目指して作っていたから。
──リリースが2カ月延びたのは、試行錯誤を続けていたから?
☆Taku いや、lovesシリーズは、ゲストのスケジュール調整が必要になるから、現実的なタイミングを考えた結果、年をまたぐことにしたんです。でも、モチベはずっと高かったですよ。
LISA 私もモチベが高かったし、☆Takuは本当に絶好調でした。毎回ホームランと思うぐらいトラックがカッコよくて。すごかったよね?
VERBAL うん、すごかった。
LISA やっぱ、ウチらは☆Takuが引っ張ってくれてるなって。刺さるトラックばかりだったから、一緒に仕事をするのが楽しかったし、すごくチャレンジングでした。
制作過程にプログレッシブさと懐かしさの両方があった
──今回、サウンド面で意識していた方向性やコンセプトは?
☆Taku 4年前と比べると、そこまでサウンドをディグしていないというか。正確に言うとディグはしてるんだけど、「ディグしなきゃ」という気持ちにはならなかったんです。なぜなら、今、わりと多くの曲でY2Kのリバイバルが取り入れられてると思うから。
──Y2Kサウンドはリアルタイムで作っていたからディグらなくてもわかると。
☆Taku そうなんです。だから、すごく作りやすい時代になってる。あと、block.fmの番組でヒッキー(宇多田ヒカル)と対談したときに、「人が曲だとしたら、アレンジはいかようにも着せ替えられる洋服」だと話していて、その通りだと思ったんです。もちろん服も大事だけど、本質はメロと歌詞のメッセージだよなって。そこからアレンジに関しては、どのようにもできるというモードになっていったんです。あと、去年の春頃から外仕事で歌詞を書くようになったら、アレンジも含めて調子がよくなってきて。
──歌詞を知ってアレンジを知る、みたいな。
☆Taku 歌詞を理解すればアレンジの解釈も深まる。カッコいい洋服を用意したからといって誰にでも似合うものではないし、その人ありきで似合う洋服が決まる。歌詞の理解度が深まると、その作り手が何を伝えたいかという本質の部分が見えてきて、それがアレンジにも反映されるんです。そこが今回のモチベにもつながっていたと思います。
──本作を制作する際、「懐かしさ」と「新しさ」、「m-floらしさ」と「先進性」のバランスはどう考えていましたか?
LISA そこは☆Takuが一番追求していて、いつものm-floの感じをちょっとフリップさせて、サプライズをくれました。特に今回は、サウンドをアップデートする彼の力が強く出たアルバムだと思います。私は☆Takuのサウンドありきでメロディを作っているから、作るのが難しかったし、ダメ出しされて直したものもありましたけど、今回は☆Taku's Projectだなって思うくらい、☆Takuマジックがいたるところにありました。
──周年イヤーは「らしさ」を求められる傾向がありますが、VERBALさんはどう考えていましたか?
VERBAL 「HyperNova」を作り始めたとき、前曲から間が空いていて思うように書けなかったんです。それで、☆TakuやNovel Coreくんに助けてもらって。Coreくんが「VERBALさんだったら、こうラップすると思います」って書いてくれたのを見て、全然こんなの書けないよと。だけど、その歌詞のイメージに引っ張られて、こんな俺がいたらカッコいいぞと思い、だんだん筆が乗ってきた。
──他者の目によって自分を知る、みたいな。
VERBAL そう。僕が書いた歌詞に、☆Takuが入れてくれたアドバイスをほとんど盛り込んでいる曲もあるし。お互いをよく知っているからこそ、懐かしさのツボを押さえたアイデアをくれるんです。今回の制作過程には、そうしたプログレッシブさと懐かしさの両方があって、それが楽曲に反映されてるんじゃないかと思います。
☆Taku でもさ、VERBALはこだわりが強いから、Coreくんがいろいろアイデアを出してくれても、結局、自分で書いてたよね?
VERBAL それはCoreくんみたいなことができないから(笑)。若いノリのリリックをそのままラップしてたら相当若作りだし。あと、あんなスピードで早く口が回らない(笑)。だから僕流にしていったんですよ。
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「SUPERLIMINAL」というタイトルに決まるまで



