音楽を生み出し、世の中に感動やムーブメントをもたらすアーティストたち。この連載は、そんなアーティストたちに自身の創作や生き方に影響を与え、心を揺さぶった本について紹介してもらうものだ。今回は11月20日にニューアルバム「cherish」をリリースした
01. 「北園克衛詩集」 (思潮社)
著者:北園克衛
Cornelius的なカッコよさ
昔、糸井重里氏がホストの深夜のトーク番組「カミングOUT!」に大貫妙子さんが出演した際に紹介していたのが、北園克衛の詩集でした。
早速、購入してカブれました。「なんちゃって克衛」な歌詞をいくつも作りましたが、ほとんどボツに……。ですが、この詩集をきっかけにモダニズムの詩人や画家に興味を持つようになりました。とにかくクール! 文字を図形と捉えたような感じの詩です。書く、というよりデザインするという感じでしょうか。情緒に訴えるのではなく、文字列としての面白さと言葉の意味から広がるイメージを巧みに組み合わせた絵画的な作風がカッコいい。音楽でいうとCornelius的なカッコよさ、でしょうか。
僕が持っているのは思潮社、現代詩文庫のもので、アンソロジーです。なんとなく素っ気ない装丁ですが、興味を持った詩人の作品が手軽に手に取れるという点でいいと思います。
02. 「新編 宮沢賢治詩集」(新潮文庫)
著者:宮沢賢治
制作の信条となった詩
宮沢賢治は、苦手なんです。「銀河鉄道の夜」なんて読もうと手に取っても全然先に進まない。なんだか、文章とがっぷり四つに組めないんですよ。全然頭に入ってこない。でも詩は、別なんです。特に好きなのが、「春と修羅」に収録されている「告別」という一編です。とても有名な詩です。教師をしていた賢治が(賢治が、なんて言うほど特段の親しみは感じてないんですが)音楽的な才のある生徒に宛てたものらしいです。
「まあまあいいセンいってるけど、おまえレベルの奴は一万人の中に5、6人はいるからな。そういう奴らだって何年もしないうちにその才能を失くしてしまう。ちょっとくらい才能があるからって、それに腰掛けているような奴を俺は軽蔑するよ」みたいなことを言いつつ、教え子を温かく鼓舞する内容です。
ほかの賢治の作品とはちょっと雰囲気が違う。イメージを喚起させる作風ではなく、強いメッセージが込められている。そのメッセージは自分の制作の信条となっています。この詩に出会ったのは学生の頃。若い頃に出会えてよかった。
03. 「文体練習」 (朝日出版社)
著者:レーモン・クノー
1つの型に凝り固まらず、柔軟な気持ちで
ある1つのメロディを思いつく。「悪くないけど、もっとよくならないかな」というときに、ミュージシャンはさまざまな方法を試して最適解を求める。調を変えたり、コード進行を工夫したり、テンポやリズムパターンを変えたり、アッパーな曲調をバラードにしてみたり、ピアノをやめてギターにしたり、などなど。
この本はそういう感じのことを文章で行っています。ある1つの例となる短文を99のパターンでつづった本です。最近のヒットで「もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」という本がありましたが、ちょっと似てるかもしれません。
どんなパターンがあるかというと……。
あらたまった手紙風、新刊のご案内風、女子高生言葉、とにかく罵倒する、漢文風、ソネット風、ぱぴぷぺぽ語、ほかにもたくさんおかしい文体が登場します。かなり悪ノリしてます。
思考は1つの型に凝り固まってしまいがちです。柔軟な気持ちで創作したいですね。
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