日韓合同公演「焼肉ドラゴン」が、来年10月から12月まで東京・新国立劇場 小劇場ほかで上演される。
舞台は、万国博覧会が催された1970年の関西地方都市。高度経済成長に浮かれる時代の片隅で、小さな焼肉店・焼肉ドラゴンを営む在日コリアン一家が、時代の波に翻弄されながらも懸命に生きる様子が描かれる。
また上演に向け、焼肉屋を営む金家の一人息子・金時生役の公募オーディションが実施される。四人姉弟の末っ子として可愛がられている15歳の時生は、私立の中学校に通っているが、いじめに遭って失語症となり、学校もさぼりがちという役どころだ。応募は9月2日12:00から11日23:59まで受け付けられる。
鄭義信コメント
「焼肉ドラゴン」時生オーディションを受けようと思っている君へ
僕は正直言えば、オーディションが嫌いだ。君も、たった数分の面接や、短い台詞の読み合わせで、「おれのなにがわかるんだよぉ!」と、憤懣の声をあげたくなるだろう。たしかに、慌ただしい遭遇では、君の得意とすることはなんなのか、君の美点はどこにあるのか、わかるはずもない。
今回のオーディションも、君の要望に応えられるものでないだろう。でも、僕が求めているのは、輝くような才能でもなく、飛びぬけた演技力でもない。「焼肉ドラゴン」という物語の中、家族の浮沈みを静かに見守る、時生という魂がほしいのだ。上手い、下手ではない、この在日コリアンの家族と寄りそい、ともに笑い、ともに涙する魂がほしいのだ。
僕がオーディションが嫌いな最大の理由は、たった一人を選ぶために、君たちの大勢をふるい落とさなければならないことだ。残酷で、とてもつらい作業である。けれど、君かもしれない、他の誰かかもしれない時生と出会うために、僕は今回、真摯に立ちあおうと思っている。
まだ見ぬ時生君、僕に会いに来てください。僕に君の思いを伝えに来てください。
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