「夜能~語り部たちの夜~『清経』」11月公演が、11月26日に東京・宝生能楽堂で上演される。
朗読と能を楽しめる「夜能」シリーズでは、秋クールに「清経」を上演。既報の通り、今月は朗読パートに声優の
本公演は、ろうそくを使用して舞台を照らすろうそく能として開催される。このたび、公演に向けて金井からコメントが到着した。金井は「蝋燭能という上演形態は、その揺らめく炎によって能面や衣裳の美しさを一層引き立てる効果を生み出します。屋外の薪能とは全く違う、良い意味での閉塞感、密接感があり、どこか密か事を垣間見ている様な愉楽があります」と説明し、「妻と二人のみが居る室内でひたすら許しと成仏を願う21歳の清経。その姿を蝋燭の明かりでゆっくり御鑑賞ください」と来場を呼びかけた。
金井雄資コメント
清経によせて
若き夫婦の深い愛情と愛する故の憎しみを通して、男女間の差、夫婦関係の有り様を描いた、小品ながら世阿弥の傑作です。
平家の行末にも自身の将来にも絶望し、極楽世界に救いを求めた若き貴公子清経は終に自ら命を絶ちます。自分一人を残して逝った夫の自殺が理解できない妻は、その悲しみと恨みから清経の遺髪を受け取りません。恨みながらも夫を愛する妻の夢に清経の亡霊が現れます。夫は形見を受け取ってくれない恨みを、妻は取り残された恨みを互いに嘆じ合います。妻は夫の自殺を男女間、夫婦間の関わりで考えていますが、転戦の末に敗走し宇佐八幡の御神託にも見捨てられた清経は、この世は無常な旅であると大局観的に生と死を見つめています。夫婦の対話、思いはすれ違います。
蝋燭能という上演形態は、その揺らめく炎によって能面や衣裳の美しさを一層引き立てる効果を生み出します。屋外の薪能とは全く違う、良い意味での閉塞感、密接感があり、どこか密か事を垣間見ている様な愉楽があります。しかしこの形式はどの曲目にも効果があるとは言えません。春の草原や夏の沢辺、天上界や絢爛たる宮殿といった場面では逆効果になる恐れもあります。
清経は蝋燭能には最適な一曲といえるでしょう。夫の死を知らされた妻の眠る寝室。その枕元に現れた貴公子清経が死に至るまでを物語ります。黒々と広がる波間をあてもなく漂う平家の船団。その一艘の船の先端に、一人の美しい青年が立ったとみるやおもむろに腰の横笛を抜き吹き始めます。悲しい音色が波間に冴え渡り、一頻り吹いたと思うと青年は月に向かって念仏を唱え、迷う事無く海中に飛び込み底深く沈んで行きます。
妻と二人のみが居る室内でひたすら許しと成仏を願う21歳の清経。その姿を蝋燭の明かりでゆっくり御鑑賞ください。
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「夜能~語り部たちの夜~『清経』」11月公演
2021年11月26日(金)
東京都 宝生能楽堂
朗読「清経」
能「清経」
シテ:
ツレ:澤田宏司
ワキ:高井松男 ほか
※高井松男の「高」ははしご高が正式表記。
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揺らめく炎が能面・衣裳の美しさ引き立てる「夜能」11月公演はろうそく能で「清経」(コメントあり)
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