「芸術祭十月大歌舞伎」が、10月2日に東京・歌舞伎座で開幕した。ステージナタリーでは、4日の夜の部をレポートする。
夜の部の幕開けは、通し狂言「三人吉三巴白浪」だ。節分の夜、夜鷹のおとせ(
河竹黙阿弥による耳に心地の良い七五調のセリフと、同じ“吉三”の名を持つ3人の盗賊が引き起こす、悲惨な因果話が魅力の本作。松緑は大きな身体を生かし、義兄弟の契を交わした“三人吉三”のリーダーとして、2人を引っ張る兄貴肌の和尚吉三を等身大で演じる。また自身と血のつながった弟妹であるおとせと十三郎を手に掛ける場面では、包丁を振り回す豪快な立ち廻りで場の緊張感を高めつつ、葛藤する和尚吉三の心の内を、悲痛さが入り交じる声色で見事に表した。
愛之助は、着流し姿の優男であるお坊吉三を、気品のある佇まいで端麗に立ち上げる。また追われる身となり、逃げ込んだ先で再会したお嬢吉三と「会いたかったぜ」と手を取り合うシーンでは、得も言われぬ色っぽさを漂わせ、観客を魅了した。またこの日お嬢吉三を演じた松也は、見た目は愛らしいが、中身は男らしく豪胆さを兼ね備えた役柄を、緩急ある芝居で好演。か弱いお嬢様の演技から一転、野太い男の声をあげながらおとせを川に突き落とす場面では、その鮮やかな変わり身に観客から拍手が送られた。
また、
夜の部のラストを飾るのは、世阿弥の能楽を原作に、
すっぽんから藍鼠色の壺折に身を包んだ玉三郎が現れると、その神々しさに客席は大きな拍手で包まれる。玉三郎は、児太郎と息をぴったり合わせ、義経への想いを哀しみを湛えた優美な舞で表現。神職に乞われ、静御前と若菜摘みが色違いの壺折から白拍子に衣装を揃えると、舞い踊る2人の姿はより似通い、まさに幽玄と呼ぶべき幻想的な美しさが立ち現れた。
「芸術祭十月大歌舞伎」は10月26日まで。昼の部では、「廓三番叟」「御摂勧進帳」「蜘蛛絲梓弦」「江戸育お祭佐七」が上演される。「蜘蛛絲梓弦」では愛之助が5役の早替りに挑み、鳶と芸者の恋模様を描く「江戸育お祭佐七」では鳶の佐七を勤める
「芸術祭十月大歌舞伎」
2019年10月2日(水)~26日(土)
東京都 歌舞伎座
昼の部
「廓三番叟」
傾城:
太鼓持:
新造:中村梅枝
「御摂勧進帳」
武蔵坊弁慶:
斎藤次祐家:
源義経:
鷲尾三郎:
駿河次郎:
山城四郎:
常陸坊海尊:
富樫左衛門:
「蜘蛛絲梓弦」
小姓寛丸 / 太鼓持愛平 / 座頭松市 / 傾城薄雲太夫 / 蜘蛛の精:片岡愛之助
碓井貞光:尾上松也
坂田金時:
渡辺綱:中村種之助
ト部季武:
源頼光:
「江戸育お祭佐七」
お祭佐七:
芸者小糸:中村時蔵
倉田伴平:市川團蔵
鳶の者すだれの芳松:
同 巴の三吉:坂東亀蔵
鳶重太: 中村萬太郎
同 柳吉:坂東巳之助
同 長蔵:中村種之助
同 辰吉:
同 仙太:市村光
娘お種:尾上右近
踊りの勘平:寺嶋眞秀
同 お軽:
同 伴内:
小糸養母おてつ:
箱廻し九介:片岡亀蔵
遊人おででこ伝次:
矢場女お仲:市川齊入
吉野屋富次郎:
祭りの世話役太兵衛:坂東楽善
鳶頭勘右衛門:
夜の部
「三人吉三巴白浪」
和尚吉三:尾上松緑
お坊吉三:片岡愛之助
お嬢吉三:尾上松也(偶数日) / 中村梅枝(奇数日)
手代十三郎:坂東巳之助
伝吉娘おとせ:尾上右近
釜屋武兵衛:市村橘太郎
八百屋久兵衛:嵐橘三郎
堂守源次坊:坂東亀蔵
土左衛門伝吉:
「二人静」
静御前の霊:
若菜摘:
神職:坂東彦三郎
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