趣向(撮影:佐藤茉優花)

由来を教えて!劇団名50 その14 [バックナンバー]

趣向

小さな話・小さな声を重ねて大きな画を描く

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次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。

14番目に登場するのは、劇作家・オノマリコを中心とする趣向。オノマの一人ユニットとしてスタートし、今年劇団化した趣向は、身近な出来事から深層にある問題を炙り出す確かな目線と、登場人物たちの生き生きとしたやり取りが特徴。しかし、文字面では堅そうな“趣向”という言葉を、「しゅこう」と発したときに感じる、どことなく肩の力が抜けてしまうような柔らかさ、愛嬌こそが、実は趣向作品の大きな魅力なのではないだろうか。

趣向(シュコウ)

Q. 団体名の由来、団体名に込めた思いを教えてください。

趣向のオノマリコです。

団体名は2010年に名付けました。当時はカタカナの劇団が多いように感じていたので、すこしでも目立てるようにと漢字のみの団体名で考えていました。

“趣向”という名前は、自由度が高そうなのでつけました。当時、まだ自分が何者か、どんな演劇を作るかわかっていなかったので、どんな演劇でもそういう“趣向”だと言えていいなと。井上ひさし氏が「芝居においては一が趣向で二も趣向」と書いていることから、それが由来なの?と聞かれることもあるのですが、残念ながらそういうカッコいい依拠は持ちません。

あと、名前の由来つながりで“オノマリコ”という筆名についても書かせてください。

古ギリシャ語で“名前”を意味する“onoma”と本名のリコでオノマ リコです。

“ My name is RIKO”と言っているのとほぼ同じだと覚えていただけると幸いです。

大学でギリシャ哲学専攻だったことが、この名前に生きています。

Q. 団体の一番の特徴は?

個人の小さな話・小さな声を重ねて、詩的かつポリフォニックな演劇にします。

詩的になるのは私の文章の特徴でもあります。あと登場人物の名前が、いわゆる日本語の名前らしくないこと。

“飴玉”とか“自転車”とか“タイガー”とか、抽象性の高い命名を行います。

また、個人の小さな痛みや、小さな声を描くにあたって、取材もしますし、対象となる人やグループと長い時間一緒に過ごすこともあります。

以上が作風についての特徴です。

劇団としての特徴は、劇団化したばかりでまだ模索中です。

主宰ワントップの劇団ではなく、それぞれが補い合い、助け合える劇団になりたいという気持ちは強くあります。

Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。

2023年に大川翔子さん、前原麻希さんが参加してくださり、劇団化しました。

劇団化を記念して、6月24日・25日に「オノマリコフェス」という短編演劇、音楽ライブ、レクチャーのフェスを行います。

趣向やオノマと所縁のあるアーティストの方々に出演していただき、お客さまと作り手が共にこの大変だった3年間を労り合うような時間が作れたらと考えています。2024年に行う新作のワークインプログレスなど、未来に向けたものもあります。よろしくお願いいたします。

そのあとは、お客様にとって安心して観に来ていただける環境作り(コロナ禍や演劇のチケット価格上昇により、演劇を観ること、小劇場に足を運ぶことのハードルは、以前より高くなったと思います)、稽古場でのガイドライン作りなど、諸々劇団力を高めていく予定です。

2024年に本公演を考えております。演劇のことも、演劇を取り巻く環境のことも、がんばります。

趣向「パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。」より。(撮影:牧野智晃)

趣向「パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。」より。(撮影:牧野智晃)

プロフィール

2010 年、オノマリコの一人ユニットとして発足。2015年に「奇跡の年 ANNUS MIRABILIS」「解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話」と連続公演を行う。2016年に「THE GAME OF POLYAMORY LIFE」が第61回岸田國士戯曲賞最終候補作にノミネート。また同年より高校生との共同製作を行う“趣向ジュニア”の活動をスタートした。2023年に劇団化し新たなスタートを切った。

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