場内の照明がついたまま、最新シングル「グッドラック」期間限定盤収録の「グッドラック~ストリングス Ver.~ arranged by Naoki Sato」がSEとして鳴ると、ざわめいていた観客はいっせいに静かになる。サビに入る頃に徐々に照明が暗くなり始めると同時に怒号のような歓声が響き、それを合図にしたかのように升秀夫(Dr)、増川弘明(G)、直井由文(B)、藤原基央(Vo, G)の順にメンバーが登場。背後から照らされるオレンジのスポットライトを浴びながら、藤原がギターを高く掲げると、ひときわ大きな拍手が沸く。
升のドラムに合わせ、藤原が観客にクラップを促す。そしてギターで特徴のあるアルペジオを鳴らし、1曲目「三ツ星カルテット」へとつなげた。6/8拍子と5/8拍子が複雑に絡み合うこの曲を、ツアーを経て練り上げられたバンドサウンドで軽やかに演奏する4人。続く「宇宙飛行士への手紙」では、増川のギターのトレモロが藤原の優しい歌声に寄り添う。そして曲の終わりでは「♪ラララ」と歌う藤原の声にあわせオーディエンスから合唱が起こり、場内には強い一体感が生まれた。また「ゼロ」では、藤原がサビ前の歌詞を「♪君の名前を」に変えて歌い、観客を酔わせた。
最初のMCでは、直井が「みんな久しぶり! 4人を代表して言わせてください、ホントありがとう!」とオーディエンスへ感謝を伝える。「チケットが手に入らなかった人たちが大勢いると聞いています。だからここだけじゃなく外に向けて、その人たちにも届くように演奏するので、力を貸してください。最高のライブを一緒に作りましょう!」と約束すると、同意の声が会場のあちこちから起こった。
升の叩く軽妙なリズムが印象的だった「ギルド」では、懐かしい曲に興奮する人が続出。フロア前方の密集度が高くなったため、次の曲を演奏する前に藤原の「俺がせーの、って言ったら、1歩下がってみてください」というアドバイスに従い、全員でスペースを作る微笑ましい光景も見られた。
長いアウトロで4人がセッションをするように力強い演奏を繰り広げた「Smile」のあとは、直井の「このあいだ新曲が出ました」「直接その曲を届けさせてください」という言葉に続き、「グッドラック」の穏やかなシンセ音が響く。増川のザクザクとしたギターのカッティングや休符を生かした直井のベースが、抜けのいいサウンドセッティングと相まって、雄大な音像を作り出していた。
「楽しんでる? 最終日になっちゃったよ」「回る前は長いなあと思ってたんだけど、回ってみたらあっという間でした。ただいま!」と藤原が挨拶すると、オーディエンスから「おかえり!」と歓迎の声が飛ぶ。そして「(今日のライブが)ここまであっという間だったってことは、このあともあっという間だってことですよ。昨日も言いましたけど、僕らがベストパートナーだからあっという間なんですよ。これが気の合わない同士だったら個室に2時間堪えられますか?(笑)」と、かけがえのないひとときを過ごしている喜びを口にする。
「1曲1曲大事に演奏しますから、大事に聴いてください」と観客にお願いした後に鳴らされた「R.I.P.」では、イントロ後に藤原が「あっという間だぞ東京!」と噛み締めるように叫ぶ。升のテクニカルなドラミングに支えられ、伸びやかに演奏するフロントの3人。また藤原は即興で「♪同じ場所にいられるのなら それだけでいい」と歌詞を変えたり、「♪あの日の僕に 君を見せたい」で会場中をぐるっと指差したりし、この日この瞬間を共有できているうれしさを全身で表現していた。
ライブはいよいよ終盤に突入し、増川の激しいギターストロークから「カルマ」へ。ヘビーなギターリフにあわせフラッシュライトが明滅し、直井はヘッドバンギングしながらベースラインを弾く。かと思えば「supernova」では穏やかなアコースティックギターの音色で会場をふわりと包む。最後のサビでは藤原の「歌おうぜ東京!」という誘いから、再び大合唱が生まれた。その息の合った歌声に、演奏後にはバンドから観客へと拍手が送られた。
藤原が「ステキな歌声どうもありがとう」と改めてお礼を述べ、ギターをつま弾きながら「終わっちゃうよ、もう終わっちゃうよ」とつぶやく。「ツアー終わっちゃうなあ、なんだろ、さみしいな。歌うしかないな」「調子悪い人いない? ……ありがとね」と優しい声で言い、流れるようなアルペジオが美しい「beautiful glider」を披露した。その残響が消えないうちに「星の鳥」が聴こえると、わあっと歓声が沸く。もちろん次に演奏されるのは「メーデー」だ。フロアの誰もが楽しそうにジャンプするのを見て、さらに楽しそうな表情を浮かべるメンバーたち。観客に触発されたように、曲の後半では直井や藤原もぴょんぴょん跳ねながら楽器を弾いていた。
「最後の曲、聴いてください」という藤原の声を聞き、不満の声を上げるオーディエンス。しかし「天体観測」と曲名が告げられると、今度は喜びの絶叫が響き渡った。なじみのあるイントロではoiコールが沸き、フロア中が右手を振り上げる。最後は、デビュー曲から最新曲まで惜しみなく披露してくれたバンドに感謝するかのように、大きな拍手が贈られた。
観客からアンコールの代わりに歌われた「supernova」の旋律に導かれ、メンバーが再度ステージに姿を見せる。まずは直井がドラム台の横に立ち記念写真を撮影。その後4人はリラックスした表情で、フロア前方のファンと拳をあわせたり、後方の人たちに大きく手を振ったりして挨拶していた。さらに直井の「ちょっとお願いがあるんですけど、古渓さんいます?」と撮影を担当していたカメラマンの古渓一道を探す声に続き、なぜか「古渓」コールが展開され、あわてて本人がステージに登場する一幕も。そして古渓の「ハイチーズ」のかけ声にあわせて改めてフロアの観客をも含めた記念写真が撮影された。
続いてメンバーがひとりひとり感謝の気持ちを吐露する。直井は会場に来た人、チケットを取れなかったファン、スタッフ、友達、家族、そしてみんなをつなぐ音楽への感謝を述べ、増川は「アリーナツアーにもよかったら来てください」と誘いの言葉をかける。「秀ちゃん!」コールに促された升はオフマイクで叫び、直井や増川がそれを通訳。藤原は「君らと会えて良かったです、ホントありがとう」「みんなめちゃめちゃいい顔してました。だから、そのまま帰ればいいよ。明日もあさっても、そのまんまのいい顔でいればいいよ」と、ライブ後には日常に戻っていく観客を応援するひとことを口にした。
升のオープンハイハットの音が高らかに響き、続いて鳴らされたのは「ガラスのブルース」。4人のグルーヴィなアンサンブルや、ブレイクで増川&直井が繰り広げるハイジャンプといった、ライブでなじみ深い風景が展開される。さらに観客から「もう1曲!」と悲鳴のような懇願が起こると、藤原が右手の人差し指を立ててコクリとうなずく。そして最後の曲として、「DANNY」を勢い良く演奏し、全17曲のライブに終わりを告げた。
BUMP OF CHICKENはこのあと、4月より全国アリーナ会場を回るツアー「BUMP OF CHICKEN 2012 TOUR『GOLD GLIDER TOUR』」をスタートさせる。
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- BUMP OF CHICKEN 新曲「グッドラック」2012/1/18発売決定 | BUMP OF CHICKEN
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