例年の「音博」は京都・梅小路公園で行われているが、昨年に続き今年も新型コロナウイルス感染拡大の影響によりオンライン開催に。会場にはくるりの母校である京都・立命館大学にある以学館と学生会館の2カ所が選ばれ、最新アルバム「天才の愛」を再現する第1部と、シンプルな編成でライブを披露する第2部の2部構成で行われた。
開演時刻を迎えると、立命館大学の情景とともに岸田繁(Vo, G)と佐藤征史(B)の直筆メッセージが画面に浮かび、視聴者を「音博」へと誘う。続いて画面が以学館に切り替わり、カメラはステージ上でアルバム「天才の愛」のオープニングナンバー「I Love You」を繊細に奏でるミュージシャンたちの姿を追いかけた。
岸田と佐藤というくるりのメンバーのほか、ステージに立つのは松本大樹(G)、
さらに“プログレッシブインストナンバー”「大阪万博」では、楽器隊のメンバーが遺憾なくその卓越した演奏力を発揮。綱渡りのようなスリリングな展開のこの曲を、息を合わせながら楽しげにパフォーマンスした。また佐藤がアップライトベースを弾いた「less than love」では、ジャジーかつオリエンタルなムードを漂わせ、その奥深い音像が視聴者を唸らせる。ステージの中央に向かい合ったくるりの2人は、多様な楽器が織り成すグルーヴを浴びながら、「自分たちのやりたいことだけをただ愚直にやり通して完成させた」という「天才の愛」を、岸田と三浦秀秋が手がけた「音博」仕様の特別アレンジで構築した。
第1部の終盤に差し掛かった頃、「渚」の穏やかな余韻が残る中でステージにゲストボーカルの畳野彩加(
一瞬の暗転ののち、画面にはマスク姿の岸田と佐藤が立命館大学の構内を歩き回る姿が。懐かしいエピソードに花を咲かせたあと、2人が足を踏み入れたのはくるり結成の地であるロックコミューンの部室がある学生会館。石若と野崎を迎えた編成で現れたくるりがまず奏でたのは、1998年にリリースされたメジャーデビューシングル「東京」のカップリング曲「尼崎の魚」だった。くるりらしい展開のクセのあるロックチューンで第2部の口火を切ると、岸田と佐藤は今度は2000年リリースのアルバム「図鑑」から「窓」、2002年リリースのシングル「男の子と女の子」のカップリング曲「ハローグッバイ」と懐かしい楽曲をゆったりと奏でた。
「GO BACK TO CHINA」が始まると松本が合流し、5人によるセッションがスタート。岸田と松本による掛け合いのようなギタープレイ、佐藤が奏でる盤石のベースライン、楽曲ごとに変化する石若の的確で表情豊かなリズム、時に軽快で時に深淵な野崎のキーボードの旋律が響く。伸びやかな岸田の歌声や、石若が叩くかわいらしいグロッケンシュピールの音が溶け合った「奇跡」を経て始まったのは、インディーズ時代のナンバー「続きのない夢の中」。そこから「ランチ」へとつなげられ、20年以上前にリリースされた楽曲がアップデートして届けられた。
「音博」の第2部も佳境に差し掛かったタイミングで、「ハイウェイ」を皮切りにライブの定番曲や人気曲が続く流れに。5人はリラックスした表情で丁寧に音を重ね、貫禄をにじませたサウンドで視聴者を魅了する。まったりとしたサウンドスケープが印象的な「東京」を経て、ラストを飾ったのは「音博」には欠かせない「宿はなし」。この曲は岸田、佐藤、野崎、石若の4人で披露され、ダイナミックで包容力のあるバンドサウンドがライブのフィナーレを彩った。配信の最後に画面に映し出されたのは「来年も会いましょう くるり」という再会を約束するメッセージ。コロナ禍という困難の中でも音楽を奏でる、というミュージシャンとしての矜持と意気込みを感じさせる形で今年の「音博」は締めくくられた。
「音博」の模様は10月11日23:59まで見逃し配信を実施しており、視聴チケットは同日21:00まで販売されている。各ストリーミングサービスでは、セットリストをもとにしたプレイリストを公開中。
くるり「京都音楽博覧会2021」2021年10月2日 セットリスト
以学館
01. I Love You
02. 潮風のアリア
03. 野球
04. 益荒男さん
05. ナイロン
06. 大阪万博
07. watituti
08. less than love
09. 渚
10. コトコトことでん(feat. 畳野彩加)
11. ぷしゅ
学生会館
01. 尼崎の魚
02. 窓
03. ハローグッバイ
04. GO BACK TO CHINA
05. 花の水鉄砲
06. HOW TO GO
07. 奇跡
08. 続きのない夢の中
09. ランチ
10. ハイウェイ
11. さよならアメリカ
12. 東京
13. 宿はなし
※記事初出時本文に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】くるり、母校舞台「音博」で熟練のパフォーマンスを披露(写真28枚)
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