台風の爪痕残る八丈島、島民の後押しで「八八音楽祭」は決行
玉置周啓(Vo, G)と加藤成順(G)の地元・八丈島。昨年は「アラカルトツアー」の“追加追加公演”という形での凱旋公演だったが、今年は「八八音楽祭」と銘打ち、おじゃれでの初日公演はワンマン、八丈島 POT HALLでの2日目公演はドミコを招いた後夜祭として行われた。
昨年の評判も相まって多くのファンから期待を寄せられていた「八八音楽祭」だが、開催を目前に控えた10月、八丈島には台風22号・23号の直撃により大きな被害が発生した。倒木や斜面崩壊などの影響で停電や断水が続き、多くの建物も損傷。幸いこの台風によって命を落とした人はいなかったものの、高齢者が多く、農業、漁業、観光を主な産業とする八丈島の復興には資金や時間がかかる。MONO NO AWAREメンバーはSNSを通じて島の現状を伝え、募金を呼びかけてきた。バンドとしてもチャリティTシャツを販売するなど、イベント実施に向けて動いてきたが、開催を断念することも検討。そんな中で地元の人たちからの後押しもあり、予定通り「八八音楽祭」は決行された。
木々がなぎ倒されたままであったり、被害が大きかった末吉地区の施設の営業が再開していなかったりと、台風上陸の痕跡が色濃く残ったまま当日を迎えた「八八音楽祭」。そんな中でもイベントを盛り上げようと、「八八音楽祭」のポスターが貼られた個人店が数多く見られ、MONO NO AWAREのライブのために島を訪れた観光客でどの店舗もにぎわっていた。島の中心地にあるおじゃれのホール内は「八八音楽祭」の名にふさわしく「祭」と書かれた提灯で装飾されお祭りムード。この日を待ちわびた島民や本土から訪れたファンが集い、夏祭りの会場よろしくにぎにぎしい雰囲気だった。
家族や親戚、旧友などにぜひ伝えて
開演時刻になると八丈太鼓の音がリズミカルに鳴り響き、ステージを覆う幕が左右に開いていく。中央に鎮座する櫓のサイドには八丈太鼓を叩く打ち手の姿が。その反対側にはドラムセット、前にはギターとベースが置かれ、来場者はこれから始まる祭に期待を込めて“パチパチ”と拍手をステージに送った。
八丈太鼓を打つ手の速度が上がっていく中で、位置についた4人は「新人類」でライブの幕開けを告げ、息の合ったセッションから「もうけもん」を披露すると、拍手喝采を浴びる。聞き覚えのある早口言葉を乗せたイントロから始まった「かむかもしかもにどもかも!」では、竹田綾子(B)と柳澤豊(Dr)からなるリズム隊が高速ビートを刻み、玉置の早口をより加速させる。八丈太鼓にも通ずるスピード感で4人が「かむかもしかもにどもかも!」を完走すると、客席からは大歓声が湧き上がった。
「異邦人」を島に吹く海風のごとく爽快感たっぷりに届けたあと、玉置は「八丈島出身のロックバンド・MONO NO AWAREの登場です!」と堂々と宣言。そして「八八音楽祭、今日ここにいらっしゃる方々は『パチパチと読むんだぜ』ということを持って帰って、家族や親戚、旧友などにぜひ伝えていただいて……」と妙にかしこまった空気のトークで来場者を歓迎した。
故郷で鳴り響くべき曲
1stアルバム「人生、山おり谷おり」の収録曲も織り交ぜながら、ライブは進行していく。柳澤によるマーチングドラムで始まる「同釜」では加藤のギタープレイが炸裂。巧妙さと豪快さを兼ね備えた加藤のギターの音色がおじゃれを満たし、玉置とのギターバトルとも言えるアウトロパートはこのライブのハイライトの1つとなった。
ジャケットを脱いだ玉置は「親が見たら育て方を間違えたと思うかもしれませんが、なんとか生きております。それもこれも東京の内地、島内問わず、今日来てくれた方々のおかげです」と来場者に感謝の言葉を送り、母、そして家族への思いを歌った「ブーゲンビリア」の歌詞を1つひとつ噛み締めるように熱唱。時が経つにつれこぼれ落ちていく記憶の中でも、忘れずに残るものについて歌った「忘れる」も続けて披露し、八丈島で鳴らすにふさわしい2曲に観客はじっくりと耳を傾けた。
懐かしいピアノのフレーズと童謡や合唱曲のように伸びやかなメロディラインが聴く者をノスタルジーに導く「88」から「風の向きが変わって」への流れも鮮やかだった。少年が青年となり社会へと羽ばたいていくかのように、4人の演奏は瑞々しく、高らかに鳴り響いた。
島民からMONO NO AWAREへ「おかえり、ありがとう」
凱旋公演をできる喜びを語った玉置は「遠くから来た人は八丈島の魅力を集めて帰っていただいて、家族や親戚、旧友などにそれを広めてくれたらうれしいです」と冒頭のMCを回収し、故郷への思いを歌詞につづった「そこにあったから」を披露。東京でありながら、普通の人が思う“東京”とは違う景色の中で育ってきた玉置だからこそ描けた「東京」でシンガロングを巻き起こし、ライブはラストスパートへ突入していく。八丈島の人々が座る2階席に「おかえり ありがとう」という横断幕が掲げられ、ミラーボールの光が会場中に散らばる中、MONO NO AWAREは彼岸に立った人の目線で歌う「走馬灯」で、本編との別れを告げた。
アンコールではメンバー全員が無事にこの日を迎えられたことへの感謝を述べ、お祭りソング「水が湧いた」を、末吉地区の盆踊りで行われる「マイムマイム」とミックスした特別バージョンで披露。末吉の“高速マイムマイム”には欠かせない八丈太鼓も演奏に参加し、玉置は観客を1人、また1人とステージに上げていく。メンバーが見えないほどの観客がステージを埋め尽くすと、準備は整ったと言わんばかりに高らかに「マイムマイム」のあのフレーズが2本のギターで鳴らされ、それに合わせて観客たちが踊り狂う。最後は玉置が櫓に登って演奏を締め、「八八音楽祭 2025」の幕を閉じた。
セットリスト
「八八音楽祭 2025」2025年11月29日 八丈町多目的ホール おじゃれ
SE. 八丈太鼓
01. 新人類
02. もうけもん
03. かむかもしかもにどもかも!
04. 異邦人
05. 明日晴れたら
06. 夢の中で
07. 同釜
08. ブーゲンビリア
09. 忘れる
10. 88
11. 風の向きが変わって
12. そこにあったから
13. 東京
14. 走馬灯
<アンコール>
15. 水が湧いた(マイムマイムVer)
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批判 🌼 @netlofes
@natalie_mu ももいろ歌合戦、イコラブちゃんに加え、オラキオもいないじゃないか!!!!!!!ももいろ歌合戦イコラブちゃん名前なくて困惑すると同時にしのぶさんがサイン会の時年末楽しみにしててって言ってたのがちらっと頭をよぎり俺大混乱