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細野ゼミ 補講4コマ目 [バックナンバー]

細野さんに聞きたい、あの曲この曲(後編)

安部勇磨が根掘り葉掘り尋ねる、“人間”細野晴臣の習性

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YMOはキュート

安部 ここまで話を聞いていて感じるのが、音楽って、実際は細野さんのトレーに対するこだわりとか、そういう作り手の“何か”の集合体だとも思うんだよね。

細野 動物界において習性ってけっこう大事なんだよ。生きてるだけでそれぞれに絶対習性はあって、この歳になるとよりわかってくるというか、自分で「何やってんだろう」と思う(笑)。家族に怒られるからね。捨てられちゃうんだよ。何で溜めてるのかって問い詰められるからね。

安部 そのときなんて言うんですか?

細野 何も言わないよね。「捨てられちゃった……」って。みんなもそういう習性、あるでしょ?

ハマ 僕は喫茶店とかに入ると出てくるおしぼりが入っているビニールを、その喫茶店にいる間に出た自分のゴミを入れるゴミ袋として使います。あと、箸袋は縦に1回細く折って軽く結んで、箸置きにする。あと、ミルフィーユは縦に切るし。勇磨もあるでしょ?

細野 なんで自分は言わないの。

安部 本当にないんです、そういう変わった習性。逆に恥ずかしいんですけど。からあげにケチャップいっぱいかけちゃうとか? ちなみに、ご家族にトレーを捨てられても何も言わないっておっしゃっていましたけど、細野さんは本気で怒ったりするときはあるんですか?

細野 5、6年に1回はあるんじゃないかな?

安部 それって音楽に関わることですか? うまくいかなくて、バンドメンバーとギスギスする、みたいな。

細野 音楽は全然関係ないかな。

ハマ やっぱりトレーを捨てられちゃうときとか(笑)。

安部 ハマくんはそういうタイミング、ある? バンドで曲作りが行き詰まって、スタジオの雰囲気が重い、みたいな。

ハマ 全然あるけど、それが常だから、別になんとも思わない。

細野 それはそうだね。YMOのときもそうだったし。

安部 そういうときのお二人の対処法とかありますか? これをやったら場の空気が明るくなったとか、率先して雰囲気をよくしようとか。

ハマ うちはサポートのキーボーディストの人とか、エンジニアの人とか、メンバーじゃない人がそういう要素を入れてくれるよね。メンバーだけだと、真剣に突き詰めすぎるから、なかなかね。細野さんはありますか? YMOのときとか。

細野 あったよ。

ハマ そういうときは、シリアスなトーンで制作が進んでいく?

細野 そうだね。一番自分が鬱気味でつらかったとき、ヨーロッパのツアーが始まっちゃったんだ。最初は誰にも会いたくなくて1人でホテルに閉じこもっていたんだけど、このままじゃダメだと思って。それで滅多にやらないけど、メディテーションをしたんだよね。波の音が出る機械を持っていってたんで、それを流しながら。そのおかげで立ち直れたの。その後、率先して……ってほどでもないけど、みんなに明るく振る舞ったんだよね。そしたら、アッコちゃん(矢野顕子)に褒められたんだよ。

安部 周りもちゃんと気付いたってことですよね、細野さんの振る舞いの変化に。そのツアーを今振り返って、楽しかったと思えたこともあるんですか?

細野 そのツアーのロンドン公演が終わって、楽屋から出たら地元の若い女の子たち3人が走って追っかけてきたんだよ。「キュート!」とか言って。「え? キュートなの?」って。別にそれだけなんだけど、すごくうれしかったね。「ウケたんだ」って初めて実感したな。女の子たちが走ってくるくらいだから。そのときの「キュート!」って言葉が耳に残ってる。YMOは薄っぺらいけど、キュートなんだって(笑)。「“キュート”って言葉にはそういう作用があるのか、大事だな」と思った。Kraftwerkとかは“キュート”ではないじゃない?

ハマ 確かに! YMO全体を振り返ると、キューティーさがありますよね。コミカルなところもあるし。

もっと問い詰めたい!

安部 ちなみに、ライブでミスしてしまったとき、2人とも引きずったりしないですか?

ハマ まあ、考えてもしょうがないからな。それよりもMCのほうがよっぽど引きずるね。「なんであんなこと言ったんだろう」って。そういうほうがある。

細野 ライブでは、あんまりミスをしなかったっていうのはある。

安部 カッコいい……。

ハマ カッコいいね。確かにYMOのライブを観ていると、本当に細野さんはミストーンがない。シンベもエレキも。冴えまくってるなって、同じパートとしてすごく思う。あの時期の細野さんは特に。

細野 働き盛りだったんだね。

──そろそろ時間ですので、安部さん、最後に感想などがあればお願いします。

安部 すっごい楽しかったです。いろんな話を聞けた。でも、もっと問い詰めたい……「問い詰める」って変ですけど(笑)。

細野 余計な話をいっぱいしちゃったよ。やっぱり印象に残ったのはトレーか(笑)。

安部 そういった几帳面なところも知れてよかった。世の中の人は、細野さんの余裕ある感じというか、そういうところだけを真似してしまうところがあるので。

細野 そういうイメージがあるって、「笑っていいとも!」に出たときにタモリさんに言われたよ。「ずっとありんこを見てるでしょう?」って。

ハマ いいなー(笑)。

安部 でも僕も細野さんには、暖かそうな国のイメージだったり、ちょけてくれるイメージがあって。ご本人が何かに対して几帳面になっているところが知れてうれしいんです。

細野 そういう面もあるし、ありんこを見ている面もある。

──次回からは、ハマさんが細野さんに質問をしていく回のスタートです。よろしくお願いいたします。

<終わり>

プロフィール

細野晴臣

1947年生まれ、東京出身の音楽家。エイプリル・フールのベーシストとしてデビューし、1970年に大瀧詠一、松本隆、鈴木茂とはっぴいえんどを結成する。1973年よりソロ活動を開始。同時に林立夫、松任谷正隆らとティン・パン・アレーを始動させ、荒井由実などさまざまなアーティストのプロデュースも行う。1978年に高橋幸宏坂本龍一とYellow Magic Orchestra(YMO)を結成した一方、松田聖子、山下久美子らへの楽曲提供も数多く、プロデューサー / レーベル主宰者としても活躍する。YMO“散開”後は、ワールドミュージック、アンビエントミュージックを探求しつつ、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。2018年には是枝裕和監督の映画「万引き家族」の劇伴を手がけ、同作で「第42回日本アカデミー賞」最優秀音楽賞を受賞した。2019年3月に1stソロアルバム「HOSONO HOUSE」を自ら再構築したアルバム「HOCHONO HOUSE」を発表。この年、音楽活動50周年を迎えた。2021年7月に、高橋幸宏とのエレクトロニカユニット・SKETCH SHOWのアルバム「audio sponge」「tronika」「LOOPHOLE」の12inchアナログをリリース。2023年5月に1stソロアルバム「HOSONO HOUSE」が発売50周年を迎え、アナログ盤が再発された。2024年に活動55周年を迎えたことを記念して、アニバーサリープロジェクトが始動。

安部勇磨

1990年東京生まれ。2014年に結成されたnever young beachのボーカリスト兼ギタリスト。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演。2016年に2ndアルバム「fam fam」をリリースし、各地のフェスやライブイベントに参加した。2017年にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表。日本のみならず、上海、北京、成都、深セン、杭州、台北、ソウル、バンコクなどアジア圏内でライブ活動も行い、海外での活動の場を広げている。2021年6月に自身初となるソロアルバム「Fantasia」を自主レーベル・Thaian Recordsより発表。2024年11月に2ndソロアルバム「Hotel New Yuma」をリリースした。

ハマ・オカモト

1991年東京生まれ。ロックバンドOKAMOTO'Sのベーシスト。中学生の頃にバンド活動を開始し、同級生とともにOKAMOTO'Sを結成。2010年5月に1stアルバム「10'S」を発表する。デビュー当時より国内外で精力的にライブ活動を展開しており、2023年1月にメンバーコラボレーションをテーマにしたアルバム「Flowers」を発表。2025年2月には10枚目のアルバム「4EVER」をリリースする。またベーシストとしてさまざまなミュージシャンのサポートをすることも多く、2020年5月にはムック本「BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES『2009-2019“ハマ・オカモト”とはなんだったのか?』」を上梓した。

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細野晴臣 Haruomi Hosono _information @hosonoharuomi_

【連載】「#細野ゼミ」補講開講中🖋

テーマの「細野さんに聞きたい、あの曲のこと、この曲のこと」から大脱線❗️

ゼミ生・安部勇磨が根掘り葉掘り尋ねる、“人間”細野晴臣の習性

#細野晴臣 #安部勇磨 #ハマ・オカモト

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