音楽ナタリーでは“読書の秋”に合わせて秋の特別連載「アーティストの推薦図書」を展開。さまざまなジャンルの5組のアーティストにオススメの3冊を紹介してもらう。第4回目となる今回は
「成瀬は天下を取りにいく」(新潮社)
宮島未奈(著)
私だって、成瀬になりたかった
成瀬あかり、という爆裂に面白い女子中学生の歴史を、生き様を、のぞいてみたくないですか? この成瀬という少女は、いつだってひたむきでまっすぐな瞳で、やや変わったふうな言動をする。例えば、地元のシンボル的デパート西武大津店の閉店が発表されるや否や、「この夏を西武に捧げようと思う」つって、連日西武をレポートするローカル番組の中継に毎日映り込みにいく成瀬。唐突に、幼馴染にM-1グランプリにエントリーしようと申し出る成瀬。丸坊主で高校の入学式に出席する成瀬。……成瀬って、めちゃくちゃ変で、とにかく面白くて、最高にカッコいいんだ。そんなの、私だって、成瀬になりたかったよ……! きっと読んだ人みんながそう思うはず。元気になれる青春小説です。
「もういちど生まれる」(幻冬舎文庫)
朝井リョウ(著)
青春の光と影
一文一文からリアルに匂い立ってくる青春の光と影。自分の、恥ずかしい“あの頃”を思い出して胸がぐう、となる感じ……。クセになる。この連作短編集は特に、ぐうう、と心臓にクるんですよね。同じ経験があるなしにかかわらず、どの話も共感性が高くてついつい物語に没入してしまう。彼氏がいるが仲良しの友達に好意を寄せられ思案にふける汐梨。ヘラヘラと軽くて適当な男風だが実は一途な恋をしている翔多。父を亡くし、母の新しい恋人にも母にもうまく向き合えずにいる新。双子の姉に羨望と嫌悪の両方を抱き葛藤する妹の梢。ダンスを続けながら夢と才能のギャップにもがく遥。それぞれが焦燥し、みっともなさを認めながらも前進してゆこうとする姿には胸を打たれること間違いなし。
「放課後の音符」(新潮文庫)
山田詠美(著)
少女時代ならではの旋律
放課後の女子高生たちは、みんなさまざまな恋の渦中にいて、好きな人を想って心の温度を変えながら色とりどりの音を鳴らし、少女時代ならではの旋律を奏でます。とにかくですね、こちらの8編の物語に登場する女の子たちは全員がとても素敵で魅惑的な少女たちばかりなので、その甘美で切ない女子高生の思想をぜひ読んで体感してほしい! 大人びているけれどやはりまだ未熟で、したたかだけど脆さも併せ持っている、大人の女性になる前の、けれどもう子供ではない、甘くじれったい季節。私の高校時代といえばかなりアホで、部活の友達とバナナを食いながらゴリラのモノマネをしてゲラゲラ笑っていた記憶ばかりよみがえる。この美しい小説を高校時代に読みたかった。
三月のパンタシア(サンガツノパンタシア)
「終わりと始まりの物語を空想する」をコンセプトに、ボーカルのみあを中心に結成されたプロジェクト。2015年8月に活動を開始し、2016年6月にシングル「はじまりの速度」でメジャーデビューした。その後、みあによる小説、さまざまなクリエイターの楽曲、イラストを掛け合わせてストーリーを描き、思春期の切ない恋心や憂鬱な気分といった繊細な心の揺れを表現。2020年7月には初の長編小説「さよならの空はあの青い花の輝きとよく似ていた」を発表した。2023年8月にアニメ「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~」のオープニングテーマなどを収録したEP「ゴールデンレイ -解体新章-」をリリース。2024年3月に大阪・BIGCATと東京・EX THEATER ROPPONGIでワンマンライブを行う。
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みあ(三月のパンタシア) @3_phantasia
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