一番小さな単位を大事にすること
RIKU ものすごい努力があってのことだと思うんですけど、魔裟斗さんは富も名声も素敵なご家庭もお持ちになられていて本当に勝ち組と言いますか、あこがれの男性像そのものなんです。「なりたい人生ランキング」があったら魔裟斗さんが1位ですね。選手としても男としてもトップオブトップだと思います。
魔裟斗 ははは。2度目のチャンピオンになったときに、何かを得るには何かを捨てなきゃいけない法則があると気付いたんですよ。家庭と仕事のバランスが今一番よくて居心地がいいんですけど、もっと金を儲けたいと思ったらきっと家庭を犠牲にしないといけない。自分の中での落としどころを見つけて、今の状況なんですよね。42歳なんてまだ働き盛りでもっと稼ぎたいと努力をしている人もいるだろうけど、そういう生活をしていたら今の僕のような家庭はきっと築けないと思うんです。RIKUさんくらいの年頃だと、飛び抜けたスーパースターになりたいのであれば結婚はせず、いろんなことを犠牲にして突っ走るのがいいと思うし、自分がどこにいたいのかを考えるとみんな着地点が見えてくるんじゃないかなと思います。
RIKU 1人の男性としての理想形が魔裟斗さんだなとつくづく思います。家庭の持ち方だったりお仕事のやり方だったり、それはもう隅から隅まで……って、憧れすぎていて気持ち悪いですよね(笑)。
魔裟斗 いやいや(笑)。
RIKU 魔裟斗チャンネルもいつも拝見させてもらっていて、夫婦水入らずのドライブデートの動画がとても素敵だと思ったんです。僕はひとりっ子なので子供がたくさんいるのもうらやましくて。恋人としても奥様といい関係を築いて、かわいいお子さんたちとも楽しく過ごして、素敵な家庭だなと思うんですけど、魔裟斗さんにとって家族とはどんなものですか?
魔裟斗 僕は、一番小さな単位をうまく大事にできない人が大きなものを大事にすることはできないと思っていて。で、社会で一番小さな組織は家庭じゃないですか。だから家庭を大切にしようと心がけていますね。さっきから理想の男性像だともお話してくれていますが、僕が思う理想の男性像は“変わらないこと”。選手のときと姿が変わりすぎたらダメだよなと思って鍛え続けているんです。とは言え、選手時代の12年前と今の写真を見比べたら全然違うと思います。でもイメージとして変わらないことが大事なんです。イメージは変えずに変化していける人って素敵だなと先人たちを見て思って、そういう歳の重ね方をしたいなと。引退して腹が出たり、お金がなくなってよれよれのスーツを着るのは理想じゃなかった。だからいいバランスで歳を重ねていけるように努力しています。
人生がうるおいました
RIKU 若い世代の表現者や格闘家に向けて魔裟斗さんが思うことはありますか?
魔裟斗 格闘技のことしかわからないので、格闘技の話をすると、今現役でがんばっている選手だったり選手を目指している子たちって、僕らの頃に比べて技術やテクニックがあるんです。それと同時にいろんな見せ方もできるようになってきて、目先の金を求める人たちも増えてきたような気がする。目先のお金を求めるよりも、僕はプライドを取る人が好き。そうしていないと、その先で何も残らないんですよ。僕はよく「目先のものより名誉を取れ」と言うんですけど、これは名誉があればお金はあとからついてくると考えているからなんです。僕にとっての名誉はK-1のチャンピオンでしたが、“世界最強”という名誉を勝ち取ったらいろんなものがついてきた。長い目で見て今自分がやるべきことを考えて、活動していってほしいなと、若い格闘技の選手に対して思っていますね。
RIKU 自分も肝に銘じます。まだまだ若輩者ではありますがEXPG STUDIO(LDHが運営するパフォーマンススクール)の卒業生として、生徒さんにはそういうことを伝えていきたいです。
魔裟斗 それで言うと、僕の指導者が僕にくれた言葉があります。
RIKU どんな言葉なんですか?
魔裟斗 「トレーナーの仕事は時間の短縮作業」という言葉で、ある地点に到達するまでに1人だったらかかってしまう時間を、トレーナーが半分の時間や3分の1の時間に減らすということ。自分1人で正解にたどり着くのはすごく時間がかかるけれど、アドバイスで時間を短縮できる。だからこそ才能がある子に賭けますけどね。トレーナーはスターになる人材を見つけると燃えるんですよ。
RIKU 「あしたのジョー」で丹下段平がジョーを見たときみたいなことですね。
魔裟斗 そうそう。あとは年齢ごとのステージがあると思う。若いうちはとにかく量をこなしてがむしゃらにやっていけばいいし、25歳を越えてきたら何事も質を高めたほうがいい。大人になって無駄なことをしていると、オーバーワークになっちゃうんですよ。そうならないためには優秀な指導者が必要なんです。
RIKU なるほど……。今日はためになることばかりお話いただきありがとうございました。魔裟斗さんと話せて僕の人生がうるおいました。本当にありがとうございました。
魔裟斗 こちらこそありがとうございました。
魔裟斗(マサト)
1979年3月10日生まれの元キックボクサー。2003年に日本人初の「K-1 WORLD MAX」世界王者となる。2008年には2度目の世界制覇を成し遂げ、2009年に現役を引退した。以降は解説者やタレントとして活躍している。公式YouTubeチャンネル・魔裟斗チャンネルでは、鍛え上げた肉体を生かしたトレーニング企画や格闘家との対談のほか、妻・矢沢心や子供たちとの日常も発信している。
RIKU
1994年8月10日生まれ。
RIKU (@_riku_r.m.p.g_ldh)・Instagram photos and videos
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