ライブハウスができるまで 第4回 [バックナンバー]

ほぼ完成、しかし新型コロナの影響でオープン延期

2人の店長が自粛期間に思うこと

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前年の売上実績がないと給付金も申請できない

前述の通り、新型コロナウイルス感染拡大のリスクを考慮して、LIVE HAUSは4月9日の開店は断念することに。現在2人は感染症対策の設備導入を進めながら、ライブハウスやナイトクラブ、劇場など文化施設への補償を政府に求めるための署名活動「SaveOurSpace」の活動(参照:ライブハウスへの助成金求めるSaveOurSpaceに30万筆「もう一度人が集まれる場所に」)にも力を注いでいる。

スガナミ 人命に関わることなので開店延期を決断しました。正直、悔しい気持ちでいっぱいです。ただ、何もせず事態の終息を待っているだけでは歯痒いので、今は新型コロナと向き合うためにも感染症対策の設備導入を進めています。具体的には体温検知用のカメラ、次亜塩素酸による空間除菌ができる脱臭機、紫外線殺菌装置などを設置したいと考えています。僕らは新型コロナ感染拡大が終息したあと、人が集まれる場所のよさや魅力を取り戻すことが必要だと考えています。今はお店を開けることはできないけど、いつか来るその日のために準備を進めているって感じですね。あと今一番心配しているのは、この状況が落ち着いたときに果たしていくつのライブハウスやクラブが生き残っているのかということ。僕らの商売って、月のイベントが5本飛ぶだけでもかなりの痛手なんです。運営しているのは零細企業だったり個人事業主だったりするし、貯蓄があるところばかりではないですから。終わりが見えない中でみんな営業自粛をしているわけだけど、家賃の支払いは待ってくれない。現時点で廃業をせざるを得ない店も出てきていますし、この状況が1年続けばほとんどライブハウスやクラブが店を畳まないといけなくなるんじゃないかと思います。

大仏 正直、このままだと半年保たずに全部潰れる可能性もありますよね。

医療施設などにも多く導入されている紫外線殺菌装置。

医療施設などにも多く導入されている紫外線殺菌装置。



スガナミ 僕らもこのまま店を開けることができないとなると厳しい。皆さんのご支援のおかげでクラウドファンディングを成功させることができましたけど、今の状況だとオープン前の廃業もあり得ます……。中小企業や個人事業主向けの給付金制度はあるのですが、LIVE HAUSの場合は去年の売り上げ実績がないので前年比を出すことができず、そもそも申請することすらできない。今月も見込んでいた売り上げが一切なくなったので、すでに400万円ほどの赤字が出ています。そこでLIVE HAUSを含め、同じ境遇のお店や従業員、出演者、フリーランスのスタッフの方々、飲食店、劇場など今困っているすべての人たちの状況を打破するためにも、「SaveOurSpace」の活動を積極的に行っているわけです。「SaveOurSpace」に関しては本当にたくさんの方々が賛同してくださって、少なくとも何かしらの影響があるのではないかと手応えはあります。ライブハウスや劇場といった文化施設だけでなく、そこに携わる人々を含めて1つの文化だと思うので、国には適切な助成をお願いしたいですね。

大仏 これまでにも風営法のクラブ規制撤廃を求める署名活動などありましたけど、「SaveOurSpace」にはそれ以上の力を感じました。これだけ規模が広がったのは初めてのことですし、あの署名が日本政府に届くことを願っています。今、仲のいい同業者と連絡を取っても「お互いがんばろう」みたいな話しか出てこないんですよ。まだまだ先は見えないですけど、この状況を乗り越えて人間の強さを見せてやりたいです。

スガナミ 今でっかい音でライブやDJのパフォーマンスを観たら泣いちゃうかもしれない。ライブ配信の魅力もありますけど、やっぱり生のよさってあると思うので、終息後にそのよさを現場に取り戻したいと考えています。

ステージ中央に設置されたLIVE HAUSロゴの看板。

ステージ中央に設置されたLIVE HAUSロゴの看板。

ステージ側から見たLIVE HAUSの店内の様子。ドラムセットなどの楽器や音響機材が設置されていた。

ステージ側から見たLIVE HAUSの店内の様子。ドラムセットなどの楽器や音響機材が設置されていた。

スガナミユウ

自身のバンドGORO GOLOでボーカリストを務める傍ら、レコードディレクターやイベントの企画などを行い2014年より東京のライブハウス下北沢THREEに在籍。2016年に店長に就任すると、チケットノルマ制の廃止、入場無料イベントの定期開催など独自の運営方針で店を切り盛りしていく。2019年12月末にTHREEを退職。現在は自身が発起人の1人であるライブハウス / クラブ・LIVE HAUSのオープンに向けて準備に勤しんでいる。

宮川大仏

1982年生まれ、酒と酒場をこよなく愛する。2005年に東京・渋谷にある老舗クラブOrgan barにスタッフとして就職。2011年からは店長として店の運営に携わる。2019年12月にOrgan barを退職。2020年、スガナミユウらと共にライブハウス / クラブ・LIVE HAUSを立ち上げる。

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