音楽ナタリー - 新曲リリース・ライブ情報などの音楽ニュースを毎日配信

ライブハウスができるまで 第2回 バックナンバー

一部住民の反対によりプロジェクトは頓挫、そして再び下北沢へ

ライブハウスの物件探しは、想像以上に厳しい

360

4月9日に東京・下北沢に誕生するライブハウス / クラブ・LIVE HAUS(参照:下北沢に新たなライブハウス「LIVE HAUS」4月オープン)のオープンまでを、オーナーの1人であるスガナミユウの話をもとに追っていくこの連載。第2回はライブハウスの物件探しの実情を聞いていく。住民の反対によって頓挫した幻のプロジェクトとは。

取材・文 / 下原研二 撮影 / 斎藤大嗣

地下90坪の物件で何をしよう

下北沢THREEの店長だったスガナミから、独立して新たなライブハウスをオープンさせると連絡が入ったのは2019年10月のこと。場所は東京・世田谷の代田橋駅前の物件に内定しており、2月のオープンに向けて動き出しているとのことだった。代田橋は甲州街道と環七通りの交差点附近に位置する、いわば住宅地。新宿駅から京王線で約8分と都心からのアクセスは悪くないが、世田谷を代表する繁華街である下北沢に比べると1日の駅の乗り降り数も随分少ない。

「物件を探すとき、下北沢はもちろんですが、東京23区内くまなく当たりました。想定家賃は月70万円ほどで。それでわかってきたのが、ライブハウスやクラブの場所って結局物件ありきだということ。広さがあって、音を出せて、想定の家賃に収まる物件自体がそもそも少ないですからね。だから“どこで店をやるか”より、“出会った物件で何ができるか”を念頭に置きました。そうしてるうちに、不動産屋さんに代田橋のある物件を紹介してもらったんです。代田橋って下北からも近くて僕らの生活圏内にあるけれど、こじんまりとしていて、どこか懐かしい雰囲気のある街なんです。そのローカル感もいいなあと思って、さっそく内見をさせてもらいました」


その物件は、代田橋駅近くのマンションビルの地下。1階にはチェーン店など数軒のテナントが入っており、2階以上は分譲マンションとなっている。

「結果的に契約には至らなかった物件ですし、ご迷惑がかかるので場所の特定はしないでほしいのですが、駅近でとても面白い物件でした。何より地下の5部屋のうち4部屋が空いていて、全部借りると300m2という広さにも惹かれました。さらに契約時に支払う保証金も3カ月分とだいぶ安いうえに、2カ月のフリーレントも付いていて。賃料は当初想定していた70万円より高かったんですけど、それでも初期費用を圧縮できるし、フリーレントによって工事期間に家賃が発生しないことも魅力的。下北沢で借りるとしたら、毎月200万から300万はかかる物件でした」

店舗物件を契約する際に支払う保証金は賃料の10カ月分が一般的と言われており、仮に賃料が100万円の場合、補償金として1000万円を用意しなければならない。ただでさえ他業種と比べて開業資金が高額になってしまうライブハウスゆえに、保証金の安さやフリーレントで初期費用を抑えることができるのはそれだけでメリットだった。

「とにかく広さがあって、『ここで何ができるだろう?』『何をやると楽しいだろう?』と考えた結果、独立したい仲間たちと一緒に、ライブハウス、クラブ、カフェ、アパレルのプリントショップ、レコード店、食堂&居酒屋など、1つのフロアの中にそれぞれが店長として店を出すアイデアが生まれたんです。世田谷の外れに僕たちの世代で新しい地下街を作る、そんなイメージ。そしてそこを中心に代田橋の街に独自の文化圏が育っていくような、そんな期待があったんです」

仲間たちと起業

思いもよらない物件との出会いによって、“ライブハウスオープン”よりもさらに大きく膨れ上がったスガナミたちのプロジェクト。さっそく地下街作りをスタートさせるべく契約の話を進めながら、同時に独立を夢見る仲間たちと共に合同会社を設立した。

「賃料が高額な物件を借りる際、個人では社会的信用の面で難しいということもあって、会社を興して法人として契約することにしたんです。会社の名前はMS&I。これは“Multicultural Symbiosis & Independence”の略で、“多文化共生と自主独立の集まり”という意味です。株は各店長で等分で持って、借金を返し終わったらそれぞれが完全に独立して個人でやっていくという想定でプロジェクトを進めていました」

次のページ »
分譲所有者たちからの反対

音楽ナタリーをフォロー